別紙


1 事前照会の趣旨

 内閣府では、平成22年3月から、「明日の安心と成長のための緊急経済対策」(平成21年12月8日)の一環として、地域社会雇用創造事業交付金を交付して造成する社会的企業支援基金を活用することにより、社会的企業の創業及び人材創出を支援し、地域社会における事業と雇用を加速的に創造することを目的とする地域社会雇用創造事業を実施しています。
当法人は、内閣府により地域社会雇用創造事業の実施主体として選定された法人であり、地域社会雇用創造事業交付金の交付を受け社会的企業支援基金を造成した上で、地域社会雇用創造事業の一環としての事業(以下「本件事業」といいます。)を実施要領(以下「本件実施要領」といいます。)に基づき実施しています。
本件事業では、社会起業家(注)の起業支援を実施しており、その対象者(以下「本件対象者」といいます。)に対して研修プログラムの提供及び支援サポートメニューの提供を行うほか、一定の要件の下、一律50万円の「スタートアップ支援金」及び450万円を上限とする「事業化支援金」を現金で給付することとしています。
この場合、丸1「スタートアップ支援金」は一時所得に該当すると解して差し支えないか、丸2「事業化支援金」は事業所得又は雑所得に該当すると解して差し支えないかどうかお伺いします。
なお、本件対象者が法人を設立した場合、「事業化支援金」を当該法人に対して給付することもありますが、その場合に当該法人の益金に算入することとなることに疑義はないことを照会の前提としています。

(注) 社会起業家とは、社会的企業の起業を行う個人のことであり、社会的企業とは、地域生活に密接に関連する事業を行う主体であって、当該分野における少子高齢化や環境被害、地域の衰退等の社会的課題について、事業性を確保しながら継続的に事業を行う事業者のことをいいます。

2 事前照会に係る事実関係

(1) 本件事業の目的

 本件事業は、本件対象者(注)に対して起業のための資金、ノウハウ、知識、技術、その他必要な情報等の提供を行うことにより社会起業家の育成を図るとともに、地域社会における事業と雇用を加速的に創造することを目的としています。

(注) 本件対象者は、次の要件を満たす者から、本件実施要領に基づき設置される選定評価委員会が、本件事業で支援を受けようとする応募者の事業計画や応募者個人の資質等を書類及びプレゼンテーションにより審査し、選考することとしています。

  • イ 本件事業への応募書類を提出する時点において個人であること。
  • ロ 本件事業への応募書類を提出する時点において年齢が15歳以上39歳以下であること。
  • ハ 本件対象者として採択された日から支援期間内に起業する意思を有すること又は法人格を有することなく起業準備若しくは事業を行っていること。ただし、2年を超えて事業を行っている者は対象外としています。なお、本件事業の支援期間は本件対象者に採択されてから1年間としています。
  • ニ 審査・選考、その他当法人が定める研修等において日常的なコミュニケーションに支障がない程度の日本語能力を有すること。
  • ホ 東京都内で当法人が年3回程度実施する研修等に参加することが可能であり、その意思を有すること。
  • ヘ 本件事業以外で地域社会雇用創造事業に採択された事業から起業支援金、その他の資金の給付を受けていないこと。また、国、その他の行政機関から起業支援の助成を受けていないこと。
  • ト 起業しようとする事業が建設・土木事業ではないこと。

(2) スタートアップ支援金の概要

 スタートアップ支援金は、本件対象者がその採択の通知があった日から6か月以内に原則334時間以上、起業準備又は事業活動を行った場合、その起業準備又は事業活動に要する本件対象者等の人件費等に充当するものとして給付するものであり、その金額は50万円です。なお、当該支援金の給付を希望する本件対象者は、当該支援金の給付対象となる期間における起業準備又は事業活動を行った活動日、活動時間及びその具体的な活動内容を記載した「活動報告書書類」及び「スタートアップ支援金申請書」を当法人に提出しなければならず、当法人は当該書類により本件対象者が実際に起業準備又は事業活動を行ったことを確認した上で、当該書類に不備、不実の記載、その他不適切な事項がある場合を除き、当該支援金の給付を決定し、本件対象者へ通知することとしています。

(3) 事業化支援金の概要

 事業化支援金は、スタートアップ支援金の給付を受けた本件対象者のうち、事業化に向けた継続的な支援が必要であると認められる者に対し、450万円を上限として給付する支援金です。当該支援金の給付を希望する本件対象者は、当法人が定める期日までに当法人が定める事業化支援金申請書、事業計画書及び予算書等を当法人に提出しなければならず、その上で給付については選定評価委員会がその給付の可否及び金額を決定することになっています。なお、当該支援金は、事業化に要する費用のうち、人件費、謝金、旅費交通費、備品費、消耗品費、印刷製本費、通信運搬費、借料及び損料、広告宣伝費、会議費、委託費、その他当法人が認めた費用に充てるものとしています。また、当該支援金は、原則支援期間終了後に清算払いすることとしており、清算払いにあたって本件対象者は「事業報告書」、「会計帳簿」及び「事業化に要した費用の証憑」を当法人に提出しなければならず、当法人は当該書類を審査した上で、当該支援金の給付金額を確定させ、その金額を本件対象者へ通知するものとしています。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) スタートアップ支援金の所得区分

 スタートアップ支援金は、所得税法第9条第1項各号に該当する非課税所得には該当しないため、課税の対象となります。スタートアップ支援金は、起業準備のために給付されるものであるから、事業を開始する前の段階であり、この収入は、「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得」ではないため、所得税法第27条の事業所得には該当しないものと考えます。そして、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得であることが明らかであり、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得に該当するため、所得税法第34条の一時所得に該当するものと考えます。
なお、一時所得には「労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」という要件もありますが、当法人と本件対象者の間には雇用契約、請負契約などの役務契約、譲渡契約はないため、この要件も満たすものと考えます。

(2) 事業化支援金の所得区分

 事業化支援金は、本件対象者の事業化に向けた活動を支援するために、「事業報告書」、「会計帳簿」及び「事業化に要した費用の証憑」によりその活動実態を確認した上でその事業化に要した費用を清算払いにより給付するものであって、本件対象者が事業を開始した場合にその事業所得の金額の計算上、繰延資産(開業費)として必要経費に算入される金額を助成するものです。
したがって、事業化支援金は、原則として事業所得に係る収入金額となります。
なお、本件対象者が事業を開始するに至らない場合もありますが、この場合、事業化支援金は実際に事業化に向けた活動を開始し、その活動に要した費用を助成するものであることからすれば、対価の性質を有し、一時所得ではなく雑所得に該当するものと考えます。

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