大柳課長補佐
 続いて、免許制度の部分について大柳から説明させていただきます。座って説明させていただきます。
 3ページ目をご覧いただきたいのですが、3ページは酒類別の課税数量の推移をグラフに表したものです。ビールについては、右の目盛り、それ以外については左の目盛りになっています。最近の酒類全体のトレンドとしましては、酒類全体の課税数量は平成11年度に最高を記録しておりますが、それから以後は、微減になっています。ビールは、最近は国産の発泡酒ですとか、缶入りチューハイのようなものの増加に合わせまして減少してきています。それから、雑酒のようなものは増加、清酒は、消費者の低アルコールや低価格志向によって、需要がだんだん下がってきています。
 4ページは、租税収入に占める酒税収入の割合を表したものです。酒の国税全体に占める割合は、昭和25年には18.5%だったものが、最近では3.4%まで減少しています。また、揮発油やたばこといった物に着目した税収の割合についても平成12年度には20%程度にまで減少してきております。他方、間接税全体の割合は、近年増加しておりまして、ここには書いてございませんけれども、平成12年度におきましては38.7%になっています。
 引き続きまして、5ページのほうへ移らせていただきます。
 これは、酒類業界の変化について、10年前と現在とを比較して、模式図的にあらわしたものです。製造業者の方から説明させていただきますと、数的には3000場と変わっていないわけですが、平成6年に地ビールを解禁して地ビール業者がかなりの数入ってきているわけですので、結果的にはこの参入者と同じぐらいの数の退出者がいるということになります。卸売業者についてですが、ここにいう業者数は卸売業免許を保有している者の実数ではなく、卸売業免許を保有している者のうち、実際に卸売業を行っていると国税庁の実態調査の結果判明したものの数を表しています。平成2年においては1,812者が卸売業を営んでいたものが、現在においては、平成11年の数値でございますが、1,278者にまで減少してきており、業界の再編がかなりの勢いで進んでいるということを示しております。小売業者につきましては、10年前をご覧頂きたいのですが、まず販売場数は13万場ございました。平成12年におきましてはほぼ1万場純増いたしております。構成割合については、10年前は一般酒販店がそのうち9割近くを占めており、コンビニエンスストアやスーパーのような業態は1割程度にとどまっていたものが、平成12年におきましては、一般酒販店については7割弱まで減少、逆にコンビニエンスストアやスーパーが増加してきております。背景事情としましては、業界再編の進展ということもあると思いますが、モータリゼーションの進展や、元々の一般小売店の方々の高齢化の進展等により、業界からの退出が進んでいるということもあろうかと思います。
 料飲店や家庭における嗜好の変化については、10年前はビールが消費のほぼ7割方を占めていたものが、現在においてはビールはだいたい5割強にとどまり、発泡酒や焼酎、また、「その他」に分類されていますが、発泡型の低アルコール商品なども増加してきているという状況にあります。
 6ページの資料は、酒税の転嫁と保全のスキームを表したもので、酒税がどのように製造から消費者まで転嫁されていくかのフローを示しています。まず、酒税の最終負担者は消費者ですが、酒税の納税義務者は製造者であり、製造者が庫出をしたときに納税義務が発生します。製造業者は、製造原価にマージン、酒税相当額を加えた金額で卸売業者に売却し、卸売業者は更にマージンを加えた金額で小売に売って、小売はさらにそれにマージンを乗せたものを消費者に売るという仕組みです。また、別途、消費税も課税されています。なお、消費者の購入価格に占める酒税の割合については、この例えば350ミリリットル缶のビールでは、酒税は77.7円課税されていますので、消費者の購入価格を230円としますと、うち33.8%が酒税ということになります。このように、高率の酒税の確実な賦課徴収を確保するためには、酒税負担が消費者へ確実かつ円滑に転嫁され、酒類製造業者において、酒税相当額を含む酒類販売代金が確実に回収されることが必要となります。このため、製造業者と消費者との間の流通段階を占める酒類販売業者についても免許制を採用することとしているのです。
