大西審議官
 この項目立てで柱を立ててみて、ここに酒類の特性ということで4つ書いてございまして、例えばイの致酔性、習慣性というのでもお酒の悪い方の面で健康に影響があるとかというだけではなくて、まだいろいろ一般に言われている言葉というのはたくさんございます。そのうちの代表的なものを2つここで並べているにすぎません。従いまして、先生がおっしゃっているようになかなか致酔性といってもピンとこないし、習慣性といってもそれが何なのかということでありましたら、もう少し平たい言葉で、いわゆるこういうことだという説明をする必要があると思います。ただ、ここでイのところで言いたいのは、外部不経済という話がありましたが、例えば、社会の安寧とか秩序維持とかそういう面で、お酒を飲んで酔っぱらって、事が起こって問題視されているという面から、総じて致酔性がありいろいろな問題があるという言い方をされてきた。習慣性ですとその習慣性というのは要するに依存的になってずっと飲み続けると生活習慣病になるという話ですから、いつか出ました医療的な形でかかるのではないかというような意味で、一般に使われている言葉をここに書いているだけでございます。
 それから、ロの方の嗜好品、ストレス解消のための商品というのは、これはいろいろな表現があると思いますし、例えばコーヒーも嗜好品であり、他にもさまざまな嗜好品がありますが、ここで並べたのは、外部不経済的なものがあるが、全く不要なものか、といったらそうではなくて、イとロとである意味打ち消し合っているようなものではなかろうかということが言いたくて並べているのです。従いまして、この言葉の熟度というものを捉えますと大変辛いものがあるんですが、それから財政物資性につきましては、課長が申し上げたような点もございますが、一般にある意味で財政的に担税力をお願いするにふさわしいものという意味で使っているものでございまして、必ずしも致酔性があって社会的にトラブルな面があるものだから財政力性があると認められているというふうには、必要十分には関係を整理できないものだろうと思います。
 それから、ここで文化・伝統性というのをわざわざ入れております。志は食文化と酒類の組み合わせということだけを言っておりますが、先ほど飲む方の変化というのでしょうか、飲み方の変化といいましょうか、売り方の変化というのもありましたけれども、そういう意味でどうも未成年者の問題などについても文化的なものの枠組みが変わってきていて、飲み方がお茶飲み用といいましょうか、食べながら飲まない、どこででも飲むと。日常的に飲むと。そういった変化があるということをここでひとつ認識をしたらどうかと思ってこれをわざわざ入れています。それから、食文化と酒類という意味では、文化という意味では文化を売るということでしょうから、そういう意味で酒類の特性として整理できないというふうに入れております。いずれにしてもイ.ロ.ハ.ニ.が相互にかかわっているという意識があるのと、イ.ロ.ハ.ニ.の言葉自体は大変熟していない言葉もついていますので、そこはまた検討したいと思います。
 また、是非お教えいただきたいのは、今のご議論の中に酒類の特性というのはかなり変わってきておるというご意見と、余り大きく変わっていないではないかというようなご意見もあって、その点がある意味で今の環境の変化として酒類の特性も変わっているというのは、広い意味で環境の変化でございますので、その点をどう認識すればいいかというような話ですが、そこをぜひ教えていただきたいと思います。それから、もう一つは、今の議論を聞いていてよく解ったのですが、最初の方の(1)の環境の変化のところは極めて供給モデル的な発想で書いております。例えば、先ほどのような社会環境とか飲む場とか、売り方とか、そういった売り方なんですが、利用サイド的なものや外部要因的な変化という意味では確かにここは書きづらいというご指摘はそのとおりであろうと思いますので、少し書いてみたいと思います。いずれにしましてもこの(1)の環境の変化、酒類の特性とは、酒類業の特性とはというような、最終的に(3)の酒類業の特性とはというところに議論を流そうと思って並べてみたものでございますので、いろいろなご意見をいただいて直していただければと思います。

奥村座長
 中で説明しようとしていらっしゃるところについてはご異論はないと思いますので、用語についてもより的確なものがあればまた置きかえていただくことにして、致酔の方はちょっと難しいかもしれませんけれども、ニの財政物資の方は多分何か戦後の状況のようなことを思い出させるような言葉ですので、ちょっと何か今審議官がおっしゃった内容であれば、もし別の言葉がご用意いただければ工夫していただくということで検討を先に進めたいと思います。いろいろな特性について、状況の変化等についてつけ加えられるところがあれば入れていくということでよろしいと思います。
 それから、ちょっと外部不経済のという言葉を使っちゃったんですが、ロは経済学的にはこれは外部経済の方で、大いに応援してあげようという方でありますので、お酒は両方の顔があるということで、客観的にしていただけたらよいと思います。
 それでは、(3)の酒類業の方の検討に移ってまいりたいと思いますが、何か先ほどローカルな酒販店がどんどんつぶれていって、ローカルな製造業もつぶれていくというところが1のロというところで出てきていたんですけれども、業界の方のお話を承っても立場によって随分おっしゃっていることも違いが出てきていたんですが、このローカルな酒販店とかお酒をつくっていらっしゃる方がつぶれていくところの深刻さというか、悲鳴というか、そういうのに対して何か政治的な動きがあるかとか、あるいは何かうまい対応策、時間稼ぎみたいなことはあるのかとか、そういったことでもし事務局の方からつけ加えていただければ、初めそれを伺ってから検討したいと思いますが。

