平成21年6月19日

東京国税局
課税第一部 審理課長 殿

A株式会社

1 事前照会の趣旨

当社が国との間で契約した、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(以下「PFI法」という。)に基づく宿舎整備等事業(以下「PFI事業」という。)において、当社が国から受領する施設購入費(後述2(2)参照)に係る消費税について、消費税法上、次のとおり取り扱って差し支えないでしょうか。

  • (1) 当社と国の間で平成15年3月に締結した宿舎整備等事業契約(以下「当初契約」という。)においては、施設購入費の賦払金として支払を受ける金額のうちに割賦金利に該当する金額が存在せず、したがって、これを契約において明示していなかったので、当該施設購入費として支払を受ける金額の全額を消費税の課税の対象としていた。
     今般、別紙1の変更事業契約(以下「変更契約」という。)を締結することにより割賦金利を明らかにして、契約においてこれを明示することになったことから、契約変更後の賦払金のうち割賦金利として明示された部分に係る金額は、消費税法施行令第10条第3項第10号に定める利子の額に該当し、これを対価とする役務の提供は非課税となる。
  • (2) 上記(1)の取扱いは、契約変更後における変更契約の別紙12の別表1に記載の第8回から第51回の支払に対応する賦払金につき適用され、同表の第1回から第7回(支払済額)の賦払金については、契約変更の効果が及ばないことから当初の課税関係に影響を与えず、既に支払われた賦払金は課税の対象であることに変わりはない。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

  • (1) 事業の概要
    当社は、PFI法に基づきBTO方式(注)によるPFI事業を行う事業者として選定され、平成15年3月に当初契約の締結を行った。
    その後、当初契約の規定に従い、平成17年8月時点での当社が資金を調達する長期金利を勘案して施設購入費の額の確定を行い、その証として平成19年4月に事業契約の変更を行った。なお、当該契約書にも割賦金利の額は明示されていない。
    当初契約において、当社が行うPFI事業サービスは、旧宿舎の解体及び撤去、仮宿舎の提供及び維持管理、新宿舎の設計及び建設、新宿舎に係る施設の国への譲渡、及び平成44年3月までの25年間にわたる維持管理、運営支援等を行うこととされており、平成19年4月以降において、PFI事業に対するサービス対価を25年にわたり、計51回に分割して収受することとされている。この当初契約におけるPFI事業のサービス対価は、「施設購入費」、「維持管理・運営支援費」及び「仮宿舎提供費」により構成されており、契約金額は、入札価格の100分の105に相当する金額とする旨が定められている。
    当社は、当初契約に基づき、平成19年3月に宿舎の建設工事をしゅん工して施設を国に引き渡しており、宿舎は国が所管する国有財産となっている。

    (注)BTO方式  Build,Transfer and Operateの略称。民間事業者が施設を建設して、施設完成直後に管理者等に所有権を移転した上で、民間事業者が維持・管理及び運営を行う事業方式

  • (2) 施設購入費の内容
    施設購入費については、当初契約及び「入札説明書」の「サービス対価の算定方法」において次のとおり定められている。
    「施設購入費には施設の設計及び整備、工事監理費、工事に伴う備品整備費、建築確認申請等の手続きに要する費用(書類作成、申請手数料、説明会開催費等)、契約に係る諸費用、建築期間中の資金調達に伴う金利、埋蔵文化財採掘調査費、その他事業に伴う費用を含むものとする。また、国はこれを事業契約に定める回数の分割払いで事業者に支払うことから、この費用の総額を元金とし、割賦支払に必要な割賦金利、手数料も含むものを施設整備費の総額とする。」
  • (3) 会計処理
    当社は、施設購入費について、長期割賦販売等に該当する資産の販売若しくは譲渡、工事の請負又は役務の提供をしたものとして、延払基準の方法により経理していることから、消費税法第16条に基づく長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を適用し消費税の申告を行っている。
  • (4) 施設購入費に含まれる割賦金利の認識
    上記2(1)のとおり、「入札説明書」の「契約の考え方」の「契約金額」において、PFI事業によるサービスの対価としての契約金額は、入札金額の100分の105に相当する金額とする旨が定められており、これに含まれる施設購入費についても、その全額を消費税の課税対象として当初契約を締結した。これは、当社及び国はともに、施設購入費に含まれる割賦金利相当額として計算される金額は、当社の資金調達に基づく利息相当額であって、これは単に事業原価の構成要素に過ぎないものと認識したからである。したがって、当初契約においては、消費税が非課税となる利子を対価とする役務の提供は存在しないと認識していたのである。
  • (5) 契約変更理由
    会計検査院が国に対して、会計検査院法第34条の規定に基づき、「施設購入費の割賦支払に伴う利子等は課税されない利子等に該当するとして、割賦金利にかかる消費税相当額を契約金額に含まれないよう契約変更を求めるなど」の適宜の処置を行うことを要求したことを受けて、国より当社に対して、施設購入後の賦払金額のうち割賦金利を非課税取引として契約変更することにつき協議したい旨の申し入れがあったため、変更契約を締結しようとするものである。

3 2の事実関係に対して当社の求める見解となることの理由

  • (1) 消費税法における賦払金のうち非課税となる部分
     資産の譲渡等の対価の額又は当該対価の額に係る金銭債権の額を2月以上の期間にわたり、かつ、3回以上に分割して受領する場合におけるその受領する賦払金のうち利子又は保証料の額に相当する額で当該賦払に係る契約において明示されている部分を対価とする役務の提供は、消費税の非課税取引とされている(消費税法別表第1三、消令103十)。
  • (2) 本件への当てはめ
     消費税は、取引価格に含まれて転嫁されることが予定され、取引の都度課税される方式であるため、取引の当事者同士が当該取引に係る消費税の課税関係についての認識が一致していることが必要である。したがって、上記3(1)の課税関係としては、当該契約において消費税が非課税となる役務の提供に該当するかどうかが明示されている必要があるものと考えられる。
     そこで、当社と国は、変更契約において、賦払金として支払を受ける金額について割賦金利を明らかにしてこれを明示するとともに、当該割賦金利を役務の提供の対価として収受することとしたのであるから、消費税法上の取扱いにおいては、契約変更後の当該割賦金利を対価とする役務の提供は非課税取引に該当するものと考えられる。
  • (3) 上記3(2)のとおり、消費税の課税関係については、取引当事者間において明らかにすることが求められ、したがって契約において明示されているかが判定基準となるものと考えられる。このことからすれば、既に当初契約における課税関係が確定している割賦金利を明示していなかった第1回から第7回まで(支払済)の賦払金については、消費税の課税の対象であることに変わりがなく、変更契約によりその効果が及ぶこととなる割賦金利を明示する第8回から第51回の支払については、契約において割賦金利が明示されることから、消費税が非課税になると考える。