この度の令和6年能登半島地震において被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
 震災発生以後、政府を挙げて様々な復旧・復興活動が進められていますが、国税庁といたしましても、被災された納税者の皆様について申告・納付等の期限を延長するとともに、災害に関する税務上の措置や手続などについて、積極的に周知・広報を行ってまいりました。今後とも、被災された納税者の皆様の立場に立って、丁寧に対応してまいります。

 国税庁の使命は「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」ことです。経済社会のグローバル化・デジタル化の進展等により事務が複雑・困難化するなど、税務行政を取り巻く環境が大きく変化する中で、この使命を果たすためには、納税者サービスや申告等の効率的・効果的な処理、簡易な誤りの自発的見直しを促す行政指導を通じた「適正な申告等の確保」と、調査・徴収を通じた「不適正な申告等の是正」を車の両輪として推進することが重要であると考えています。

 国税庁が推進している「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」は、こうした大きな方向性の基盤を成す取組の一つです。「適正な申告等の確保」の観点では、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」という将来像に向けて、e-Tax等の利便性の向上や相談対応・情報発信の改善など、納税者目線に立って、様々な納税者サービスを包括的に見直してまいります。スマートフォンなど、日常使い慣れたデジタルツールから簡便に手続を行うことができる環境の整備を目指しており、今後、e-Taxやキャッシュレス納付はますます便利になっていきますので、是非、御利用いただきたいと思います。
 また、「不適正な申告等の是正」の観点では、納税者の権利・利益の保護を図りつつ、適正な申告・納税を行った納税者が不公平感を抱くことのないよう、悪質な納税者に対しては組織を挙げて厳正な対応を行うなど、適正・公平な課税・徴収に努めております。特に、消費税の不正還付や国際的な租税回避への対応などを重点課題として、様々なデータを活用した課税・徴収の効率化・高度化、外国税務当局との連携・協調による深度ある調査・徴収などに積極的に取り組んでいます。

 令和5年10月から開始したインボイス制度については、税理士会、関係民間団体や事業者団体など多方面の方々に御協力をいただきながら、制度の周知や各種説明会の開催等の様々な施策に取り組んでまいりました。
 また、制度開始後初めての消費税の確定申告においては、インボイス発行事業者の登録を受けて課税事業者に転換した方を含む事業者の方々が、円滑に申告手続を行うことができるよう、周知・広報を行うほか、相談体制の拡充などの取組を進めました。
 今後とも、制度の円滑な定着に向けて、事業者の方々の立場に立って、きめ細かく丁寧に対応してまいります。

 令和6年分所得税について、定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されています。
 国税庁では国税庁ホームページに定額減税の特設サイトを開設し、各種パンフレットやQ&Aを掲載するほか、相談体制の整備、源泉徴収義務者向けの説明会など、様々な取組を実施してまいりました。
 引き続き、定額減税について、丁寧な周知・広報等に努めてまいります。

 国税庁の使命を果たすためには、納税者の皆様の税務行政に対する理解と信頼が不可欠と考えており、国税庁の様々な課題や取組方針、各種施策について、ホームページや報道発表等を通じてお知らせしています。
 この「国税庁レポート2024」もこうした取組の一つであり、統計資料のほか、図や写真などを交えながら、国税庁の1年間の活動やトピックスを説明しています。
 このレポートが税務行政に対する皆様の理解を深めていただくための一助になれば幸いです。

令和6(2024)年6月

国税庁長官 阪田 渉