将来、納税者の一人となるために

板橋区立志村第三中学校 3年 松原 秀翔

テレビCMで、「ふるさと納税」について目にすることがある。「納税」という名称だが、全国の応援したい地域への寄附を意味している。さらに、寄附の返礼品として地域の特産物などがもらえ、税の控除が受けられる制度であるとわかった。しかし、なぜ納税をして御礼をもらえるのか。日本国憲法第三十条では、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」と定められている。当然のことをしているのに、返礼品がもらえることに不思議な感覚がした。
 そこで、板橋区のホームページを開き、税金の使われ方を調べてみた。板橋区では、小中学校の改築や、私立保育所保育運営、土地の再開発事業の進捗などに使われていた。また、返礼品としては特産品ではなく、板橋美術館で開催された絵画の図録や、イタリア・ボローニャ国際絵本原画の図録などがあった。
 さらに、選べる使い道として、いたばし花火大会応援プロジェクトや、板橋区立美術館所蔵作品の修復、社会的養護経験者(ケアリーバー)への応援プロジェクトなどがあった。今回、板橋区の現状を調べることで税金の使われ方を知り、自分の意思をもって納税できることの良さを学ぶことができた。高価な返礼品から自治体を選ぶのではなく、自分の納めた税金が何に使われているかを知った上で寄附できることは、納税者としての気持ちを表せて良い方法ではないかと思った。
 また、税金の使われ方を考えるとき、私は自分の生まれた福島県のことも思い出す。平成23年3月11日に発生した東日本大震災。当時、私は福島県の三春町にいた。幼かったため記憶はほとんどないが、両親や祖父母からの話を聞くことで、震災の大変さを知ることができた。
震災から十三年の年月が過ぎ、被災地の復興は着実に進んでいる。しかし、時間の経過とともに、震災の記憶や被災地への関心が薄れ、震災の風化も懸念されている。震災直後の救助活動、捜索活動を行っていた自衛隊や警察、消防隊の派遣等は全て税金でまかなわれていた。さらに被災地への救援物資や非常食の運搬、仮設住宅の建設等にも税金が使われていた。「税」というと、消費税や所得税、住民税のように、自分の元から失くなってしまうマイナスイメージだけだったが、税金のありがたさを今、改めて感じている。
 納税は、日本人の義務である。税金は身近なところで、教育や医療、環境整備、防犯などに使われ、私たちの生活においてなくてはならないものである。しかし、自分の支払った税金がどう使われ、支払う意味を知ることも必要であると考える。ふるさと納税は義務ではないが、自分の納税金の使い方を知る一つの手段として、今後も様々な方法や形を変えながら活用されていくだろう。どのような形であれ、将来、自分の税金の使われ方を見極められる納税者の一人になりたいと思う。