(機能及び事実の分析)

2-1 外国法人が認識した恒久的施設帰属所得の適否についての調査を行う場合には、次の点に留意する。

  • (1) 外国法人が作成した法施行規則第62条の2(恒久的施設帰属外部取引に関する書類)に定める書類及び同規則第62条の3(内部取引に関する書類)に定める書類は、当該外国法人が恒久的施設帰属所得を認識するための基礎とした書類であることから、当該書類の内容を十分に確認する。
  • (2) 外国法人の恒久的施設及びその本店等(法第138条第1項第1号(国内源泉所得)に規定する本店等をいう。以下第6章(外国法人の恒久的施設帰属所得に係る所得の金額に関する事前確認)までにおいて同じ。)が果たす機能並びに当該恒久的施設及びその本店等に関する事実の分析を行い、(1)に定める書類に基づき、次に掲げる事項を検証する。
    • イ 外国法人の事業において生ずるリスクについて恒久的施設がリスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能を果たす場合には、当該リスクは当該恒久的施設に帰せられるリスクとされているか
    • ロ 外国法人の有する資産について恒久的施設が資産の帰属に係る人的機能を果たす場合には、当該資産は当該恒久的施設に帰せられる資産とされているか
    • ハ イ及びロに定める人的機能以外の恒久的施設が果たす機能及び恒久的施設において使用する資産は適切に特定されているか
    • ニ 恒久的施設に帰せられる外部取引(基本通達20-2-1(恒久的施設帰属所得の認識に当たり勘案されるその他の状況)に定める外部取引をいう。以下第6章までにおいて同じ。)はイからハまでの結果に基づき適切に特定されているか
    • ホ 恒久的施設とその本店等との間の内部取引(同号に規定する内部取引をいう。以下第6章までにおいて同じ。)はイからハまでの結果に基づき適切に特定されているか

(恒久的施設に帰せられるリスク)

2-2 2-1(2)イに掲げる事項について検証する場合には、次の点に留意する。

  • (1) 外国法人の事業において生ずるリスクには、例えば、次に掲げるリスクがある。
    • イ 棚卸資産を保有することによる利益又は損失の増加又は減少の生ずるおそれ
    • ロ 取引の相手方の契約不履行による損失の生ずるおそれ(以下2-4において「信用リスク」という。)
    • ハ 為替相場の変動による利益又は損失の増加又は減少の生ずるおそれ
    • ニ 市場金利の変動による利益又は損失の増加又は減少の生ずるおそれ
    • ホ 保有する有価証券等(有価証券その他の資産及び取引をいう。)の価格の変動による利益又は損失の増加又は減少の生ずるおそれ(以下2-4において「市場リスク」という。)
    • ヘ 販売した製品の欠陥による損失の生ずるおそれ
    • ト 無形資産の開発、取得又は管理による利益又は損失の増加又は減少の生ずるおそれ
    • チ 事務処理の誤りその他日常的な業務の遂行上損失の生ずるおそれ
  • (2) リスクの引受けとは外国法人の事業において生ずるリスクを最初に引き受けることをいい、リスクの管理とはその引き受けられたリスクを管理することをいうのであるから、リスクの引受けに関する人的機能を果たす恒久的施設又は本店等が引き続きリスクの管理に関する人的機能を果たすとは限らない。
  • (3) 恒久的施設がリスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能を果たすかどうかの判定に当たっては、リスクの引受け又はリスクの管理に関する最終的な意思決定のみならず、当該意思決定に至るまでの検討、評価、立案その他の最終的な意思決定と密接に関連する活動の有無及びその内容についても十分に検討する。
  • (4) 恒久的施設がリスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能を果たすかどうかは、(2)及び(3)のほか、恒久的施設を通じて行う事業に従事する者の過失により損失が生ずるかどうか、当該者の行う活動が利益又は損失の発生に関して重要な役割を果たすかどうか、当該活動が利益又は損失の発生に直接関連するかどうか等を勘案して判定する。

(恒久的施設に帰せられる無形資産)

2-3 2-1(2)ロに掲げる事項について検証する場合には、例えば、次に掲げる無形資産については、それぞれ次の人的機能が恒久的施設において果たされたかどうか等を勘案することに留意する。

  • (1) 外国法人が自ら行った研究開発の成果に係る工業所有権等(法施行令第183条第3項第1号イ(租税条約に異なる定めがある場合の国内源泉所得)に掲げるもの((3)に掲げるものを除く。)をいう。以下2-3において同じ。)
    • イ 当該研究開発に係る具体的な開発方針の策定及び実施に関する積極的な意思決定
    • ロ 当該研究開発に係る成果の評価及び当該研究開発の継続に関する積極的な意思決定
    • ハ その他当該工業所有権等に係るリスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能
  • (2) 外国法人が他の者から取得した工業所有権等
    • イ 当該工業所有権等の取得により将来獲得することが見込まれる利益の分析、評価及び当該工業所有権等の取得に関する積極的な意思決定
    • ロ 当該工業所有権等に係る取得後の開発活動の検討及び実施に関する積極的な意思決定
    • ハ その他当該工業所有権等に係るリスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能
  • (3) 外国法人が自ら創作した商標及び商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの(これらの権利を含む。以下2-3において「商標等」という。)
    • イ 当該商標等に係る業務上の信用の維持向上を目的とする事業計画の策定及び実施に関する積極的な意思決定
    • ロ 当該事業計画の継続の検討及び実施に関する積極的な意思決定
    • ハ その他当該商標等に係るリスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能

