前田企画専門官
 これは資料の方につけましたが、取引実態調査というのが平成12年度で約1,300件の酒類業者の方に調査をしております。それで、その調査の中で、例えば、いろいろな取引がありますけれども、その中で1件でも例えば総販売原価を下回っているというような取引があるかというところで見ますと、調査をした中で1件でもそういうのがあるというのは90%程度の業者であります。
 実際、その部分について、フォローアップ等も含めまして指導をしているのですけれども、例えばそれに従わなければだめだといった罰則規定も今のところございませんので、このままでは経営が破綻するというようなことを示しながら、またその酒類ガイドラインというのが公正取引にも出ましたけれども、独占禁止法にこのままだと抵触するおそれもあるのではないかとか、ご説明・指導している状況です。
 前にご説明しましたけれども、酒類業界の中でも、このままで過当競争に陥ってしまい、共倒れになってしまうということで、業界の中でも、リベート等についての合理的な社内基準をつくろうというようなことで、昨年あたりから、各社その整備に取り組んでいるところでございます。

須磨氏
 質問させていただきますが、公正取引委員会とこの国税庁との関係でよくわからないのですけれども、かつて、ある地域で自動販売機の設置を青少年問題から撤廃しようと、地域的に撤廃しようという動きがあったときに、公正取引委員会から、それは公正な競争に反するということで、その自動販売機撤去が無効になったという例がかなり前にあったと聞いているのですね。今の社会的要請からすると、そういうようなことはないだろうとは思うのですが、いわゆる社会的フレームワーク、お酒の取引に関する、どちらがリーダーシップをとっていると考えたらよろしいのでしょうか。

前田企画専門官
 実は、自動販売機につきましては、お酒屋さんの組合であります全国小売酒販組合中央会というところが自主的に撤廃しましょう、という決議をいたしました。これは平成12年の5月までに撤廃しましょう、ということを決議いたしました。これはあくまでも自主的に撤廃するというもので、国税庁においても、自動販売機の功罪を考えまして、従来型の自動販売機は撤廃の方向に進むことが妥当だろうということで、撤廃を指導をしてきました。
 ただ、今先生が言われた話は、ある地区で夜間販売をやめようとか、自動販売機による販売をやめようということを、自主的なものではなく、やめなければならないというようなことで取り決めたものですから、営業の関係の部分で公正取引委員会の方から、こうしなければいけないと決めることは独占禁止法上問題ではないか、というようなことで指導を受けたと聞いております。
 その後、業者の自主的な判断に任せるという形で進んでいったと聞いております。

須磨氏
 これがなぜ疑問になったかといいますと、今後、例えばコミュ二ティでこれは問題だと、規制緩和の方向から反対にコミュニティの意思として何かを発動させようというときに、やはり公正取引委員会から待ったがかかるということがあり得るのかどうかということでご説明いただきたいと思います。

戸田酒税課長
 今須磨先生がおっしゃっている独占禁止法の規定は、恐らくカルテル条項であろうと思います。カルテル条項には、もちろんある一定の価格なり、あるいは取り決めカルテルを実質的につくるということと、実はそれが競争条件に変化を与えるという2つの理由が考えられまして、例えば、談合で何かをするというときには、その部分とそれ以外の部分とで競争条件に変化がございます。それはカルテルになる可能性は十分あるというように思います。
 従いまして、場合によっては、独占禁止法違反の疑いが強いというように言われるケースもあり得るのではないかというように思います

須磨氏
 公正取引委員会に相談ということになるのですか。

戸田酒税課長
 そういうことになります。

須磨氏
 やはりリーダーシップは公正取引委員会の方が持っていると。

戸田酒税課長
 そうではございませんでして、酒類行政として自動販売機をどうするのかというような話につきましては、私どもの行政の範囲内だろうと思います。ただ、それが独占禁止法違反になるか、ならないかということについては、公正取引委員会の解釈といいましょうか、そういう事項であると思います。

須磨氏
 非常に微妙だと思うのですが、社会的規制で、地域の意思、コミュニティの意思というようなものがもし今後考えられるとすると、非常にその辺があいまいになってくるのかなという気がするのですが。

