山本課長
どうもこんにちは。公正取引委員会の取引企画課長をしております山本でございます。
今日は、お手元に資料的には2枚しか置いてございませんけれども、私の方から、酒類の公正取引委員会の取り組みについて、最初に横長の囲みがいっぱいある紙からご説明させていただきたいと思います。
まず一番左上を見ていただきたいのですけれども、これは現行規定というふうになっておりますけれども、独占禁止法でどういう形になっているかということを最初に簡単にお話しさせていただければと思います。独占禁止法では、ご存じのとおり、いわゆる談合のようなカルテルとか、あと独占と言いまして、そういう独占を図るような行為と並びまして、ここに書いてあります独占禁止法第2条第9項で、不公正な取引方法というものを禁止しているところでございます。
では不公正な取引方法というのは何かということで、実はこの独占禁止法第2条第9項に書いてありますように、具体的には公正取引委員会が指定するものをいうというふうになっておりますけれども、独占禁止法第2条第9項で、不当な対価をもって取引することという部分がございます。そして、それが今日お話しいたします不当廉売なり差別対価の根拠になっていくわけです。具体的には、左上の独占禁止法第2条第9項の下の枠組みのところに、不公正な取引方法というものがございます。これは昭和57年に公正取引委員会が告示いたしたものですが、今申しましたように、法律で不公正な取引方法とは次の各号に該当するもので、公正取引委員会が指定するものをいうということになっておりまして、公正取引委員会が昭和57年に16の類型を不公正な取引方法として指定しております。そのうちの6番目に、不当廉売に関する規定がございます。これをちょっと読ませていただきますと、「正当な理由がないのに商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し」ということで、「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること」という形になっております。
かなり抽象的な文言になっておりますけれども、それを受けまして、その下の矢印にありますとおり、不当廉売ガイドラインというのが左から3番目のところの枠組みにございます。すべての小売業者が対象と書いてありますけれども、小売業者の取引を念頭に置きまして、昭和59年に公正取引委員会が不当廉売に関するガイドラインというものを出しており、今の上の6番に網かけにして「供給に要する費用を著しく下回る対価」と書いてございますけれども、この不当廉売ガイドラインにおきまして、供給に要する必要を著しく下回る対価というのは、小売業者の場合には、通常仕入れの価格がございますから、これを下回るかどうかを一つの基準としますということを書いたところでございます。こういったことで、不当廉売については不公正な取引方法の6番目に不当廉売という規定があり、また、それについて昭和59年に不当廉売ガイドラインというものを、これは特定の業種を対象にしたものではなくて、いわゆる小売業を念頭に置いて出したものがございます。
その右側に行きまして、酒類の取引実態に即した明確化という枠組みに行きます。この中身をご説明させていただきます前に、一番上に表題がございますが、これは酒類の不当廉売、差別対価に関するガイドラインのポイントというふうに書いてございます。このガイドラインというのは、今申し上げた昭和59年のガイドラインではございませんで、実は一昨年になりますが、平成12年12月、ちょっと年月も書いてなくて申しわけなかったのですが、平成12年の11月、それをちょっと一部補正いたしまして、昨年の4月と2回にわたりまして、酒類の分野についての考え方を公正取引委員会としては明らかにしております。
その背景について、中身のご説明の前に一言申し上げたいと思うのですけれども、ご承知のとおり、今こちらの懇談会でご検討なさっている酒類を含めまして、今、我が国においては、いろいろな分野で規制改革と言われているものが進んでいるわけでございます。公正取引委員会も、一方ではそういった規制改革をこういった観点から進めるべきだとか、規制改革がちゃんと進むようにということで、いろいろな取り組みをしているところでございますけれども、それとあわせて、規制改革が進んだ分野において公正な競争が行われるように確保していく必要があるという、そういった規制改革を進めるという取り組みと、他方で、規制改革後の市場において公正な取引が行われるように努めると、この2つに取り組んでいるところでございますが、今お話しさせていただいているのは、もっぱら後者の部分なのですけれども、そういったところで、私どもとしては、酒類につきましては免許基準の緩和が進展しているとか、そういった背景を受けまして、一昨年、今申し上げたようなガイドラインという形で、酒類の不当廉売に関する考え方というものを出して、酒類の取引実態に即した形で、この昭和59年のガイドラインの考え方を明確化したところでございます。
