税務行政を取り巻く環境は、経済社会のグローバル化・デジタル化の進展等により、大きく変化しています。このような状況下においても、国税庁としては、「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」という使命を着実に果たしていく必要があります。

 近年、新型コロナウイルス感染症への対応も相まって、税を含むあらゆる分野でデジタルの活用が急速に広まっています。
 税務においてデジタルの活用が広まることは、納税者の皆様にとって、税務手続の簡便化だけではなく、単純誤りの防止による正確性の向上や、業務の効率化による生産性の向上等にもつながることが期待されます。また国税当局側も、事務処理の効率化や得られたデータの活用等を通じて、更なる課税・徴収事務の効率化・高度化を進められるものと考えております。
 このため、本年6月に、一昨年に公表した「税務行政の将来像2.0」を改定した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション−税務行政の将来像2023−」を公表し、税務行政のDXを更に前に進めていくことを示しました。
 「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」という将来像に向けて、e-Tax等の利便性向上や相談チャネルの充実など、納税者目線に立って、納税者サービスを包括的に見直してまいります。今後、e-Taxやキャッシュレス納付は、ますます便利になっていきますので、ぜひ、御利用いただきたいと思います。

 本年10月には消費税のインボイス制度が開始されます。
 制度の円滑な開始のためには、事業者の皆様に制度への理解を深めていただいた上で、それぞれの事業実態に応じた対応を進めていただく必要があります。国税庁では、関係府省庁等とも連携して、事業者団体等への講師派遣や説明会の開催、各種媒体を活用した周知広報など、様々な取組を実施してまいりました。また、令和5年度税制改正では各種の負担軽減措置も講じられています。
 制度開始まで数か月となりましたが、引き続きあらゆる機会をとらえ、税制改正等の情報を含め、事業者の皆様に必要な情報をお届けするとともに、個別相談への対応等に万全を期してまいります。

 適正・公平な課税・徴収の実現については、納税者の権利・利益の保護を図りつつ、適正な申告・納税を行った納税者が不公平感を抱くことのないよう、悪質な納税者に対しては組織を挙げて厳正な対応を行っています。特に、消費税の不正還付や国際的な租税回避への対応などを重点課題として積極的に取り組んでいます。
 この点、消費税は、税収の面で主要な税目の一つであり、国民の皆様の関心も極めて高いことから、一層の適正な執行に努めています。特に、虚偽の申告により不正に還付金を得ようとする事案に対しては、事案の複雑・巧妙化に的確に対応し、厳正な態度で臨んでいます。
 また、増加する海外への投資や海外取引に対しては、外国税務当局との連携・協調などにより、深度ある調査・徴収を実施しています。
 さらに、経済社会のデジタル化に伴う、経済活動の絶え間ない変化に的確に対応するため、様々なデータを活用し、課税・徴収の効率化・高度化に取り組んでいます。
 国税庁としては、このような様々な取組を通じて、納税者の皆様に適正かつ円滑に申告・納税をしていただけるよう努めてまいります。こうした取組は、いずれも納税者の皆様の御理解と御協力があって初めて円滑に実施することができるものです。
 この国税庁レポートは、統計資料のほか、図や写真などを交えながら、納税者の皆様に国税庁の1年間の活動やトピックスを分かりやすくお知らせしています。
 「国税庁レポート2023」が税務行政に対する皆様の御理解を深める一助になれば幸いです。

令和5(2023)年6月

国税庁長官 阪田 渉