戸田酒税課長
 例えば規制緩和の流れの中で、メーカーで商品の価格表を作っていたものがだんだんなくなっていくとオープン価格になっているようなところはあります。ただ、一種の希望的な小売価格と申しましょうか、そういうものは消費者の商品選択でございますとか、あるいは適切な価格のシグナルを見せることについてメリットがあります。そういった価格表は、経済的あるいは社会的なメリットが消費者に与えられるというようなことがあれば、そういった価格表を一種のシグナルとして出すということについては、価格を拘束するものではないと思います。

奥村座長
 何かほかはございますか。いいですか。
 水谷先生、適宜ご発言をください。

水谷氏
 遅れてきまして、すみません。
 酒類というのが、致酔性があるとか、あるいは財政、税金という特殊な性格を持っているということはよくわかるのですけれども、そういう点から申しますと、あらゆる産業はやはりそれぞれの特殊性がありまして、特殊性に基づいて規制をしなければならない、特殊性があるから保護しなければいけないと、両方の面がどうしたってどこだってあるわけです。それが酒類に関してほかとそれほど大きく違うのかと。こういった点が焦点なのだろうと私は思っておりまして、例えば、今出ております独占禁止関係、不当廉売、これでもう困っているというのは、これはもう酒類業だけではないのでありまして、ほとんど多くのところがそういう状況にあると。それに対しまして、本当に役所の方でそれだけ縛れるのだろうかという疑問を私は持っておりまして、いや縛った方がいいのだろうか、という疑問と言ってもいいかもしれません。決まれば役所はやると思います。やる義務があります。
 しかし、本当はなかなかできないのだけれどもというのが、実際、ご担当の皆様方お感じになっているのではないかとむしろ思っておりまして、それを無理してやるのは、役所はそれが務めだとはいいましても、国全体として、国民全体の立場からして、いささか、無駄とは申しませんけれども、無理が過ぎるのではないかという考えから、一般的な規制を少なくしようという動きにあろうかと私は思っているわけです。
 そういう点から申しますと、従来からある規制を続ける、あるいは特殊性があるからもう少し規制を強化する、保護を強化するという動きでない方がいいのではないかなと。どちらかといえば、役所の方からは、今までやっていたことを放棄するなんていうことは言いにくいのでありましょうから、それをやめるとかということはなかなか言いにくいとは思いますけれども、全体として見た場合には、そういう方向が好ましいのではなかろうかと。これは一般論として私はそんなふうに考えております。
 以上です。

