初谷課長補佐
 いろいろとお話が幅広く飛んでいただいているんですけれども、一応、ヒアリングの順番に沿って、あと3回分を簡単に説明したいと思います。

若尾酒税企画官
 第14回、これは14ページですけれども、この回は酒類の特性の観点から「酒類と健康・疾病問題」に関するヒアリングを行いました。
 最初に、メンバーに新しく加わっていただきました田嶼先生から、内科疾患とアルコールについてお話を伺いました。適度なアルコールの摂取は健康にプラスの効果を与える一方、近代社会で大きな問題となっている生活習慣病のもとになることも事実であるとのお話がありました。今ほど酒との賢いつき合い方が求められている時はないというお話でございました。厚生労働省が国の生活習慣病への取組として掲げた「健康日本21」では、生活習慣にかかわる9項目が挙げられまして、アルコールの項では「1日1合を目安に適量を心がけよう」という目標が設定されております。また、ここにまとめてありますように、具体的なアルコールと内科疾患との関係について説明をいただきましたが、最後に、慢性飲酒によって発生する内科疾患はたくさんあり、アルコールによる臓器障害は全身に及ぶという認識が必要で、そうならないためには、オーダーメイドの適正な飲酒が必要というお話がございました。
 質疑応答では、ここに四つ掲げてありますけれども、これを見ていただいても、酒と健康の問題、大変個人差もあるということもあって、すぱっと割り切れない大変難しい問題だという気がしております。
 二つ目ですが、久里浜のアルコール症センターの丸山院長からは、「アルコール関連問題の現状と課題」についてお話を伺いました。未成年者がなぜ飲酒をしてはいけないかという理由ですけれども、最初に、法律に禁止されているということが一つある。それに加えて、学問的には急性アルコール中毒の危険性が高い、脳や肝臓など臓器への障害が大きい、性ホルモンに及ぼす影響もある、依存がより早く進行し他の薬物の入り口ともなる、さらに加えて、危険な行為にも走りやすくなるという説明がありました。
 アルコール依存症の問題ですが、大量飲酒者は平成11年の段階で約227万人と推計されている。久里浜病院では女性のアルコール依存者が特に増えている。また、60歳以上の方のアルコール依存者もどんどん増えてきているという説明がありました。 しかし、実際に治療を受けているアルコール依存症者は2万数千人ということで、表に出ておらず、アルコールによって引き起こされる疾患に費やされる医療費は約1兆1千億円、全体の7%という問題が指摘されました。女性の年齢別の飲酒率は時代を経るほど増えており、また、急性アルコール中毒は最近女性も男性と同じような率ですごく増えてきているという説明もありました。
 妊娠中に飲酒していた母親の割合は18.1%と非常に高率で、母親の飲酒によって生じるとされている胎児性アルコール症候群は、米国では出生1,000に対して0.2から2.2、我が国では0.1程度の発症というふうな報告があって、近年それが大変問題になってきていること。
 アルコール防止教育は実施頻度が最も低く、これが課題であること。さらに、アルコール依存症の家族におけるドメスティックバイオレンスの被害は、一般人口に比べて予想以上に重篤だというお話がありました。
 質疑応答では、未成年の女性で急性アルコール中毒の認定が高い理由の説明がありましたが、いろいろなものがミックスされて起きているのだろうということでした。また、アルコールは体によくないということを説得するに当たって、若者の心に一番響く説得の仕方は何かという質問がメンバーから出されたわけですけれども、丸山院長は、これも成人と同じで、体の障害を話すと非常によく理解して、それによってアルコールは怖いものだなというところにいくと話されておられました。特に脳と性の問題、生殖器の問題、骨の問題もありますけれども、その話をするとみんな乗ってくるとおっしゃっておりました。未成年者にお酒を飲ませてデータを得るということができないために、なかなか御苦労をされている様子がうかがえました。アルコールで苦しんでいる人を見て、お酒の売り方だとか教育の仕方だとか、どういう政策的な措置がとられたらいいと思うかという質問がございましたが、先生は内科医の立場から、第二次予防、早期発見、早期治療が現段階では一番いいとおっしゃられておりました。第一次予防の教育も必要なことは分かるけれども、アルコール依存症の再生産を何とかストップするような方向性に持っていったらいいと思っているという説明がございました。
 厚生労働省の大江室長からは、「アルコール関連問題等に対する取組の現状と課題」について説明をお聞きしました。
