田中氏
 どうも勝手を申しまして最初に発言の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
  大変詳しく説明いただき本当にありがとうございます。論点がはっきりしてきたような気がします。
  それで、まだ何でしょうか、漠然と私自身のまだ考え方も詰められてない点がありますけれども、全体的に17ページのところにいきたいと思いますが、酒類産業行政施策のフレームワークというふうなことで、大筋酒税の保全から酒類業の健全な発達というふうな流れがあると思うんですけれども、先ほど最後に諸外国等の例でご紹介あったように、日本の場合は日露戦争以来、酒税を採るためのというのか、税金を取るための課税業務がずっと続いてきたわけですけれども、やはりそのベースは急には変わらないと思いますけれども、やはり酒類業の健全な発展という視点からの課税のあり方というのがあるんだろうと思うんですね。それは最も大事なのはやはり国民の健康というふうな視点から課税を考える必要があるだろうと思うんですね。ロシアとか、いろいろなところでもそうですけれども、余り飲み過ぎると、今度は工場に勤務態度が悪くなって遅刻する労働者が増えるというので、ソ連時代大変苦しんだことがあるそうですけれども、今度は厳しくすると、密造酒が出回って、また今度はそっちの方で健康を害するというふうなことがあって、大変ソ連でも長い間この酒税なりの酒類の規制について難しいことがありました。それから、産業革命でも飲み過ぎると労働者が強い酒を飲むといけないというので、やはり強いスピリッツ類については高い税金を課して、ビールのようなものについては比較的安い税金で、国民の健康を促進するという発想があったと聞いていますので、ぜひそういう国民の健康という視点からひとつ課税のあり方も考えていただきたいなという気がします。
  それから、第2点は、それに絡みますけれども、当然ながら規制緩和ということと市場競争ということが入ってくるわけですが、そうしたときに一番大事なのは結局消費者利益の擁護というふうな点を、具体的な形で安全である権利とか、あるいは知る権利とか、いろいろな面での消費者利益の擁護というふうな視点も、第2点として重要になってくるのではないかなと思います。事後的なチェックというのでしょうか、そういうことが事前規制から事後的なチェックという方向で、その際は基準になるのは消費者利益の擁護ではないかなと思います。
  それから、第3点は、少し出ておりましたけれども、やはりどこの国でも、ワインでも、あるいはスコッチでも、やはりそこの国の伝統的な食文化と結びついておりますので、こういう伝統文化の継承というのでしょうか、ということも大変大事なことになってくると思いますし、こういうグローバルな時代になればなるほど、そういうローカルな文化というのが非常に世界的にももてはやされますし、そういった点でやはり小売店がどんどん減少してきますと、それに連れてローカルなまた製造場も危機に、つぶれていく可能性が多いと。そうすると、そこでのいろいろな長年培われてきた伝統的な、日本の場合はお酒を通してのコミュニケーションとか、人間関係とか、そういうものが続いてきているわけで、その辺の日本らしい伝統文化、食も含めての継承という点も大事な点ではないかなと思います。
  それから、それにも絡みますけれども、現在経済産業省の方でも進めているんですけれども、全国の商店街が非常に、中心商店街が特に空洞化してきておりまして、中小市街地活性化法というふうな法律とか、いろいろな形で都市計画を整備したりしているわけなんですが、そういう中でやはり酒販店とか、駅から住宅街に行く中での酒販店がやはり明るく灯をともしているということは、そこは日本は大変そういう商店街が明るいということで、女性の方々も夜遅く安心して通れるというふうな事態があるわけで、余りそういうところが競争に巻き込まれますと、外国のように中心部がもう暗くなって、コミュニティとしての安全性が保てないというふうな状況がありますし、またディスカウンターなんかが出てきている中で、やはり頑張っている中小の酒販店は、地域の人たちといろいろなコミュニティをつくって、いろいろな地方の酒を楽しむとか、あるいはいも煮の会をやるとか、そういうコミュニティ環境も非常に形成しております。そういう意味で中心市街地というふうな立地環境の整備でしょうか、都市計画というのか、そういうところから見ても酒販店のあり方が非常に大事な役割を持っているし、またリーダーをしていると思います。
  それから、第5番目の点は、先ほども言いましたように、未成年者等の飲酒について、厳しく取り締まらなければいけないけれども、一方ではそういって未成年者が今度は買えなくなると、そういうところを陰で暴力団みたいな人たちが若い人たちに売って、それでもうけるというふうな、そういう薬物みたいな感じで資金源にするというふうな可能性も、余り厳しくなるとなってくると。そういうときにやはり学校教育、家庭教育、それから地域、それから警察等の方の支援というのでしょうか、あるいは教育体制、警備体制がきちっとしなければ、やはり別な意味でのまた弊害が出てくるかもしれない。その辺のところについての手当をしておく必要もあるのかなというふうに感じました。
  少々1回目の集まりに長くしゃべり過ぎて恐縮ですけれども、ちょっとこれで学校のほうへ戻らなければいけないものですから、すみません。