奥村座長
 ありがとうございました。
 水谷先生がいらっしゃる前に、経済的な、我々の言葉で市場経済で対処できるところは、できるだけもう規制の役割は少なくしよう。それにかかわって、あるいはその他の事柄から、市場経済では対処できない文化とかコミュニティの問題だとかいった事柄が起きてきたときには、また新しい観点から行政展開を考えてみましょうと。それをちょっと言葉は熟してないのだけれども、社会的な観点からというような言葉でこのレポートでは入っておりますが、そこはもう少し行政の位置づけを明確にしてというところをお話をしておりまして、今、水谷先生がおっしゃっていただいたことと、そんなには違わないところを検討しておりましたけれども、12ページ、13ページで、行政のフレームワークというところなのですが、ずっとご検討いただいたことを踏まえて、こんなふうに考えていってよろしいでしょうか。
 まず、レギュレーション、規制というのがあって、それは人的な面、販売体制と書いてありますけれど、これはどこで売りますか、といったような物理的な、銀行の言葉で言いますと支店とか営業時間みたいな言葉なのですけれど、あるいは証券と預金と一緒にやってもいいですか、みたいなことが、ここでは販売体制だという、そういう物的な面。それから、モニタリングですね。一旦規制をかけたら、それは検査・考査みたいにモニターして見ていかなければいけない、そういうモニタリングの面。それから(ホ)のところで地域の面と書いていますが、1億2,700万人の日本人もいろいろな価値観があって、もしそういう価値観が地域によって何か違いがあるとすれば、それは全国一律の規制よりは地域別に何か弾力的にやれるところがあればやっていただきましょう、ということで地域的な対応という面が出てきます。これがレギュレーション、規制にかかわる具体的な案件というか、アジェンダです。こういうことがまず1カ所ありますということです。
 次に、経済的な面ではできるだけ自由化なので、ではこれからはもう消費者に責任を全部とってもらいましょうと。消費者の方がどういう有価証券を選ぼうが商品先物取引に手を出そうが、それは自由化だから消費者の方が自分の責任でやってください、お酒もそうです、といったときに、消費者が自分で責任ある行動をとれるような情報の提供が必要ですと。これはすべて業者の方でやれといっていても、それは自由化だからできないわけですので、金融界におきましても、例えば、日本銀行が全国の都道府県と一緒になりまして情報サービスを展開しております。そういったことは政策当局の役割でもあるので、消費者に責任ある選択をとらせる、しかし、それに必要な情報は政府が関わって提供する、あるいは提供できるようにしていこうと、そういう面がもう1つ出てきます。これはレギュレーションが具体的にこうあります、というのとは違うフィールドの話です。
 次に、第3に業界の健全な発達。一種産業行政なのですが、多分健全なというところにウエートを置いて、業界の発達だけだったら、ちょっと国税庁さんの仕事としてはどうかなみたいな意見が出ると思いますが、健全な発達であれば、それはいいでしょうと。この健全なというところに力点を置いて業界全体の発達を考える行政があってもいいだろうと。
 例えば、金融ですと、東京はロンドンやニューヨークに匹敵するような国際金融センターにしなければいけない、そのためには政府が大いに応援しましょう、そういう取り組みなのですけれども、お酒についても日本はゼロであって全部輸入すればいいのだということは、日本人のいろいろな効用から考えて、いけないだろうというので、酒類業の健全な発達についても取り組みましょうと。それに必要な具体的な政策はこういうことであります、というのが3番目の柱で出てくるだろうと。
 大きく分けてその3つですか。それで設置法ともこれで合うのですか、というように考えていけば、この12ページ、13ページは少しリアレンジしていただければと思うのですけれども。
 それで、水谷先生が先ほど繰り返しおっしゃっていただいたことは、従来の国税庁さんがおやりの規制は、どちらかというと市場経済に対して規制をかけてという面もあったので、その面はもうできるだけプレゼンスを低くして、自由化の方向で展開しますと。ただ、それに対して市場の経済の扱えない、しかし国民の幸福にかかわるところで社会的な側面が前面に出てきているので、それに新たに対応した行政を展開し、場合によってはそれがレギュレーションという形で入ってくる部分もありますでしょうと。例えば、大学のキャンパスの中にコンビニが今店を開いていて、そこでお酒を自由に販売して、入学してくる18歳の子たちが自由に買えると、そういうことはちょっとやめていただいた方がいいのではないでしょうかとか、ガソリンスタンドでコンビニを開けるようになったから、それは新しい出来事なので、ガソリンスタンドでのコンビニについては、お酒の全く自由な販売をドライバーに対して深夜でもやります、みたいなことはちょっと控えていただいた方がいいでしょうと。これは世の中も変わってきたので新しい規制として登場してくるということは、多分、この委員会の委員の先生方は、セカンドベストなのだけれども、その程度の事柄は仕方ないかなと。それは言ってみれば経済的規制にかかわってくる範囲で登場してくるでしょう、というような位置づけでしょうか。
 田中先生、そういう整理で足らないところはないでしょうか。

田中氏
 座長のおっしゃるとおりだと思うのですが、もう1つ組織の問題があると思うのですけれども、推進していくための組織体制をどうするかということですけれども、例えば、社会的な規制の問題にしても、未成年者の飲酒の問題についても、どんどん国税庁側で整備していけばいくほど、実は飲食店に逃げ込んでいく。そちらの方でいろいろな問題が迫っていく、逃げていく可能性がありますので、やはり厚労省とか警察とか、あるいは文部科学省なんかと共同して、やはり飲食店における飲酒についても、いわゆる酒の問題ですから、やはり国税庁なりが主導権をとりながら、そこでの正しいアルコールの提供の仕方というものについては、ある程度やはり指導なりできる体制をつくり上げていく必要があるだろうと思いますね。今は免許がないから、あそこは国税庁の問題じゃないよ、というわけにはこれからはいかないと思いますね。やはり大事なのは、国税庁としても、徴税よりも一番大事なのは、やはり国民の健康をどういうふうに維持していくか、快適で安全なものをどう維持していくかということについては、最大限のやはり配慮をすべきだと思いますし、それから第2点目は、今までは行政というのか、公的なことについて、行政が全部責を負うという体制ですけれども、そうではなくて、やはり規制緩和されるわけですし、そうした中ではやはりNPOなりNGOなりの働きというのが大変重要になると思いますし、例えば、学校の教育についても、PTAとか、あるいは地域の教育委員会とか地方自治体の教育委員会とか、あるいはいろいろな団体が子供の教育とかについてやっているわけですし、そういうネットワークというのでしょうか、楽しく伝統ある文化なりを守っていく、国民の健康を守っていく、地域の発展につながるような、そういうネットワークですね、NPO的なネットワークを育て上げていく。直接、やはり地域によって事情が違いますから、それも行政として考えていく必要があるのではないかなと思いますね。ODAの支援なんかでも随分活躍されているわけですから。あれは外国だけではなくて、地域についても実態を知っているのはやはり地域のNPOの人たちでしょうから、そういう力を結集する組織をつくり上げていくというのは必要だと思います。
 それから、先ほど座長の方からおっしゃられたように、いろいろな各企業なりの活動について、やはり外部評価、モニタリングする格付けというのでしょうか、ホテルとかレストランでも三つ星とかいろいろあるわけで、そういう消費者に対する情報を与えるため第三者的な機関による評価というのでしょうか、そういうこともやはり導入される必要があるのではないかなということをもし考えていただければと思います。