一昨年の11月に発表したガイドライン自体は、昨年度12月のこちらの懇談会の第1回の参考資料として配付いただいているというお話なので、簡略化したペーパーしかつけしておりません。
それでは、どういうことが書いてあるか、中ほどの枠組みのご説明をさせていただきますと、この「供給に要する費用を著しく下回る対価」というものは、値引きなんかを考慮に入れた実質的な仕入価格を下回るかどうかが一つの基準となると。日本の流通分野におきましては、酒類に限らず、いわゆる仕切価格以外にいろいろなリベートといったものがだされている場合がございます。いわゆる仕切価格だけではなくて、値引きなんかも含めた実質的な仕入価格を基準に考えますということを明らかにしております。他方、2番目の○にありますように、酒類の取引実態に即して、実質的に値引きと認められないリベートとはどういうものかというものを明らかにしておりまして、年度末なんかに事後的に額が判明するリベートというものは、これは仕入れの段階では小売業者の人は一体どれだけ出るのかわからないということですと、これは仕入価格の実質的な値引きとはカウントしないということを書いております。
また、先ほどの左側の2番目に、不公正な取引方法の6、不当廉売の規定をご紹介しましたけれども、この6のところをもう一度見ていただきたいのですけれども、これは、一つは「供給に要する費用を著しく下回る対価」というものがあり、また、「継続して供給する」という要件があるわけですけれども、この継続して供給するというのはどういうふうに考えるかということを、今の酒類のガイドラインの3番目の○のところに、例えば週末ごとの廉売でも継続ということになると。要するに毎日やらなければいけないのかということについての考え方を示したわけですけれども、酒類のように、ある程度買い置きができるような商品であれば、週末ごとの廉売でも継続と認められるといったことを書いてございます。
それで、一番右側に公正取引委員会の対応ということがございまして、具体的には、このガイドラインでは具体的な酒類の取引実態を踏まえた考え方を明らかにするとともに、公正取引委員会がどういうふうに対応していくかということを書いてございます。一つは、いろいろな小売業者の方等から、あそこのお店で売っているこういった値段は問題があるのではないかと、私ども申告と呼んでおりますけれども、そういう申告をいただいております。それに対しては、原則2カ月以内の迅速な処理ということで、これは全国津々浦々で行われている案件なので、非常に多数の申告をいただいているわけですけれども、以前は、私どもが事件として結論を出すまでに時間がかかるという指摘がありましたので、原則2カ月以内に迅速な処理を行うという処理期間の目標をこの考え方の中で明らかにしたところでございます。他方、2番目の○になりますけれども、大規模な事業者が行う案件とか、また繰り返し行われるような案件については、厳正に対処するということで、注意や警告なり、そういった必要な措置をとっていくということを言っております。
もう一つ、左下に戻っていただきまして、差別対価ということについてもご説明させていただきたいと思いますけれども、この差別対価については、先ほどの昭和57年の、左側の一番下のところですけれども、これは3項と4項と2つに分かれております。3項は、網かけの部分ですけれども、相手方によって差別的な対価をもって供給することということで、要はAさんには幾らで売り、Bさんには幾らで売りということでございます。それから、もう一つの4項の取引条件等の差別的な取り扱いということについては、これも同じ話ですけれども、取引の条件等について、ある事業者に有利な、もしくは不利な取り扱いをすることということで、価格以外の取引条件もありますので、Aさんにだけこういった商品を出すとか、Bさんにだけこういった商品を回すとか、そういったものが競争に影響を与えるような形で行われた場合には問題となるという規定がございます。
これについて、中ほどの方に移るわけですが、一昨年のガイドラインにおきまして、小売業者への価格なりリベート等が、取引量を反映しないような著しい格差があるような場合には問題となるということを明らかにしております。