山本課長
 それでは、公正取引委員会の対応の右側ですけれども、今申し上げたように、一番上の○にありますように、一方では差別対価などについて、どういった場合に調査を開始するかという基準を明らかにするとともに、2番目の○にありますように、メーカー及び卸売業者に対し、リベートの供与基準の明確化のための取り組みを要請するということを私どもの対応として明らかにしております。これは必ずしも今日のテーマの酒類に限らないかもしれませんけれども、日本の流通分野においては、かなりリベートの支給基準が不明確、もしくは裁量的なリベートの提供が行われる場合が実はございます。先ほど不当廉売のところで申し上げました、年度末なんかに事後的に額が判明するリベートということで、あらかじめ小売業者が一体幾らもらえるかわからないというようなもの、こうしたものは最近では減ってきているという指摘もあるわけでございますが、そういたしますと、どうしても小売業者としては、メーカーなり卸売業者、仕入れ先の言うことを聞かないと、後から幾らもらえるかわからないリベートが減らされるのではないかというようなことも考えて、どうしてもメーカーなり卸売業者に依存するような取引関係ができ上がる場合があります。また、そういった関係の背景に、リベートが独占禁止法上問題となるような手段として使われるようなことも過去にはございました。したがいまして、メーカーなり卸売業者に対して、こういったメーカーが、もしくは卸売業者が、取引先に対して供与するリベートの支給基準の明確化というものの取り組みをしてもらいたいという要請を、メーカー、また卸売業者に対して行ったところでございます。
 それから、2枚目にまいりまして、これは簡単にご報告させていただきますけれども、不当廉売事案の処理状況ということで、最近1年間に、私どもが一つは警告事例ということで、昨年の3月ですけれども、埼玉なり札幌の缶ビールがかなり、先ほど申し上げたような、販売に要する費用を著しく下回る価格で継続して売っていたということで警告を行った事例がございますし、また昨年の7月、これは兵庫の事例ですけれども、350ミリ缶のケースについて同様の問題があったということで、警告を行った事例がございます。また、注意件数ということで、この3〜4年間の注意件数を書いてございますが、私ども公正取引委員会が現在不当廉売の関係で注意等をしている件数としては、お酒に関するものが圧倒的に多い数字となっておりまして、ここにあるように、平成13年度は、昨年の12月までの時点で約2,000件の注意を行っているところでございます。
 以上で、ご説明とさせていただきます。ご質問等、受けさせていただきます。

奥村座長
 どうぞ、ご自由にご発言ください。

井岸氏
 基本的な話なので、不勉強なのはお許しいただきたいと思うのですが、独禁法上の再販売価格制度の維持というのが禁止されて、例外的に品目が挙げられているというふうに理解しているのですが、例えば酒類みたいな致酔性飲料であると。かつ、こういった不公正な取引がどうしても今行われている。これは過剰生産であるとか、いろいろな背景にそういったものがあるのかわかりませんが。そういったような中で、やはり再販価格制度というようなことは考えられない商品なのでございましょうか。

山本課長
 結論としては、私どもそういったものは考えておりません。今ご質問をお聞きして、確かに制度としてはそういうものが認められて、今お話しのとおり、新聞とか書籍については、委員ご承知のとおり、独占禁止法の法律自体で再販売価格の維持というものが認められております。他方、それ以外の商品については、基本的には今おっしゃったとおり、例えばメーカーが卸なり小売に、自分が相手方に売る価格はもちろんメーカーが決められるわけですけれども、それを仕入れた卸売業者なり小売業者が消費者に幾らで売るかという価格は、事業者にとって最も大事な取引条件ですから、そういったものは自分で決めるべきだと。それがまさしく公正で自由な競争になって消費者に利益になるという考え方で独占禁止法はできておりますので、そういった安全性なりに関する商品というのは医薬品とか、ほかにもいろいろあるかもしれませんけれども、私どもとしては、諸外国の例を見ても、そういった例はないと思いますし、やはり今、公正で自由な競争を推進していくという観点からは、そういったことはいかがかというふうに思います。

