(問53)

通算親法人となるP社(3月決算)と、P社による完全支配関係を有する通算子法人となるS社は、通算制度の承認を受けてX6年4月1日から通算制度を開始しました。
 時価評価除外法人に該当するP社とS社の間には、その通算制度の開始日(X6年4月1日)の5年前の日(X1年3月31日)から継続して支配関係があります。
 P社には、通算制度を開始する前の事業年度において生じた欠損金額がありますが、この欠損金額は、通算制度を開始した日以後に開始する事業年度において、P社の損金の額に算入できますか。

【回答】

P社の欠損金額は、通算制度を開始した日以後に開始する事業年度において、特定欠損金額として、P社の損金の額に算入することとなります。

【解説】

通算法人が時価評価除外法人(通算制度の開始・加入時に時価評価の対象とならない法人をいいます。以下同じです。)に該当しない場合(その通算法人が通算子法人である場合には、通算制度の承認の効力が生じた日から同日の属する通算親法人の事業年度終了の日までの間に通算制度の承認の効力を失ったときを除きます。)には、その通算法人(その通算法人であった内国法人を含みます。)の通算制度の承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度については、同日前に開始した各事業年度において生じた欠損金額はないものとされます(法576)。
 また、通算法人で時価評価除外法人に該当する法人が、1通算制度の承認の効力が生じた日の5年前の日などの一定の日からその承認の効力が生じた日まで継続して通算親法人(その通算法人が通算親法人である場合には、他の通算法人のいずれか)との間に支配関係がある場合に該当しない場合で、かつ、2その承認の効力が生じた後に共同で事業を行う一定の場合に該当しない場合において、3支配関係発生日以後に新たな事業を開始した場合には、過年度の欠損金額のうち所定の金額が切り捨てられることとされています(法578)。
 したがって、通算親法人で時価評価除外法人に該当する法人が、通算制度の承認の効力が生じた日の5年前の日から通算子法人との間に支配関係がある場合には、通算制度の開始に伴い通算制度を開始する前の事業年度において生じた欠損金額が切り捨てられることはありません。
 この場合、通算制度を開始する前の事業年度において生じた欠損金額は、通算制度の承認の効力が生じた日以後の事業年度においては、特定欠損金額として、一定の方法により算出した損金算入額を通算親法人の損金の額に算入することとなります(法64の712)。
 この特定欠損金額とは、次の金額をいいます(法64の72)。

  1. (1) 通算法人(時価評価除外法人に限ります。)の最初通算事業年度(通算制度の承認の効力が生じた日以後最初に終了する事業年度をいいます。)開始の日前10年以内に開始した各事業年度において生じた欠損金額
  2. (2) 通算法人を合併法人とする適格合併(被合併法人がその通算法人との間に通算完全支配関係がない法人であるものに限ります。)が行われたこと又は通算法人との間に完全支配関係がある他の内国法人でその通算法人が発行済株式若しくは出資の全部若しくは一部を有するもの(その通算法人との間に通算完全支配関係がないものに限ります。)の残余財産が確定したことに基因して法人税法第57条第2項の規定によりこれらの通算法人の欠損金額とみなされた金額
  3. (3) 通算法人に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち法人税法第64条の6の規定により損益通算の対象外とされたもの

本件では、P社は、通算親法人で時価評価除外法人に該当し、通算制度を開始しようとする日(X6年4月1日)の5年前の日(X1年3月31日)から継続して通算子法人であるS社との間に支配関係があることから、P社の通算制度を開始する前の事業年度において生じた欠損金額は切り捨てられることはありません。
 また、P社の通算制度を開始する前の事業年度において生じた欠損金額は、上記(1)の欠損金額に該当し、通算制度の承認の効力が生じた日以後の事業年度において、特定欠損金額としてP社の損金の額に算入することができます。

(参考)

時価評価除外法人、損益通算の対象とはならない欠損金額等、通算制度の開始・加入の際の過年度の欠損金額の切捨て及び通算法人の過年度の欠損金額の損金算入額の計算方法については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問38 通算制度の開始に伴う時価評価を要しない法人
  2. 問39 通算制度への加入に伴う時価評価を要しない法人
  3. 問50 損益通算の対象とはならない欠損金額等
  4. 問52 通算制度の開始・加入の際の過年度の欠損金額の切捨て
  5. 問54 通算制度の過年度の欠損金額の当初申告における損金算入額の計算方法