 続きまして、7ページに移らせていただきますが、これは酒類関係の行政における法体系を模式的に表したものです。酒類関係行政には、酒税の保全、酒類業の健全な発達という2大目標がありますが、それらを達成するためにどういった法律が関係しているのかということを示しています。
 まず、酒税法というのが「酒税の保全」のところの中心に書いてありますが、酒税法におきましては、先程申し上げましたように、免許制度を採用して酒税が消費者に対してスムーズに転嫁が行われることを担保しております。酒税法は、その他、課税調査ですとか、保全担保のような制度も併せて規定しながら、酒税の保全の確保に万全を期しております。例えば、製造業者が酒税の滞納ですとか、保全担保の不履行といった事実を発生させますと、製造免許の取消事由に該当することとなり、また、製造・販売業者双方とも、脱税や無免許製造による国税犯則取締法上の通告処分等を受けますと、免許の取消事由に該当することとなります。
 次に、免許部分のところが右の方向に点線ではみ出していますが、これは、酒税法が酒税の保全に関係していることは法律上間違いないところなのですが、免許制度が、業界行政に対してどのような役割を果たしているかという点について、法律上は必ずしも明確ではないものの、ある程度の影響力と関連性を有していることは事実であることから、そのことを示そうとしたものです。まず、酒税の保全及び酒類業組合法に基づく酒税保全勧告や命令に違反いたしますと、免許取消事由に該当することとなり、さらに、表示義務についての命令違反の場合も同様に免許取消事由に該当することになります。また、清酒製造業等安定法という法律、これは基金を設けて組合の事業の拡大・充実を図っているわけですが、同法で求められる転廃給付金事業に係る納付金の不納付の場合にも免許取消事由に該当してきます。一番右の矢印についてですが、これは昨年(2000年)12月に導入されたものですが、販売業者が未成年者に酒を販売供与したとして未成年者飲酒禁止法上罰金刑に処せられた場合には、酒税法上、販売業免許取消事由に該当することとされています。以上、免許が酒税の保全のためにあるというのは間違いないところですが、それに加えて、他の行政目的にも、免許が一定の限度で関係しているということを説明致しました。
 次の8ページは、販売業免許に関する現行の要件の内容を示したものです。免許要件は、酒税法10条に拒否要件の形で規定されておりますが、具体的な解釈については解釈通達の方で規定しております。販売業免許については、酒税法10条の1号から11号までが適用されますが、まず1号から8号が、いわゆる人的要件と言われるものでして、申請者のうち滞納処分を受けたり、刑法違反や税法違反で刑に処されたりした後一定年限を経ていない者には、免許を与えないということにしております。9号には、申請場所が取締上不適当な場所でないことという要件があります。次の10号には、申請者の経営の基礎が薄弱でないこと、という要件が規定されています。これは、免許があくまでも酒税の保全にあるということから、製造者に対して代金回収の危険性が及びかねない程度に経営の基礎が薄弱であると認められる申請者には、販売業免許は与えないということことでございます。最後の11号は、需給調整要件であり、免許付与に際して需給の均衡を維持する必要があるかどうかを検討することとしています。
 以上が法律上の要件の概要ですが、通達の方で要件を具体化しております。人的要件、経営基礎要件、場所的要件についてはそれほど解釈の余地がないところなのですが、11号の需給調整要件については、かなりきめ細かな決め方をしています。販売業免許のうち最も一般的な免許形態として、一般酒類小売業免許というものがありますが、それについては、現在は「人口基準」というものを要求しております。これは、ある年度において免許を付与できる数というものを年に1回決めて、その枠内でのみ免許を付与するというものです。もちろん1号から10号までの要件はすべて満たす必要があります。