座長
 もしお急ぎの先生いらっしゃいましたら、先に御発言いただくとよろしいかと思いますが。特にございませんでしたら、あいうえお順で井岸先生からお願いいたします。

井岸氏
 それでは、私自身は現在加工食品卸協会にいますけれども、実際に会員が卸売業者二百数者でございますが、半分以上が酒の卸売免許を持っておる業者、そういう業界団体であります。自分自身も40年間そういった意味では酒の卸売業務の中にいた側面もございますので、それを踏まえて以下の意見を言わせていただきます。
 一つには、規制緩和ということでございますけれども、これが今日の免許制度にいろいろ激震を起こしている。問題は今最後にお話がありましたように、諸外国はそもそもこういった免許制度に関しましては、酒税の保全に対しまして警察目的であるというお話がございましたが、やはり今のお話にもありましたように、これからの日本の酒類業あるいはお酒の業界というのは、独特の免許制度があってしかるべきではないかなというふうに考えられます。
 2番目に、その話の中身に入りたいと思いますが、やはり中小企業が圧倒的に多いということ、そしてまた非常に話が広がってしまって大変恐縮でありますが、単一民族で農耕社会ということがベースにありますので、我が国独特の商業慣行というのがあるわけであります。それはどういうことかといいますと、与信という、信用を与える、付与するということ、そういったことから売掛制度、買掛制度、これは業者間だけではなくて、一般家庭人に対しても掛け売りということがしばしば行われてきていると。そして、手形制度等があるのでございます。そういったようなベースにこの製造業と卸売業と小売業というものが、お互いに機能を補完し合う、そういったいってみれば特約店制度を含めました業界というものが形成されておる部分、こういった部分については、やはりよいものは残すべきではないかなというふうに考えております。
 3番目に、大変口幅ったいことを申し上げますけれども、経済法について我が国は独占禁止法及びそれにまさるいろいろなガイドラインが出ておりますけれども、我々販売の実務に携わっていますと、非常に不本意な課題です。現にこういった酒の免許等に関しまして、消費者の立場に立てばどこでも買える方が便利だということは、これは十分わかるわけでありますけれども、当然ある種の中小企業分野法みたいなものについて、もう一遍再考してしかるべきではないかと。それからまた、価格維持等不公正取引がこれだけ行われているときに、そしてこれは氷山の一角でありまして、実際にはもっともっと現場においては不公正取引が多いというふうに考えております。こういったようなことから考えますと、独禁法の中できょう備付けの資料をいただきましたら、137ページ、法律の中に出ております独禁法の再販価格維持契約とありますけれども、こういったようなことも当然もう一遍考えてみてしかるべきかなというふうに考えられます。
 それからまた、近代化、その他いろいろなことを考えまして、これは新しい提言になりますけれども、致酔性の商品が世の中に発売される場合に、発売以前に事前に登録する、要するに商品登録をきちっとさせるというようなことも、これから当然のこととして必要だと思うんです。もろもろのお酒、これは加工食品全般に言えることでありますから、原材料をはじめいろいろな意味で生活者が知りたがる、情報開示というふうなことを言います。例えば原材料の原産国を表示しろみたいな話は、その一つでありますけれども、そういったようなこともいたずらにこういった細かい字で書くのではなくて、事前に登録されて、それは見たい人がホームページで拾って見るとか、そういうようなことを考えていかなければならないのではないかと思います。
 そういったようなことを全部踏まえた上で、新しい販売業免許の付与基準というものを考えていくべきではないかなというふうに思います。
 以上です。