奥村座長
 先生がおっしゃった中で、料飲店とのかかわりについて事務局で説明いただけますか。

前田企画専門官
 料飲店の関係の部分でご説明いたします。
 第1回目の懇談会資料の中に、このような警察、国税、厚生労働省というところで、酒販店と飲食店に対してどのように行政として取り組んでいるか。12ページになりますが、ちょっとそちらをごらんいただければと思います。
 未成年者の飲酒問題につきましては、一般のお酒屋さん、それから飲食店、それから学校教育とか地域社会のしつけとかというような感じで、全体で取り組んでいかなくてはいけない問題というのがまずあると思うのです。そこで、業界というようなところでとらえたのがこの表でございますけれども、酒販店に対しては国税庁の方で酒販の免許というのを取り扱う。料飲店については、厚生労働省の方で食品衛生法上の飲食店の許可を得る。それから、未成年者飲酒禁止法なり風適法の部分の取り締まりというところでは警察がやっています。
 国税庁の方で、酒販店に対する指導を仮にやったとして、先ほど田中先生が言われましたように、では飲食店の方にどんどん逃げていったら、そちらで何もしなければ取り締まることはできないのではないか、全体として、未成年者飲酒防止がうまくいかないのではないかという話になると思います。ですから、この部分については、酒類に関する社会的規制というものを関係省庁でつくっている連絡協議会でうまくワークさせることが大事です。
 例えば、国税庁の方で極端な話ですけれども、未成年者飲酒禁止法を適用し、処罰することを税務職員ができるのかと、そういう話になったときにどう考えたらよいのか、それはそういう法律を持っているところが、この場合警察の方がやると。国税庁の方ができるところの部分は国税庁がやる。厚生労働省ができるところは厚生労働省がやる。文部科学省ができるところは文部科学省がやるという形で、全体として行政でやることは責任をもって。また、そのほかに業界の中でも表示の問題とか広告宣伝ですか、そういうような問題もいろいろと取り組んでいると。教育面につきましては、文部科学省の方で取り組まれておりますけれども、しつけとか家庭教育関係の部分は家庭とか、地域社会の方にやっていただく。その地域社会という中に、多分NPOとかNGOの話が出てくるのではないかと思います。

奥村座長
 ありがとうございました。
 はい、どうぞ。

本間氏
 いつでも疑問に思うことは、これだけ分割した責任になりますと、クロスミニストリーというか、そういう連携プレーというのが絶対に出てきにくいことなのですね。そこの何か総元締めみたいなものをつくっていただくという。委員会でも何でもよろしいのですけれど、それが私ども消費者としては望んでいるところなんですが。

前田企画専門官
 行政の方の部分でいきますと、この協議会というのが、今ご指摘がありましたように、個々に取り組んでいたものを全体でどう取り組んでいこうかということで、施策大綱をつくりました。この部分については各省庁が、例えば、国税庁はこの部分を責任持って施策を進めていきなさいというものがあり、それをまとめたものとして、施策大綱がつくられていまして、それに基づいて今各省庁がやっているというところでございます。ですから、そこの部分の取りまとめは、総務省や内閣府というところで、全体を見ております。昨年の9月にフォローアップ調査ということで、1年間どういうことをやってきて、どのような成果があったのかというふうなことも発表してございます。

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