(恒久的施設に帰せられる金融資産)

2-4 2-1(2)ロに掲げる事項について検証する場合には、例えば、次に掲げる金融資産(措置法施行令第39条の12の3第3項第2号に規定する金融資産をいう。)については、それぞれ次の人的機能が恒久的施設において果たされたかどうか等を勘案することに留意する。

  • (1) 外国法人が業として金銭の貸付けを行うことにより取得した金銭債権
    • イ 当該金銭債権に係る貸付条件に関する顧客との交渉、顧客の信用状態に関する調査、貸付条件の決定及び貸付けの実施に関する積極的な意思決定
    • ロ 当該金銭債権の貸付け後の管理及び回収に関する積極的な意思決定
    • ハ その他当該金銭債権に係る信用リスクの引受け又は信用リスクの管理に関する人的機能
  • (2) 外国法人が業として短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券
    • イ 売買を行う有価証券の種類、銘柄、数及び価格並びにその売買の方法及び時期についての検討及び判断に関する積極的な意思決定
    • ロ その他当該有価証券に係る市場リスクの引受け又は市場リスクの管理に関する人的機能

(内部取引の特定)

2-5 2-1(2)ホに掲げる事項について検証する場合には、例えば、次に掲げる場合については、それぞれ次の内部取引が特定されているかどうか等を確認することに留意する。

  • (1) 外国法人の恒久的施設に帰せられていた資産がその本店等に帰せられることとなる場合又は外国法人の本店等に帰せられていた資産がその恒久的施設に帰せられることとなる場合 資産の譲渡又は取得に相当する内部取引
  • (2) 外国法人の恒久的施設に帰せられる資産をその本店等において使用する場合又は外国法人の本店等に帰せられる資産をその恒久的施設において使用する場合((1)に掲げる場合を除く。) 資産の貸付け又は借受けに相当する内部取引
  • (3) 外国法人の恒久的施設がその本店等に役務の提供を行う場合又は外国法人の本店等がその恒久的施設に役務の提供を行う場合 役務提供取引に相当する内部取引

(共通費用に含まれない内部取引に係る費用)

2-6 外国法人の恒久的施設とその本店等との間において内部取引を認識する場合には、当該内部取引に係る法第22条第3項第2号(各事業年度の所得の金額の計算)に規定する販売費、一般管理費その他の費用は、法第142条第3項第2号(恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算)に規定する「共通するこれらの費用」(以下2-6において「共通費用」という。)に含まれないのであるから、例えば、調査において外国法人が次に掲げる内部取引を認識していることを把握した場合には、それぞれ次に定める費用は共通費用に含まれないことに留意する。

  • (1) 恒久的施設による商品の購入に相当する内部取引 本店等における当該商品の管理費、運送費その他これらに類する費用
  • (2) 恒久的施設による無形資産の使用料の支払に相当する内部取引 本店等における当該無形資産に係る開発費、維持管理費、減価償却費その他これらに類する費用

(従来型の条約が適用される場合の取扱い)

2-7 外国法人が認識した恒久的施設帰属所得の適否についての調査に当たり、従来型の条約(法第139条第2項(租税条約に異なる定めがある場合の国内源泉所得)に規定する「内部取引から所得が生ずる旨の定めのあるもの」以外の条約をいう。)の適用がある場合には、法施行令第183条第3項第1号(租税条約に異なる定めがある場合の国内源泉所得)に掲げるものの使用料の支払、譲渡又は取得に相当する内部取引は認識されないのであるから、例えば、同号イに掲げる工業所有権の使用を伴う役務の提供が認められるときは、当該工業所有権の使用料の支払に相当する内部取引は認識されず、役務提供取引に相当する内部取引のみが認識されることに留意する。

(単純購入非課税の取扱い)

2-8 外国法人の恒久的施設がその本店等のために棚卸資産を購入する業務及びそれ以外の業務を行う場合において、その棚卸資産を購入する業務から生ずる所得が、その恒久的施設に帰せられるべき所得に含まれないとする定めのある租税条約(法第2条第12号の19ただし書に規定する条約をいう。)の適用があるときは、当該恒久的施設のその棚卸資産を購入する業務からは恒久的施設帰属所得は生じないことに留意する。


(別添)