座長
 ありがとうございました。
 引き続きまして、宇賀先生、お願いいたします。

宇賀氏
 先ほど説明の中でも酒類業の特性、幾つか挙げられていたんですけれども、その中の一つとして、致酔性の問題が挙げられていました。その観点から未成年者への影響ということは当然考慮する必要があるわけですけれども、この問題に限らず私はどうも日本では何か物を販売するときに、未成年者とそれから成人との区別というのは必ずしも截然としていないなということを、特にアメリカでの生活の経験からしていつも感じていまして、これはコンビニの雑誌にしてもそうですし、またビデオ店にしてもそうですね。こういう致酔性の物を売るというときに、やはり未成年者への影響というのは非常に真剣に考えていく必要があると思います。そういう観点からの社会的な規制というのは、やはり必要であると思いますし、またその実効性のために今以上にどういった方策があるのかということについて、これは酒税法の体系の中で考えるのがいいのか、ほかの法体系の中で考えるほうがいいのかという問題はありますが、ここは幅広く検討するということですから、その問題についてやはり真剣に検討していく必要があるのかなと考えております。

座長
 ありがとうございました。
 岡本先生、お願いします。

岡本氏
 今日は、説明していただいて、それをもとにいろいろと考えるということで、余り準備をしてこなかったんですけれども、自分の専門というのはアメリカの歴史で禁酒運動とか、そういったものを研究しているもので、それが現在のというんですか、これからのことを含めてですけれども、どこまでお役に立つかちょっとわからないんですが、自分の研究してきたことと、今伺っていて一つ二つちょっと感じたことを述べさせていただきたいと思いますけれども、先ほどの説明の中に平成15年ぐらいですか、ほとんどそういう件数という意味では自由になってしまうと。規制緩和が一応あるところまで行くと。そうすると、小売業でしょうかね、特に、非常に件数が増えてくる、殺到してくるであろうという御説明がありました。実はアメリカにも昔そういう時期がありまして、過当競争が非常に激しくなって、そういうときに必ず起こってくるのはやはり売らないと生きていけないということで、それこそ子供でだろうと誰であろうと買ってくれる人はすべて売ると。そして、またお酒以外にさまざまな悪徳ですね、例えば売春であるとか、そういったものと結びつくような、極端に言えばですね、そういう何かプラスアルファするようなものをつけてまで、販売しなければいけないということがありました。これはイギリスでも昔起こったことなんですけれども、ということでこの過当競争といいましょうか、数が非常に増えるだろうということは予想されるというのが、一番今日印象に残った言葉なんですけれども、やはり何らかの過当競争を、方向は逆になりますけれども、何とかそこまで行かないような形で数の上で規制しなければいけないだろうと。要するにバランスですよね。どこまで広げて、そして増やすことが許されて、しかしそれがある一定のところまで行って、飽和状態を越えてしまうようなことになれば、それこそ無秩序に販売が広がっていくと。多くの方が心配しているようなことが起こるのではないのかなということを、一番強く今日感じました。
 それから、やはり自分の研究からいろいろと考えてみますと、幾ら規制してもやはり抜け道は幾らでもこれは、たばこもそうなんですけれども、それからあと麻薬もそうですけれども、いたちごっこみたいなところがありますから、幾ら規制しても基本的には100%無理だろうという、自分がそういう印象を持っておりますので、だから規制が余りにも過ぎたらいけないということも考えておりますので、やはりそれもどこまで規制し、どこまで緩めるかというバランスですね。どなたも皆さんバランスのどこでとるかということを、多分一番苦労されて、今までもされてきたし、これからもされるんでしょうけれども、そういう印象を持っております。
 簡単ですけれども。

座長
 ありがとうございました。
 須磨先生、お願いします。

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