奥村座長
 どうもありがとうございました。大変暖かくなっておりますので、上着などおとりいただいてお進めください。
 論点項目は4本柱が立っていますが、まずこのアジェンダの柱について何か議論しておく必要がございましたら、最初に取り上げていただきたいと思います。
 よろしいでしょうか。用語で酒類行政とお書きになっていらっしゃるところが4点ここであるのですけれども、そこの酒類行政のカバーする範囲というのはどのあたりなんでしょうか。例えば、酒類業の産業としての規制なりあるいは抑制なり、そういったこともこの酒類行政の中に含まれるような感じなんですか。皆、入っているということですね。そうすると、酒税の保全というか、酒税の徴収の観点から酒類業の健全な発達が求められるのでかかわってくるということでよろしいでしょうか。あるいは、酒類業をカバーしている官庁さんは他にはないので、経済産業省的な観点からも酒類業についてはこちらでカバーするという部分も少しは入っているということですか。

大西審議官
 酒類行政が酒税保全のところからスタートしておりますので、今のようなご質問があるのだろうと思います。ここで酒類行政のフレ―ムワークと言っている場合は、できるだけ広く考えていただければと思います。それから、国税庁以外に酒類行政についてかかわる役所がないかと言われれば、それはさまざまな規制なりで関わっておりますので、主に国税庁のやっております酒類行政を中心に広く考えていただければというふうには書いております。
 また、そのあたり所管なりについては後で説明したいと思います。

奥村座長
 項目とか項目の立て方についてはよろしいでしょうか。
 それでは、また前後していただいて結構ですので、論点項目を整理していただきました資料の1ページの最初のところ、環境の変化といったところからやってまいりたいと思いますが、(1)環境の変化でイとしまして、酒類市場の成熟化というのが挙がっております。多分、その発言の重い軽いというのは関係なく羅列していただいておりますので、内容についてのご質問から、あるいはこの点が特に留意すべきといった点も踏まえまして、ご発言いただけるとありがたいのですが。
 私からで恐縮なんですが、(販売競争の激化)bというところで「限界を超えての価格競争」という、経済学の教科書では反するような言葉が出てくるのですが、これはごく一時的にはシェア競争をやるのでこういうことが起きて、最近は特に規制の緩和に伴って目立っているというふうに考えていてよろしいのでしょうか。確認だけしておきたいと思います。

若尾酒税企画官
 これはここに書いてあるように、小売中央会の発言でございまして、大変彼らの業界の中ではスーパーやDS、そういったところの価格訴求の販売競争に自分たちはもう全くついていけないというふうなことでご発言をされていたというふうに考えております。

奥村座長
 たしか中央会の方がご発言いただいたときも、類似の質問をさせていただいたかと思うのですが、そのお答えが、いや、一時的なシェア競争のためだというよりは、次々と何かこういう限界を超えたような競争がいろいろなところで起きてくるからというようにおっしゃっていたかと思うのですけれども、まだしばらく時間的にはまだ何年もこういうことが続きそうだという認識が業界では強いのでしょうか。

若尾酒税企画官
 ということだと思います。ここにもありますように、成人1人当たりの飲酒量というのは減ってきている状況ですし、メーカーの方では生産というのは自由に行えるような形のところが多くなっていますので、過剰な供給力を持ってくるというふうなことになりますと、まだまだ競争は激化していくのではないかというふうなことは一般的に言われていることだと思います。

井岸氏
 今、おっしゃられているように、まだ当分の間、メーカー間のシェア争いというのはますます激化するだろうと思います。それは1つには輸入商材が入ってくるということももちろんありますけれども、メーカー間でやはり既に投資した工場設備等、これはもう稼働率を上げないとどうにもならないという宿命を負わされています。これを上げるためにはそれだけの需要があろうがなかろうが、ともかく造ってしまわなければ今現状売っている価格競争に負けてしまう、あるいは販管費その他が出てこないという関係にありますし、これはもうとまらないと思うのです。形として現にここへ来て大手ビールメーカーがいろいろとビール以外の酒メーカーの吸収・合併あるいは提携等に乗り出しているという現実論がありますから、ますます大手による競争は熾烈化されて、これは当分続く。そこに持ってきて、今お話がありましたように、飲む方は逆に微減でしょうけれども、消費量そのもの、そういったようなことの環境は変わらないと。ますますそういった意味で競争は激化していくのだろうと思います。そういうふうに考えております。

奥村座長
 今のところでほかの先生方はよろしいでしょうか。今、井岸先生がおっしゃったことは、私たちがやっている経済学的にはすごくわかりやすくて、サンクコストといいまして、一たんメーカーが大きな設備投資をやってしまって、それは他に転売しても価値がありませんと。したがって、そのコストはもう、コストとして意識しなくて、展開していくんですということになりますので、そうすると、「この原因は何ですか」と言われたときには、その設備投資をなさったときに、お酒の消費量なりあるいは海外のお酒が日本へ入ってくる輸入のところなりの予測を誤って過大な設備投資をしてしまったと。それが今サンクコストになって残っているのだと、そういうふうに考えると理論的には整理しやすいのですけれども、そんなような整理の仕方でよろしいでしょうか。そういうことがしばらく続くということですね、過大設備が減価償却を終えるまではかなり残って、そのコストを度外視して供給していかなければいけない。

井岸氏
 お酒の種別によって違いますけれども、やはり弱肉強食が当然またあるわけですから、そういった意味では競争は続くという、そういう内面からもあります。

奥村座長
  そうしますと、1つは消費をしなくなったということのようなんですが、もう一つは国際化の問題なんですが、ロのところで国際化の進展、国内産業の動向という項目が挙がっておりますが、こちらはいかがでしょうか。田中先生はメーカーなどの大幅な退出入というところでご意見いただいていたかと思いますけれども、何か追加的なことございますか。

田中氏
 すみません、ちょっと今、別なところで。

奥村座長
  ほかのところでも結構ですので。

井岸氏
 商品の多様化、一般商品化、ライフサイクルの短縮とありますけれども、アルコール度数の低い飲み物にシフトしてきていることも1つあると思うのですね。これは要するに飲みやすい。一般飲料水とさして変わらないという感覚で飲まれている。これが後で問題になる未成年の飲酒につながってくると思いますけれども、こういったような傾向であれば、やはりどちらかといえば業務用の市場などでも競争がどんどん進んでくると思うのですね。そこの業務用を目指しての業者間の競争が出てくると思います。ですから、ビールメーカーがチューハイ、缶チューハイというものをつくるとか、あるいはビール各社がついに全部発泡酒をつくりましたけれども、その発泡酒をさらに値下げする競争をすると。こういったような傾向というのはどんどん続きますから、一般商品化と言っていますけれども、この意味合いというのはちょっと、もっと明確にした方がいいのではないかなと。ここに書かれている「パッケージも酒らしくないものが販売されており、それを若者が飲んでいるということであれば・・・」と書いてありますけれども、そうではなくて、酒であることをわかっていてもスーパーマーケットの飲料水の隣にいっぱいあれだけ並べてあれば、だれもが手軽に飲んでいいのだというふうに考えますから、そういうような一般化という形で出てきていると思います。そこを目指しての競争になってしまうと思います。ですから、当然それにつられて、例えば大手がやはり弱肉強食でもって勝っていくのではないかなと思います。その競争がもっと激化していくのではないかと。

奥村座長
  今、井岸先生がおっしゃったことは、売り場でスーパーなどがどんどん酒類を売るようになったので消費者が買いやすくはなっていますよね。しかし、過剰にというか、余り飲むべきでない人まで手が出てしまうということですか。

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