若尾酒税企画官
 特に日本酒メーカー、かつては3,000ぐらいあったんですけれども、今は2,000を切る、実際につくっているところは千数百、千五〜六百というところまで数が減ってきております。お酒の消費量が日本酒の消費量が一番多かったのが170万キロリットルぐらいで、現在は100万キロリットルを切るというふうなところまで落ちてきております。そういうことで、ここにもちょっと書いてあるんですけれども、業界の近代化等が必要だろうということで私どもの方では中小企業のためのスキーム、今法律が変わってきているのですけれども、中小企業近代化促進法によるスキームを使いまして、清酒業界の近代化、構造改善に努めてきています。それから、新たに経営革新支援法という法律が制定されたんですが、初めて清酒製造業を同法の特定業種ということでほかの業種に先駆けて中小企業庁にあります中政審というところで議論をいただきまして、第1号として、ほかに2業種ありましたので合わせて3業種が指定をされて、さらに業界の経営基盤を強くしよう、ということで5年間の計画に今取り組みを始めたところというところでございます。国税庁としてはそういう立場で業界の大変厳しい状況を少しでも今のスキームの中で支援ができるようにいろいろとやってきているところでございます。

奥村座長
 ありがとうございました。先生方からご発言いただきたいと思います。

田中氏
 神崎先生の方があるいは詳しいかもしれませんけれども、さっきの前段とも関係すると思いますが、売り場だけじゃなくて消費の場面でも変わってきているということがありまして、かつてやっぱりお酒というのはそこの地域の食文化と大きく関係しておりますから、例えば漬物のようなものを食べながら飲む地域のお酒と、あるいはカツオのようなものを食べる地域のお酒では当然地域の味が違いますし、そこの地域の中ででもいろんな食文化なり生活業種なりと一体化されてコミュニティーの中に育ってきたものだと思うんですね。それがだんだん崩れてコマーシャルのそういう、多分酒店は認識あると思いますけれども、ただそういうものを飲むのが格好いいとか、それから買ってしまうとか、そういう買いやすい場面とかそういうふうになってくると思うんですけれども、そういうローカルな日本の持つ地域の豊かな文化みたいなものはどうしてもマスマーケットとか、マーケティングの中で消えていく場面が今起こってきていると思うんですが、やはりこれからの21世紀の日本の文化というと大げさかもしれませんけれども、やはり地方の豊かな文化というのは残して、大事にしていきたいという感じは持っていますけれども。その中でやはり1つの地域の地場産業とか地酒とかと言われるものは1つのアイデンティティーの1つにもなってきていると思うんですね。だからこそ、今地方のお酒でもそれぞれの県で酒造好適米を持って、地元の産業と一体化して相互連携を重ねながら1つのものをつくっていこうと。そしてあるいは新聞なんかもそうですけれども、やっぱり初めて搾る日にはマスコミも来たり、地域の人を呼んでそこでみんなで祝うとか、そういう形のものが今形成されつつあるので、特にお米もそうですし、それから関連のおつまみとかあるいは居酒屋で飲む習慣とかそれからお祭りとか、こういうものがもう一度見直されていく中ですので、そういうものはひとつ大事にしてほしいなという気がします。

奥村座長
 司会者の域を超えたことを伺っちゃうんですが、田中先生の今のご発言だと一種の伝統工芸、伝統産業なんで、政府は補助金を出したらいかがかと。ビール業界には出さないけれども、清酒業界には出しましょう、そういうご提案でも違和感はないですか。

田中氏
 いや、全然違います。そうじゃなくて、個人の自主的な努力が先ほどありますので、そういうものを育てていくといいますか、むしろ元気づけていくような形のものができないだろうかと。先ほど経営革新支援法なんかもそういうところに使ったらいかがでしょうかということであります。だから、補助金をばらまけという意味じゃないです。

奥村座長
 私は決して補助金は全部悪いとは思っていないんで、ただ何か大規模なメーカーはビールだとかワインなんかをつくってきて、日本酒はどうしても小規模にならざるを得ないんで、そうするともう対抗できませんと。何か規模の経済が働かないとかいろいろな理由で対抗ができませんと。そうするとどんどん小さい酒屋さんは製造も販売もつぶれていっちゃうんで、それだともう文化は育たない、地域のコミュニティー、人間的なつながりによくない影響を与えるので、という論理であれば、決して補助金を出すのは悪いことじゃないと思えてきちゃうんですけども。

田中氏
 すみません、ちょっと言葉足らずだと思いますが、現状の数がじゃあ多いか少ないかというふうなところにいくと、まだ多過ぎる部分もあるんじゃないかなというところがあるんですね。だから、県によってはかなり整理統合されてきちんとなったところもあるし、なまじいろいろな小さなところが何か頑張って残り過ぎているような県もあるし、ある程度全国レベルで言ってみれば地域特性の中でやはり適正な規模というのがあるんじゃないかなという気は持っております。

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