奥村座長
 山下先生、何かございませんでしょうか。

山下氏
 2枚目の統計で、注意件数がやはり酒類は非常に多いということで、これは1ページ目の不公正な取引方法の規制を積極的に使われているということではあると思うのですけれども、これだけ注意件数があるということは、やはりマーケットの状況が相当特殊なものがあるのかなという気もするのですね。そういうことに対して、独禁法のこの不公正な取引方法の規制を厳重に執行していくということはやられていると思うのですけれども、規制の方法として、現在のこの規制では少し不十分なのではないかといいますか、独禁法のエンフォースの観点から見て、本当にこの現在の不当廉売と差別対価の規制を適用するということで十分なのかどうか。公取の方は法律に従って行政をされているので、そこら辺の判断は難しいと思いますけれど、日々運用されている中で、現在の規制というものが果たして十分かどうかとか、そういう点について何かお考えがございましたら、教えていただければと思います。

山本課長
 今ご指摘いただいたとおり、先ほども私ども申し上げましたけれども、酒類の分野では免許基準の緩和が進展していると。そういったことで、いろいろな業態の事業者が参入してきていると。それからまた、消費者の購買行動を見ても、いわゆる酒屋さんに瓶を届けてもらうという形から、瓶から缶へ、また1本単位からケース単位へという消費者の購買行動の変化等、そういったことも認められると思います。おっしゃるとおり、私ども公正取引委員会の方に不当廉売ではないかという申告も随分ふえましたし、私どもも問題としたケースもふえてきたわけです。したがいまして昭和59年に、これは先ほどもご説明したとおり、すべての小売業者が対象となるようなガイドラインを出しておりましたけれども、酒類については酒類の取引実態を踏まえた、私ども酒類ガイドラインと呼んでおりますけれども、酒類の取引を前提にして、こういった場合には問題になる、ならないといったものをガイドラインとして考え方を明らかにする必要があるだろうということで、一昨年に明らかにしたわけです。
 それでどういった場合が問題になる、ならないという基準を酒類の取引に即して明らかにしたつもりなのですけれども、それもあってか、平成13年度は、今2枚目の資料を見ていただいておわかりのとおり、平成12年度に比べて倍ぐらいの注意件数になっていると。これは私どもがガイドラインでどういった場合が問題になるかということを明らかにした、要するに卵が先かが鶏か先かという話かもしれませんけれども、ただ、私どもとしては、一方ではそういったガイドラインで考え方を明らかにするとともに、その考え方に基づいて、そういった問題事例があれば適切に対処していくということで進めていこうというふうに考えております。
 あと、今のご指摘で、そういった取り組みとして何かないかという点についてもう一つ申し上げると、これは酒類だけについての話ではございませんけれども、独占禁止法というのは、基本的には事業者の方に競争してもらいますということで、もし競争しないような、もしくは公正な競争を邪魔するような行為があったら、その事業者に対して不公正な行為をやめなさいと、やめてちゃんと競争してくださいと、公正な競争をしてくださいということを言うわけですね。従来は、そういった事業者に対して、そういった行為、独占禁止法なり競争上問題になるような行為の差しとめを命じることができるのは、公正取引委員会だけだったわけですね。ただ、実は昨年の4月から、民事的救済制度という制度が独占禁止法上できておりまして、従来は公正取引委員会だけが、そういった問題がある行為について、逆に言えば事業者の方は公正取引委員会に言わないと、独占禁止法上問題だということで行為の差しとめが求められなかったわけですけれども、昨年の4月からスタートした民事的救済制度で、独占禁止法のきょうお話ししたような不公正な取引方法で被害をこうむっている、損害をこうむっている方は、裁判所に対してもそういった行為の差しとめを求めることができると、そういった制度が新しくできたところでございまして、そういったものが不公正取引に対する新しい制度的な対応と言えるかというふうに思います。

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