 免許枠の計算の仕方については、この表の右の中段をご覧いただきたいのですが、まずある地域の人口を「基準人口」というもので割って、それから既に存在している免許場数を引くというような形で算出しています。詳しくは参考資料のほうの1―3、3ページの方で説明しています。人口基準については、平成10年から段階的に緩和されてきているわけですが、そもそも平成10年の改正前は、地域はA、B、Cと分けられ、さらに算式の分母である基準人口も3段階に分けて固定されていました。平成10年からは、算式の分母である「基準人口」を徐々に小さくすることによって、免許が出やすいようにするという仕組みを採用しております。現在では、例えば大都市部のA地域については、改正前の1,500からだんだん分母を小さくしてきておりまして、13年度においては、人口1,200人当たり1場ということで免許を付与しているところです。全国の全ての地域についてこうした形式的な算出基準に基づきまして免許枠を算出しています。なお、全国の地域、全部で1,490地域ありますが、そのうち免許枠が発生している地域はほぼ半数の761地域でして、全く免許枠が発生していないところも半分あるという状況にあります。
 なお、従来は需給調整要件のうちに「距離基準」というものがありまして、都市部では、近隣の酒販店からの距離が100メートル以上離れていないといけないという規定がありましたけれども、こちらの基準は平成13年1月に廃止されております。
 今のところまでが酒税法10条の免許要件ですが、実際に免許を付与する際には、酒税の保全上需給の均衡を維持する必要があるときには条件を付することができるという酒税法の11条に基づきまして、販売する酒の範囲ですとか、販売方法について条件付すことにしております。最後に、この8ページは、あくまで小売業免許の要件でして、卸については別途、通達上要件が定められています。
 9ページは、酒税法10条11号免許要件と11条の条件を用いて創出されている小売業免許の種類を簡単に説明したものです。
 まず、原則形態の免許は、一番上の一般酒類小売業免許というものでして、「常設」の販売場において、「恒常的」に発生する販売場周辺住民の「全酒類」の需要に対応するという特徴を有しています。これら「販売場の設置地域」、「販売場の設置形態」、「取扱酒類の範囲」、「消費者需要の発生度合」の4つのファクターが、具体的な出店場面により変化するわけですが、我々としては、それぞれに最も適した免許を付与するということにしております。まず「販売場の設置地域」ですが、「開放空間」と「閉鎖空間」に分けております。「開放空間」の中でも、その店舗が、一般店のように、通常出店地域周辺に居住する人々を顧客とする場合から、大型スーパーのように周辺の広範囲に居住する人々を対象とすることもありますし、それから通信販売のように全国レベルで物がやりとりされるというようなところもあります。他方、下の「閉鎖空間」というところについてですが、これは一定の限られた空間の中に販売場が置かれて、その中でだけ需要が発生するというものでして、この中でも、販売場が常に置かれているもの、それから臨時に設置されるものがあり、更に「消費者需要の発生度合」についても常に生じているもの、一時的に発生するもの、といろいろあります。我々としましては、こうした場合分けをして、それぞれの類型別に酒税法10条11号に基づいて要件を要求し、かつ免許取得後にその類型から逸脱されることがないよう、参入後規制としての酒税法11条の条件を付して免許を付与しているということです。なお、「一般小売業免許」と「大型店免許」以外を、我々は通常、「特殊免許」というふうに呼んでおります。
 あとは、簡単に見ていただければよいと思います。まず、販売業免許の酒類業全体の退出入が10ページにございまして、9年の規制緩和前と12年度末を比較しています。小売について見ますと、新規参入が全体では1万3,900ありますが、出ていく人も9,600いますので、トータルでは4,300程度純増になっているということになります。さらに、新規参入ではありませんが、「法人成り」などをして、組織変更を行う場合もあり、その件数は7,600件であるということも記してあります。
