同じ高さの台に立つ
調布市立第七中学校 3年 園田 莉乃
私には軽度知的障害を持つ兄がいる。知的障害者が様々な手当、制度を受けるために交付されている愛の手帳を兄は持っていて、博物館等の施設に無料で入場できたり、割引される。しかし、なぜ障害者割引は必要なのだろうか。
「不自由だから。」というような抽象的な理由ではないと思う。兄は高校3年生で就職のために一生懸命のようだが、障害者の就職、また働いて生活する上での壁が大きく二点ある。
一点は障害者雇用の人数が少ないことである。一つの企業に雇用人数一人ということも珍しくはない。実際兄も、就職先の雇用人数が少ないことで、就職できるのかと不安を感じていた。やりたい仕事に就けるのかは分からない。
二点目は給料が正社員と比べると安いことである。色々な要素があってこのお金をいただくので、給料を変えるということは難しいだろうが、生活費として使うのに精一杯で、余裕がないのだ。これら二点が障害者割引が必要である理由になると私は思う。つまり、障害者割引はお金の余裕が生じにくく、遊園地や映画館などの娯楽施設にお金の事情で行けない、と制限されてしまうことを防ぐのだ。
また、兄は毎月給付金をいただいているのだが、割引、給付金という個人の支援以外にも、企業に対する支援がある。まず、障害者雇用率制度があり、従業員40人以上雇用している企業は障害者を一人以上雇用するという規定がある。それに加えて、障害者雇用納付金制度が生じる。これは、障害者の雇用のためには、作業設備の改善、職場環境の整備など経済的負担を企業が負ってしまうので、障害者雇用率に達している企業に調整金、報奨金が支給されるという制度だ。この制度により、幅広い企業が障害者雇用に積極的に動けるようになる。こういった税は、障害を持っているということで制限されない、言い換えるならば、同じ豊かな生活、同じ高さの台に立つための階段である。
人生の充実とは何かとは人それぞれで、一概に言うことはできないが、金銭の事情で挫折してしまうことは多い。それは、誰にでもあるだろうが、特に障害を持つ人は金銭の問題が大きな壁となることが多いのではないかと思う。よって、給付金や雇用制度、割引は人生の充実に関わる大きな要素だ。やりたい仕事に就ける可能性、行きたい場所に行ける可能性を広げられるだろう。この社会に生きる全ての人が少しでも過ごしやすいと感じるためこそが税の役割の一つとしてある。差を感じさせない、差を付けさせない社会へと、税と共に歩んでいきたい。