払うではなく納める

大田区立矢口中学校 3年 白﨑 浩太

「税金を払うと、皆のためにそのお金が使われるということが学べました。」これは、税について説明してくださる講師の方がお越しになった時、僕が御礼の言葉として述べたものの一部だ。すると、講師の方は税は「払う」ではなく「納める」という表現が適切だと訂正してくださった。その時、僕は疑問に思った。なぜ、税金は払うではなく納めるという言葉を用いるのか。
 「払う」という言葉を辞書で引くと、決済のために金銭を渡すと記されている。それに対して、「納める」は渡す物品を受け取るべき相手に渡すとある。税金でいう渡す物品とはお金のことで、受け取るべき相手とは国のことだ。税金は決済ではなく、何かが手に入るわけではない。受け取るべき相手に渡すという義務的な意味合いもある、納めるが適切なのだろう。
 しかしながら、かなり多くの人が税金に「払う」を使っている気がする。不適切な言葉だというのになぜそれが定着しているのか。なぜなら、お金を出したら決済と同様に自分に直接的なリターンが返ってくるのが当然だと無意識に考える人が多いからではないだろうか。しかし、税金をたくさん納めたからと言って、それ相応の何かがもらえるわけではない。税金は、主に医療費や年金、より良い環境づくりなどの公共施設や公共サービスを提供するために使われるのだ。このように、私達は間接的に恩恵を受けているのだ。それにも関わらず、皆税金には否定的な意見を持っている。実際に、内閣府が実施した税金についてのアンケートの結果を見てみると、多くの人が不満を感じていることが分かった。それは、先ほどと同じ理由で高額を出しているのに、目に見える利益がかえってこないからだといえる。やはり、買い物のような感覚が少し出てきてしまっているのだ。しかし、物やサービスだけに価値があるわけではない。この支障なく快適に過ごせている日々こそが本当の幸せではないだろうか。それらが税金のおかげで成り立っているということを認識したうえで、皆がお互いに支え合い、この費用を共に納めていくべきだ。
 税金は自分たちのため、そしてより良い社会や未来を作るために使われているという自覚を持つことが大切だ。「払う」ではなく「納める」ということを定着させるだけで、世間の税金に対する印象も変わっていくはずだ。僕は、この考え方を大切にし、誇りと責任を持って税金を納めていきたい。