 11ページは、製造・卸・小売の数的トレンドを示したものですが、これは昭和40年から現在までの5年おきに計数を取ったものです。これによると、製造者数は微減、卸の数は昭和50年に若干増えておりますが、これは小売と卸の垣根をこのときに取り外したということで、それによって増えたものです。現在についてはまた卸、小売の区分を存続させておりますのでこうしたことはありませんが、小売免許についても昭和40年には14万件ぐらいだったものが、現在ではトータルで19万に近い状況になってきております。
 以上が資料の説明ですが、最後に、現在までに指摘されている需給調整要件をめぐる問題点を簡単に整理しておきたいと思います。
 そもそも現在進行している規制緩和は、平成9年の中央酒類審議会における一般免許の需給調整要件を撤廃すべしとする報告を踏まえて決定された、平成10年3月の緩和計画に基づいているもので、現在この計画に則り、需給調整要件のうち距離基準については13年1月に既に廃止、人口基準についても段階的な緩和を過去4度実施し、平成15年9月には廃止することとなっています。
 問題点としましては、まず、参入規制は撤廃するにしても、数次の緩和の際の参入圧力にはかなりのものがあり、このことからすると緩和が完了する時点においては爆発的な酒の小売店が増加するということが見込まれるため、そういった爆発的に、瞬間的に酒販店が増加するということが、マーケットに対する秩序ある参入を阻害するのではないか、という指摘があります。要するに激変緩和的な措置が必要なのではないかという指摘です。
 また、平成10年3月に閣議決定がなされたときには、段階的な緩和を行うことによって、市場の混乱を回避できるという仮定に基づいて緩和が行われてきたと考えられるけれども、閣議決定どおり参入規制を撤廃するにしても、事後的に市場安定を図るためのツールが整備されていないではないか、という指摘もなされています。
 次に、需給調整要件については廃止するとしても、免許制度については堅持するのであれば、事後的コントロールの確保という視点から、ある程度のハードルを乗り越えた者についてのみ免許を与えるべきではないかという指摘があります。事後的にミニマムな行政的コントロールを及ぼせるような者に免許を付与すべきではないかということです。同趣旨なものとして、免許制は存置するとしても、一定の極めて形式的な人的要件をクリアすれば免許取得ができるということになると、免許の取得のためのインセンティブがなくなって、無免許販売みたいなものが横行するのではないかという指摘があります。酒の販売というものに対する国家の最低限の管理権限のようなものが喪失されてしまうのではないか、というような問題意識かと思います。
 さらに、最近の情勢を、酒類販売を巡る社会的問題、例えば、飲酒運転致死傷が重科されることになったこと、酒気帯び基準の引き下げの検討が開始されたこと、未成年者の飲酒の問題が増加していること、販売場の適正配置が求められてきていること(これは駅のホームに酒の販売場を置いていいのかというような問題ですが)、がクローズアップされ、酒類の小売販売についての社会的規制の要請が高まってきていると捉え、こうした要請に対して的確に応えていくためには、酒類販売規制として免許制度を活用すべきではないか、とする指摘があります。これと関連しますけれども、一般の国民の大多数は、免許制度の意義について社会秩序の維持だというふうに考えているとし、小売免許について規制緩和が完了すると酒の販売が野放しになるのではないかという認識を有している者も多いことから、このままの状況で規制緩和を実行するならば、かなりの批判が発生するのではないか、という指摘もあるところです。そうした声によって規制緩和の実施自体が困難になる可能性も出てくるのではないか、というような意見もございます。
 同時に、リサイクルといった新たな社会的要請も発生してきているところであり、そういった新たな要請に対する業者のコンプライアンスを向上させる方法として、免許制度によるインセンティブの付与のような仕組みは考えられないかというような意見もあるところです。
 以上、最後に現在指摘されている問題点を示させて頂きました。
 私の方からは、以上で終わらせて頂きます。

座長
 田中先生が3時ごろお出かけになりますので、もし御意見がおありでしたら、お出かけの前に伺った方がよろしいのですが。

田中氏
 まだ少し大丈夫です。

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