奥村座長
 跡田先生、何か。後でよろしいですか。たしか大規模なビールとの関係のことをこの間ちょっとおっしゃっていて、じゃあ後からちょっと加わっていただくことにしまして。

寺沢氏
 お酒の好きな田中先生のいうことはよくわかるんですけれども、ただ、ずっと私も私的に地域と、結局ローカルがどういうふうに変わってきたかというふうに見ますと、限りなく平準化に向かって行っているんでしょうね。だから、昔は地方というのは例えば交通でいうと物すごく遠くにあって、なかなかそちらに行きにくいとか、気候が違っていてその土地なりの生活風土というのがやっぱりでき上がってきて、そこにお酒があったんですね。だから、地場のお酒というのはそういうふうなものに支えられてちゃんと市場を確保してきたと。ところが、道路はできるは、エアコンは導入されるはということになると、生活自体が日本全国同じようなスタイルになってくると。まして、テレビ等のマスコミで情報はどんどんどこにでも入ってくるというふうになると、今存在している数多くの、特に日本酒メーカーが生き残っていくための基盤というのがどんどん失われているというふうに思うんですね。ですから、これから先そういうメーカーが生き残っていくためには、要するに全国各地、世界中でもいいんですけれども、そこの自分のお酒を愛してくれる、飲んでくれるお客をどれだけつかめるか、そういうお酒を開発できるかということと関係してくると思うんですね。ですから、極端に言うと、今1,500のメーカーが残るためには1,500酒類の特徴のあるお酒をつくるというふうなことでないと、要するに業界が生き残れないと思うんですね。ですから、完璧にそういうふうにする必要はないんですけれども、そっちの方向へ誘導していくような施策は必要だと思うんですけれども、やっぱり伝統文化として保護していこうみたいな政策はちょっと政策の意図が違うんじゃないかなというふうに思います。

本間氏
 その具体的な例がありまして、皆様もうご存じと思いますけれども、今年になってから大活躍のセーラ・カミングというアメリカ人の女の子がいまして、あの子が何年か前に小布施にあらわれて、小布施堂さん、市村酒造場というところですが、彼女を抱えることになって。私が申し上げたいのは、やはり市村酒造場さんが実はつぶれかかって、酒屋さんとしてはつぶれかかっていたところなんですね。ところが、細々と造っていた、そこにアメリカ人という全く日本人と違う発想の人があらわれて、役に立つ過去を見つけちゃったんだと思うんです。これ英語の直訳ですけれども、「ユーズ・オブ・パスト」というのがいっぱい私あると思うんです、伝統的にいろいろ酒を造っていらっしゃるところには各地に。そうすると、小布施というのは特殊なところです。それで、町ぐるみで活性化した例なんですね。彼女は何をしたかというと、もうどこでもやらなくなった木桶造りをまた復活したとか、いろいろありまして、古い蔵を蔵部というレストランにしてしまったとか、大変な外からの目で日本を見た結果、役に立つ過去を見つけて伝統を創造しちゃったんだと思うんです、新しい伝統を。ですから、そういうことがあり得るので、やはり何らかの助成金ということは私本当に役に立つかもしれないと思いますし、もう一つは地域の特徴を生かすというのは非常に大きく物を言うのではないかという具体例をお話ししてみたいと思います。

奥村座長
 私も上海でセーラさんのテレビ番組を、たまたまつけたテレビに映っていて拝見いたしました。自分で大阪の木桶をつくっていらっしゃるところへ出かけていって、説得するようなアクションを伴ったんですね。ありがとうございました。