 「健康日本21」のアルコール分野の目標は、第1に多量に飲酒をする人の減少、第2は未成年者の飲酒をなくす、第3は節度ある適度な飲酒の知識の普及ということでございます。我が国の飲酒習慣者は、データの取り方の問題もあってやや振れている部分もありますけれども、基本的にはそんなに変わってはいないという説明でございました。ただ、最近の若い男性層を見ると、意外というか、割と飲酒率が減ってきているという説明がございました。実際に市町村等で保健指導をする際の指導の視点をまとめました「保健指導マニュアル」を活用して、いろいろな市町村の現場で保健指導という手段を通じて、厚生労働省としては対応しているという説明がございました。
 質疑応答では、アルコールの問題は学校の教育がまず基本と考えていて、そこはよく文部科学省と連携しているという説明がございました。また、事業者については、18ページの最初のマルですけれども、国税当局とも連携をしてやってきているという説明がございました。メンバーからは、学校というところが一番コンパクトに教えられる場であることは確かだけれども、未成年者の教育の問題は、むしろ家庭だとか地域、メディアにおける教育の方が効果が上がるのではないかという意見がございました。下から二つ目のところですが、また、飲酒に関しては、各省庁、警察とか厚生労働省とか文部科学省、国税庁、こういったところが三省の政策群で目標に本気でみんなで取り組むというぐらいに進めてもいいと思うという指摘もございました。
 また、アルコールで苦しんでいる患者は227万人と推定されているわけですけれども、現実に治療を受けているのはごくわずか。こういった227万人の方をもう少し減らすといったことは目標になり得ないのかという指摘に対しまして、丸山先生は前のヒアリングのところで、内科医の立場からは、第一次予防の必要性も認めながら、第二次予防が大事と言われておりました。メンバーの方は、それでは根本的な解決にはならないと感じられているように受けとめました。
 第15回、19ページですが、ここでは地域社会における酒類業者の役割の観点から、「酒類業とコミュニティのあり方」に関するヒアリングを行いました。
 まず、東京都の青少年対策室から青少年健全育成条例について説明を伺いました。青少年健全育成条例は、あくまでも大人、事業者の行為を規制するというもの。大人の世界と子供の世界を区分けする、ゾーニングという考え方に基づいてつくられているという説明がございました。
 主な改正内容は、青少年に深夜外出をさせないよう、保護者に努力義務を課し、それから、深夜立ち入り制限施設に、若者の間ではやっているカラオケボックス等を追加し、夜11時以降は青少年を立ち入らせてはならないということを規定したということでございます。
 なお、有害図書の自販機には年齢確認装置の設置などを義務付けているが、成人向け雑誌等の自販機については、従来から小・中・高等学校の敷地内から100メートル以内には設置しないよう努力義務を課しているとの話がございました。具体的に青少年の行動のひどい状況の説明はございませんでしたが、マスコミの報道や条例改正まで行われたこと等から見ると、大変ひどい状況にあるものと思われます。
 質疑応答を見てみますと、一般の都民の方から、酒・たばこ等の販売について電話をいただくケースも多々あるということでございましたが、東京都の方ではそれにはまともに答えていないようなので、警察に苦情がいっているのだと思います。一番下のところですけれども、有害図書の関係ですが、ここの説明では、対面販売ではない自販機、次のページにいきますけれども、この自販機については、年齢識別機を付ける等の対策は、その効果にやはり疑問が残されているようでございました。また、その次のマルですけれども、防犯協会の自主規制などの説明がございましたけれども、メンバーからは、やはり現状をあまりとらえていないのではないかというふうな意見が述べられました。東京都の方からは、取り締まり以外の方法として、深夜営業をやっている方について、保護・善導の義務という形で店内放送とか声かけをするといった努力規定を新たに設けたという説明がございました。
 次に、社団法人流通問題研究協会の三浦副会長から「地域社会における酒販店、商店街の役割」について説明を伺いました。
 一番下の四つ目のポツですけれども、今、セルフ販売と対面販売がバランスをとろうとしており、対面販売には物を流す機能だけではなく、バリューを伝達すること、店頭でメーカーにはつくり出すことのできない価値をつくり出す力等があり、高質化してきた消費者の中で意味を持ち始めてきている。また、ダラスの例を挙げて、いろいろな提供型の棲み分け、自己主張が大事になってきているという説明がございました。飲酒マナーの伝達などは、これはセルフやベンディングマシンではできない役割であり、店を明るくして地域防犯や和みづくりに貢献し、高齢化社会の中で訪問宅配とか地域安全便利業というふうなコンセプトも大事である。ビンや缶のリサイクル、再生の価値づくりを酒販店が担うことは可能だと思うというお話がありまして、まとめとして、競争には土俵が要る、秩序が要る。この土俵での競争の結果、いずれ本物だけが残っていくことは良いことであるとのお話もありました。そういう中での政策としては、あら探しより相褒めが効果的だということで、いい取組をしている事業者、地域を国税庁がPRするなど応援していただきたいという要望もございました。
