水谷氏
 例えば日本の中で、酒の上で許されるということがあります。これはまずいと思います。だから、酒の上でできた事故については厳罰に処すと。交通規制が変わったのですか、今度。あれは私は正しい方向だと思いますよ。酒を飲んだらどういうことになるか、というのをおおよそわかっていながら飲むと。それで意識を失ってやった場合の刑罰は相当重くなってしかるべきだと。法律かどうか僕は知りませんけれどね。法律を変えるべきだと。そういうことによって、自分で規制するように持っていくべきではなかろうかと、このように思います。

田中氏
 水谷先生と私は同じことを言っているのであって、基本的には私の場合は自己責任ということを言っているわけなのですけれども、ただ、いきなり完全に自己責任で厳罰だという形に持っていくためには、ちょっとまだ時間がかかるような気がするんですね。アメリカ人のように、子供のときから自己責任という形の教育を受けて育ってきている場合と、それから日本のようにすれば何でも仲間うちでグループ組んでやるというところに、いきなりもってくるのは難しいので、先ほど言った意味での、やはり家庭とかコミュニティーとか社会とか、それから同じ仲間同士がいて、そこでやはりお互いが監視し合うとか、あるいは注意し合う仕組みがあれば、一番日本的なメカニズムとしていいと思いますね。そこを育てるための何か法的な措置というのはあるような気がするんです。
 例えば、消費者法の基本法でも、やはり消費者教育とか啓蒙というふうなことを講じているから、いろいろな消費者問題に対応できている部分がありますから、ですからそういう処罰するための法律ではなくて、もう少しそういう礼講なり、それからコミュニティーとか家庭なりでの教育なんかをもう少し支援するためのきっかけとなるような法的な措置というのはあるんじゃないかなと思いますね。

須磨氏
 私も、究極的には、全員が大人になって自己責任を持つ社会が一番いいと思うのですが、現実的にはなかなかそうならないので問題になっているのだと思うんですね。
 ちょっとこれは余談になりますけれども、そもそもがそういう社会があるからこその矛盾の1つとしまして、父母会のお母さんの話題を1つ提供させていただきます。大学に入るときに一気飲みで亡くなる人がいるというニュースが随分流れまして、お母さんたちの集まりで話題になったのは、まず母親として子供にしなければならないことは、大学に入る前に家庭でお酒を飲ませなさい、ということでした。これはこの法律からいうと間違ったことなのですが、親は子供の身を守るために、まず飲ませて、自分がどのぐらいお酒が飲めるのかを判断させてから大学に送り出さないと命の危険がある、というような会話がそこで盛り上がっていまして、皆さんそれに対する反論はありませんでした。納得しちゃっていました。これは1つの社会の矛盾だと思っています。余談ですが、ちょっとご報告したいと……。

奥村座長
 この話は、18歳からということでいかがでしょうか。教育と言われても、大学では18歳から入学してきまして、全員が一緒にそろってお酒を飲んでいるときに、18歳と19歳だけを取り出して、あなたたちは建前上飲んでいけないのだからなどという話は、もうとても非現実的ですね。ですから、「一気飲みだめだよ」というときに、「飲んではいけない人にそういうことを言うわけにもいかないし」と言うので、「18歳以上飲んでもいいよ」と言うのだったら、もう最初から指導できるんですけれど。

若尾酒税企画官
 なかなか難しいご意見です。先ほど審議官がおしゃったという企画官ような問題があるのですけれども、先般、小売中央会にヒアリングをしたときの提供資料にありますが、WHOが1991年に日本で会合を開いて、そのときに勧告を出しています。そこでは、飲酒が許される最低年齢を引き上げる方向で加盟各国は対応すべきだというふうなことが書かれております。

奥村座長
 では、20歳ぐらいが当然という感じだったんですね、引き上げるというのは。

若尾酒税企画官
 アメリカは、先ほど言いました21歳です。

大柳課長補佐
 1つだけつけ加えておきたいのは、確かに欧米では飲酒年齢が高く設定されており、20歳か21歳になっています。ところが、例えばイギリスはフランスあたりでは、親の同伴のもとで子供が飲酒できる年齢というのが別に定められており、一律の飲酒年齢を切っているわけではございません。
つまり、親が同伴し、親の監視のもとで飲むことができる年齢というものが別途定められており、これはどうやら飲酒教育も親が行う教育の一環であるとして許されているようです。これは先程おっしゃられた発想と似ていると思います。こう考えますと、日本では法律上一律20歳以下は飲酒してはいけないとなっていますが、それでも一定の限度内であれば、親の教育の一貫として飲ませることもできる、というような考え方もある意味では成り立ちうるのではないだろうかということでございます。

奥村座長
 販売者における酒類の特性の知識の向上というところなのですが、規制ではなくて、お売りになっていらっしゃる方に、自分はいかに危険物を扱っているかということを十分知っていただいて売っていただこうじゃないかと、そういうことなのですが、現状は、国税庁さんのご指導は何かの研修を義務づけていらっしゃるのだそうですね。あれは業界が自主的にやっていらっしゃるのですか。何かちゃんと研修をやっていますから、と業界の方がおっしゃっていましたが。

前田企画専門官
 研修を義務づけているというわけではないのですけれども、研修をやってください、ということでやってもらっているところでございます。特に今問題になっていますコンビニとか、スーパーにつきましては、どうしてもそういうふうな目で見られていると。実態はそうなんだというふうなものがありまして、統一マニュアルとかを自主的に作ったりとか、そういうことをやっております。法律で云々ということではないですけれども。

奥村座長
 自主的にやっていただいて。

前田企画専門官
 昨年の未成年者飲酒禁止法の改正のときに、年齢確認その他必要な措置を講ずるものとする、というふうなものが入りまして、これは罰則はないのですけれども、では一体どういうことをするのかということにつきまして、7項目ほどこちらからやりまして、その中に従業員教育というふうなものも入れておりました。それ以前から、組合なり協会の方で実務教育を受けるという状況でございます。

奥村座長
 その点はいかがでしょうか。保険という金融商品とか、有価証券という金融商品の扱われ方には、一種の試験をして、それで一種の免許を与えているのですが、そういうことは何か考えられるんですか。お酒を売る人は国税庁さんの試験があって、それを通れば自由に売ってもよいと。

戸田酒税課長
 奥村先生がおっしゃるような考え方はあり得るとは思うのです。
 他方で酒は、酒だというふうに、外形的に認識できるのではなかろうか、あえて専門的な知識がなければ、未成年に酒を売ることができないというふうなものではないのであって、そういったことを法的に規制する必然性がないのではないかという意見もあり得ると思います。
 但し、寺沢先生が先ほどもご発言されたように、例えばスーパーとかでディスカウントストアにおきまして、酒のコーナーというのが比較的フリーな場所に置かれるということの原因の一つは、消費者のニーズに合った説明が必ずしも経営者ができないということから、とにかく商品を並べておいて、消費者の選択に任せることが経営上合理的だと考えているという点がございます。
従って、そういった意味でもう少し酒の特性、あるいは酒の性格、あるいはバラエティーというものについて彼らが勉強すれば、それなりに彼らのコントロール下に全般的な形でもって、酒の売り方というものが置かれる可能性はあるかとは思います。

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