P社、S1社及びS2社(同一の通算グループ内の通算法人で、いずれも3月決算です。)は、前期において生じた次の欠損金額を有しており、また、当期の期限内申告における欠損金額を控除する前の所得の金額(法57。以下「所得金額」といいます。)はそれぞれ次のとおりです。
前期 | 当期 | |||
---|---|---|---|---|
特定欠損金額 | 特定欠損金額 以外の欠損金額 |
欠損金額 の合計 |
所得金額 | |
P社 | 0 | 150 | 150 | 220 |
S1社 | 50 | 70 | 120 | 80 |
S2社 | 0 | 300 | 300 | 180 |
合計 | 50 | 520 | 570 | 480 |
この場合の当期におけるP社、S1社及びS2社の欠損金額の損金算入額の計算はそれぞれどのように行うのでしょうか。
なお、P社、S1社及びS2社は、中小法人等などの法人には該当しません。
本件における欠損金額の損金算入額の計算は、まず、各通算法人の特定欠損金額の損金算入額の計算を行い、次に、特定欠損金額以外の欠損金額の通算グループ全体の合計額を各通算法人に配賦して各通算法人の非特定欠損金額を計算し、非特定欠損金額の損金算入額の計算を行います。
各通算法人の欠損金額の損金算入額は、特定欠損金額の損金算入額と非特定欠損金額の損金算入額の合計額となります。
その結果、P社、S1社及びS2社の損金算入額は、それぞれ104、50及び86となります。
なお、上記算式におけるの金額がの金額に占める割合が1を超える場合には、その割合を1として計算し、の金額が零の場合には、その割合は零として計算します。
すなわち、通算グループ全体の損金算入限度額の合計額を上限とした各通算法人の特定欠損金額(欠損控除前所得金額を限度)の合計額を、各通算法人のそれぞれの特定欠損金額(欠損控除前所得金額を限度)の比で配賦した金額が、この特定損金算入限度額となります。
P社 | S1社 | S2社 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
損金算入限度額 (所得×50%) |
110 | 40 | 90 | 240 |
特定欠損金額 | ― | 50 | ― | 50 |
特定損金算入限度額 (上記(1)) |
― | 50 =50×1 (240/50>1) |
― | 50 |
特定欠損金額 の損金算入額 |
― | 50 | ― | 50 |
P社 | S1社 | S2社 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
繰越欠損金額 【内 特定欠損金額】 |
150【0】 | 120【50】 | 300【0】 | 570【50】 |
損金算入限度額 (所得×50%) |
110 | 40 | 90 | 240 |
損金算入される 特定欠損金額 |
― | 50 上記2(2) |
― | 50 |
損金算入される 特定欠損金額控除後の 損金算入限度額 |
110 上記(2) |
0 上記(2) |
90 上記(2) |
200 上記(2) |
特定欠損金額以外の 欠損金額 |
150 | 70 | 300 | 520 上記(2) |
非特定欠損金配賦額 (上記(2)) |
520×110/200=286 | 520×0/200=0 | 520×90/200=234 | 520 |
被配賦欠損金額 (上記(1)) |
286>150 286−150 =136 |
― | ― | 136 |
配賦欠損金額 (上記(1)) |
― | 0<70 70−0=70 |
234<300 300−234 =66 |
136 |
非特定欠損金額 | 150+136 =286 |
70−70 =0 |
300−66 =234 |
520 |
なお、この計算において、上記算式におけるの金額がの金額のうちに占める割合(以下「非特定損金算入割合」といいます。)が1を超える場合には、その割合を1として計算し、の金額が零の場合には、その割合は零として計算します。
すなわち、通算グループ全体の損金算入限度額の合計額を、各通算法人のそれぞれの非特定欠損金額の比で配賦した金額が非特定損金算入限度額となります。
P社 | S1社 | S2社 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
非特定欠損金額 (上記(3)) |
286 | 0 | 234 | 520 |
非特定損金算入割合 (上記(4)の/) |
(240−50)/520=190/520 | |||
非特定損金算入限度額 (上記(4)の×/) |
104 =286×190/520 |
0 | 86 =234×190/520 |
190 |
非特定欠損金額 の損金算入額 |
104 | 0 | 86 | 190 |
P社 | S1社 | S2社 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
非特定欠損金額の 損金算入額(上記3(5))(X) |
104 | 0 | 86 | 190 |
特定欠損金額の 損金算入額(上記2(2))(Y) |
― | 50 | ― | 50 |
欠損金額の損金算入額 (X+Y) |
104 | 50 | 86 | 240 |
P社 | S1社 | S2社 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
繰越欠損金額 【内 特定欠損金額】 |
150【0】 | 120【50】 | 300【0】 | 570【50】 |
特定欠損金額の損金算入額 (上記(1)イ)() |
― | 50 | ― | 50 |
特定欠損金額以外の欠損金× 非特定損金算入割合 (上記(1)ロ)() |
54 =150×190/520 |
26 =70×190/520 |
110 =300×190/520 |
190 |
損金算入欠損金額 (上記(1))(+) |
54 | 76 | 110 | 240 |
翌期繰越欠損金額 【内 特定欠損金額】 |
96【0】 =150−54 |
44【0】 =120−76 |
190【0】 =300−110 |
330【0】 |
(参考)
特定欠損金額及び修正申告等があった場合の過年度の欠損金額の損金算入額の計算方法については、次のQ&Aを参照してください。