 質疑応答では、イギリスでは中小小売業に対して、ここまでやるのかというぐらいのきめ細かい規制や振興策があったという発言がありました。外国調査で現在のこのあたりの内容も把握されていただければと思っています。日本の商店街が持っている良さは、小さな地域の文化、歴史、人間関係だと思うというお話もございました。メンバーの方からは、商店街は公民館やその他の施設以上に集まれる場所、近代的な機能とコミュニティの機能を期待できる場所であり、その中において、商店街の中で酒屋は中心的な存在であるとの指摘がございました。かつてはそうであったという話があったわけですけれども、これからの社会でどうそれを組み立てていくか、なかなか難しい問題だと考えております。
 次に、新しくメンバーに加わっていただきました小宮先生から、「欧米の犯罪機会論と日本の安全・安心まちづくり」についてお話がありました。
 欧米の犯罪対策の変化ですが、「原因論から機会論へ」、あるいは「犯罪者から被害者へ」、「人格から場所へ」という考え方の変化があったと説明がありました。この「犯罪機会論」は、犯罪の原因ではなくて犯罪の機会に注目するというものでございます。監視カメラをつけた直後は、犯罪は激減するけれども、それにより縄張り意識や当事者意識を低下させてしまった地域では、またもとよりもひどくなってしまうようです。最後の勝負は縄張り意識と当事者意識のソフトの面が大事だというお話でございました。どんなに閑静な住宅街でも、そこに昔ながらの小売店が一つ、二つあるところでは、なかなか犯罪は起きないもので、ニューヨークではトイレもとにかくきれいにするというようなことで、割れ窓理論の実践が行われている。酒の絡んだ事件が非常に多い欧米では、そこで飲ませないという場所の管理が中心になってきています。イギリスではそういう法律までつくっている。犯罪に至らないような行為(ディスオーダー、秩序違反)を管理して、その段階できめ細かく対応することにより犯罪を防いでいくという内容で、以前は酒を売って捕まった業者が「未成年だと知らなかった」と言うと処罰されなかったけれども、その後、挙証責任が転換されて現在では確認のステップをきちんと踏んだことをその業者が証明しなければ処罰されるようになった。また、その店で働いているすべての従業員が処罰されることにもなったという説明がありました。枠内下から二つ目のところですけれども、かつては営業時間や営業日も法律で定めていたが、これを排除し、営業時間や営業日は申請により、それを個別に許可するという形に変わってきている。こういうことでバランスを欧米ではとってきているという説明がありました。
 質疑応答では、こういう規制がイギリスで行われている背景について、アルコール関連のディスオーダー、バイオレンスが非常に問題になっていて、年間120万件ぐらい起こっている。すべての暴力犯罪の半分はアルコール関連と言われているので、この辺に非常に神経質になっているのではないかということでございました。
 それから、次の24ページの二つ目のマルですけれども、ソフトな要素が少年にとっても極めてプラスになるようです。お酒は買いづらい、飲みづらい状況をつくることで、大多数の子供は飲酒をあきらめてやめてしまって、それが2、3年続けば、もう大体やめるというお話でございました。
 第16回、25ページですが、ここでは酒類の特性、青少年の健全な育成、酒類業の健全な発達等の観点から「望ましい酒類の販売方法のあり方」に関するヒアリングを行いました。
 まず、武蔵野大学の林先生からは「酒類の注意表示について考慮すること」についてお話がありました。
 情報を与えたつもりでも、受けとめる側が求めていない情報は単純に無視される。健康に関する注意でも全く同様なことが発生する。どんな情報が求められているのか、「あなたが対象」と思われることが必要だと。包括的な注意事項は無視されるというふうなことでございました。真ん中あたりは、短期的な情報は効く、関心の高低によってその効果は変わるという話もありました。それから、26ページにいきますと、同じ情報を続けて何度も何度も与えていると、介入の鈍化が発生し、介入効果がどんどん減衰していくというお話がありました。未成年者の飲酒の問題はなかなか難しいというのは、高校生にはその規範意識がないのではなく、規範が異なっているんだという説明がありました。一般的に規則を守りなさいと言っても効果がなくて、注意表示で何とかなるものでもないようです。次のポツでは、胎児への影響に関する警告文は、妊娠中の女性に対する効果が大変期待できるということでございました。