跡田氏
 申しわけありません。いつも遅れたり休んだりで、きょうは下の方の委員会でつかまっておりまして、なかなか出れなかったんですが、今皆様のお話を聞いていて少し頭の中がまとまってきたのでお話しさせていただきますと、まず恐らく1のところの環境の変化というところと一番関係するんではないかと思うんですけども、やはり大量生産で大量消費をする低価格のお酒というのをつくり、そして販売するという、この高度成長の中で育ってきたものというのはだめとは言い切れないものだと思うんですね。ですから、これも一応認めながら、やはり伝統文化といいますか、日本酒のメーカーというものを、これをどう扱うかというお話になってくるんだと思うんですけども、基本的にはこれはやはり少量生産である程度高級なイメージのお酒というものを各地域がつくっていくということに最終的にはなっていくんだろうと思うんですけれども、それは先ほどもお話がありましたけれども、多分まだ多過ぎるのかもしれませんし、逆に余りにも大量生産型のものが幅をきかせ過ぎているところもあるのかもしれませんけども、時代の流れとしては多分どちらかというとそろそろきらりと光る方が消費者の嗜好に合い始めるはずなんですね。ここまで落ち込んでくると。ですから、そういう各地域で何かしなきゃいけないことというのに国税庁が上から投網をかけるというのはなかなか難しいお話なんじゃないかと思うんですね。ですから、ある程度ビールやそういう大量生産型のものとローカルにつくっているものとで多少税を操作するというようなのは私はあってもいいと思うんですね。ですから、今座長がおっしゃった補助金というのもそういう伝統的なものに対して配慮するという点であってもいいと思います。それよりも、むしろやっぱりマーケットをきちんとそれぞれに仕分けしてつくっていく、そしてお互いに協調し合った方が大抵私どもビールを飲んでから日本酒を飲んで、ウイスキーを飲むというような形で、これは酒飲みだからそうなるのかもしれないけれども、大体お酒を飲む方は1つだけで凝り固まるということは余りないはずなので、協調してマーケットをつくっていくようにむしろ体制としては持っていけばいいというふうに思っていまして、この間大量の販売をする方の方にむしろどちらかというとフィランソロフィーのようなイメージでもいいから自分たちの棚の中にそういう一定の日本酒のコーナーをつくらせるというか、つくらせるというと強制になっちゃいますけれども、それぐらいの配慮があってもいいんじゃないかというふうな制度の考え方、ないしはそういうものをある程度強制しない程度にやはりお互いに協調するにはそういうことが必要ですよ、ということをむしろ打ち出していくというような形で考えていけば、それぞれの酒造メーカーというんですか、そういうのが生き残っていけるんではないかと思いますから、余り極端なことをくくり出さなくても私はある程度日本も成熟してきた国であり、製造業の人たちもある程度考えてくださると思いますんで、そういうのをうまく指導というと言葉が悪いんですけども、マーケットをつくり出すような形の施策というか、政策を国税庁が考えられることがいいんじゃないかと思いまして、その辺のことをちょっと書き入れていただけたらそれで十分なんじゃないかと思っております。ちょっと長くなりましたが。

奥村座長
 ちょっとお待ちください。きょう、ご発言いただいていらっしゃらない方に少し優先的にお話しいただきたいと。いかがでしょうか。

御船氏
 すみません、3点あります。1点は酒類業、もちろんメーカーが中心だと思うんですけれども、メーカーとそれから卸と小売というところが非常に差があるということが1つありますので、そういうことを厳密に整理していくということが必要かなと。
 それから、酒は私、種類が幾つかあって、例えば清酒とワインはどうも違うし、ビールも違うし、それから発泡酒ということもあって、お酒の種類によっても産業がちょっと違う。そうすると、酒というふうに一くくりにできる部分を余り細かくすることは必要ないと思うんですけども、やっぱり業種の特性として少し分けていく必要があるのかなというふうに思います。これ、一つ一つ見て、あの辺を言っているのかな、あの辺を言っているのかなと推測するんですが、それが1点で2点です。
 それから、先ほどの問題ともかかわるんですが、結局酒類業の特性がこういうふうにあると。それに対して産業の特性がこうなので、政府としてこういうことをするとか、あるいは消費者としてはどういうことを要求していくとか、幾つかの層がありそうで、その辺がabcdという形ではなくて、アイウでもいいんですけれども、その辺で少し整理していただければありがたいと思います。
 それから、これはちょっと蛇足になるかもしれませんが、先ほどのちょっと議論にもかかわるんですが、財政物資性という、そのときに私、最初に担当の方にこれ課税物資性ですか、というようなことを質問したんですがどうもそうでもなくて、やっぱりこの辺の書くときにはやはり酒税の根拠というか、先ほどの外部性の問題とか、あるいはもちろん価格が抑制が余り高くないとか、そういうことがきっと根拠に絶対あるわけですよね。これは私たちの税金とかそういう本を読んでも余りはっきり出てこなくて、私このために幾つか勉強してみたんですが、整理していただけるとありがたいなというふうに思いました。
 以上です。

奥村座長
 ありがとうございました。山下先生。

山下氏
 どうという考えもないんですが、環境の変化で挙げるとすれば、供給側というか、事業者側あるいはマーケットの変化というのもあるし、あと消費者側の人間が全般に変わっているといいますか、嗜好も変わっている、食べ物が変われば当然日本酒も飲まなくなるとかそういうことがありますし、子供のころからの教育も変われば当然お酒に対する受けとめ方も変わると。そういう消費者側の変化というのもどこかに挙げて、それに対してどう対応していくかということを考えていく必要があるのかなと思います。それと、酒類業の特性のところで先ほどからどうやって、特に日本酒の生産者の活性化をしていくかというお話、大変興味深く伺ったんですけど、全体の経済の流れのトレンドを変えていくのは人為的に変えていくのはなかなか難しいのかなという印象を持って聞いておりました。その程度です。

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