「未成年者の飲酒は有害」という表示は、これは親向けの注意表示としては有効で、「未成年者の飲酒は法律で禁止されています」という表示は、親サイドも、子供には有害ですという合理化を起こしてしまうということでございます。「子供には有害です」という表示は意味があるけれども、これも小学生のうちの間だけで、高校生を抑止することは難しいようです。居酒屋のオーナー自身が未成年者に酒を飲ませてはいけないとどの程度思っているか、大変疑問だという話もありました。効果が期待できるのはせいぜい小学生の親ぐらいの水準であり、その条件が、結局あなたの子供に有害ですよというような言い方であろうというのが全体のまとめだということでございます。林先生のお話は、高校生以上になると酒だけの問題ではないということでございます。
 質疑応答の三つ目のマルですけれども、警告文はどんなにすばらしいものでも効果が逓減していくようなので、頻繁に警告文を変えていかなければいけないような感じがするというメンバーからの意見もございました。下から二つ目のマルですけれども、「これが規則である」というような書き方をしても、「ああそうですね」と見過ごされてしまうと思われる。しかし、青少年が酒を飲んではいけないのかということには、幾つかのエビデンスがあるわけで、それらを少しポスター等に加えると、見る人が見れば「ああそうか、規則でくくっているだけではないのだ、根拠があるのだ」と少し強いメッセージになる。特に健康の面からのエビデンスをメッセージの中につけ加えれば、もう少し説得力があるのではないか。容器への表示一つだけ見れば、林先生の言うことも分かるが、注意表示だけやるわけではないので、ポスターやパンフレット、その他のいろいろなものでメッセージを送ることが効果的ではないかということでございました。
 神戸大学の川畑先生からは、28ページでございます「青少年の危険行動の形成要因―飲酒行動に及ぼすメディアの影響―」についてお話がありました。
 先生の方では最初に結論を要約されています。飲酒は我が国の青少年が最も頻繁にとる危険行動の一つで、早期からの飲酒は強い依存を引き起こす。飲酒の開始をできるだけ遅らせることは非常に大きな意味を持つ。酒類の広告・宣伝は、飲酒の危険性に対する意識を低下させ、飲酒に対する肯定的イメージを形成していく。青少年の態度に大きな影響力を持っている。酒類の宣伝・広告を含む社会的要因は、非常に大きな影響を与えている。青少年の危険行動の防止のためには、彼らの個人的責任を強調するだけでは不十分で、周囲の人々への働きかけや法律の整備などを含む社会的環境の整備が不可欠だというふうなことで結論を要約しまして、あと具体的に説明を加えていただきました。時間の関係で省略させていただきます。
 30ページですが、質疑応答では、15歳未満は一番介入しづらい年齢である。介入の方法としては、国のレベルの介入、恐らくこれは広告の規制が問題になる気がするというふうな意見がございました。広告を見るときには、広告を身構えて見るが、ドラマはその身構えが少ないようである。むしろドラマの問題性はすごく高いというふうな話がありまして、高度な教育が必要になってくるというふうな意見がございました。川畑先生からは、社会的対策と教育の両方をやっていかないといけないということでございました。
 「最近のたばこをめぐる規制について」、たばこ事業室の室長からお話がありました。たばこ規制枠組条約ができて、パッケージに、たばこは健康に悪いという注意表示を、順次、八つの組み合わせを幾つか変えて表示していくというふうなことでございました。それから、たばこの広告規制ですが、この表示については、科学的なデータもつけてやるということでございました。未成年者対策としては、「未成年者の喫煙は健康に対する悪影響や依存をより強めます」「周りから勧められても決して吸ってはいけません」という表示、あまり押しつけがましいとかえって反発してしまうということで、説得的に書いたということでございます。この際にも疫学上のデータを説得的に挙げて、これほど吸っている本人の健康に悪影響がありますといったことを書いてあるということでございます。たばこ事業法による広告規制の仕組みは、事業法の第40条に、製造たばこの広告を行う者は、未成年者が喫煙をしないように、健康との関係を保つように、過度にわたることのないように努めなければならないという努力義務として書いてあります。これに基づいて財務省で指針を定め、これに基づいて業界が対応をしているということでございます。
 質疑応答では、たばこの広告制限をした背景としまして、32ページ一番上のマルのところにありますけれども、過度に広告競争をすると、社会からの批判も厳しいだろうということで定めたということが書いてあります。
 以上、3回分です。

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