4 各国税務当局との協力

(1)開発途上国に対する技術協力

〜 アジア諸国を中心とした開発途上国への技術協力 〜

 国税庁では、独立行政法人国際協力機構(JICA)の技術協力の枠組みなどの下、開発途上国の税務行政の改善、日本の税務行政に対する理解を深めてもらうことなどを目的に、アジア諸国を中心として、開発途上国に対する技術協力に積極的に取り組んでいます。

各国税務当局との協力
国際税務行政セミナー
国際税務行政セミナー

技術協力の概要

1 開発途上国への職員派遣

 開発途上国の税務当局の要望を踏まえ、国際課税、徴収事務、納税者サービスなどの分野について、職員を講師として派遣しています。令和元(2019)年度は、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオスへ派遣し、講義などを行いました。
 また、開発途上国の税務行政に対して継続的なアドバイスを提供することを目的として、JICAの「長期専門家」としても職員を派遣しています。令和元(2019)年度は、インドネシア、カンボジア、ミャンマー、ラオスで職員が活動しました。

2 国内研修の実施

(1) 国際税務行政セミナー(ISTAX)
 複数の開発途上国の税務職員を対象とした研修であり、日本の税制・税務行政全般について講義などを行っています。この研修には、中堅職員を対象とした一般コースと幹部職員を対象とした上級コースがあり、令和元(2019)度は両コース合わせて、19か国から27名が参加しました。

(2) 国別税務行政研修
 1か国の開発途上国の税務職員を対象とした研修であり、その国からの要望に沿った講義などを行っています。令和元(2019)年度は、インドネシア、ミャンマー、ラオスに対して実施しました(計32名が参加)。

(3) アジア国際課税研修
 アジア諸国の税務職員を対象とした研修であり、「国際課税」に関する講義を中心に行っています。令和元(2019)年度は7か国(インドネシア、カンボジア、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、モンゴル、ラオス)から7名が参加しました。

(4) 国税庁実務研修
 世界銀行などの奨学金制度を利用し、日本の大学院(修士課程)に留学している開発途上国の税務職員を対象とした研修であり、日本の税制・税務行政全般に関する講義などを行っています。令和元(2019)年度は、慶應義塾大学、横浜国立大学及び政策研究大学院大学の各大学院に在籍している留学生15名が参加しました。

受入研修の実施状況(単位:国、人)
  平成27年度 平成28年度 平成29年度 平成30年度 令和元年度
国際税務行政セミナー(ISTAX)
(一般コース)
国数 16 15 15 14 16
人数 16 15 15 14 16
国際税務行政セミナー(ISTAX)
(上級コース)
国数 9 8 9 9 11
人数 9 10 9 9 11
国別税務行政研修 国数 3 4 4 6 3
人数 56 96 79 86 32
アジア国際課税研修 国数 6 7 6 5 7
人数 8 11 12 7 7
国税庁実務研修 国数 14 9 11 11 12
人数 18 15 15 17 15

《コラム7》OECDアジア太平洋租税・金融犯罪調査アカデミー

 国際的な租税・金融犯罪に各国が協力して対応する必要性が高まっていることから、OECDが中心となって、国税査察官をはじめとする各国の租税犯罪調査官等を対象にした「OECD租税・金融犯罪調査アカデミー」(以下「アカデミー」といいます。)が世界各地域で開講され(平成25(2013)年にイタリア、平成29(2017)年にケニア、平成30(2018)年にアルゼンチンで開講。)、租税犯罪・収賄罪・マネーロンダリングなどの捜査手法、各国間の国際協力などに関する研修が行われています。
 こうした状況を踏まえ、国税庁は、OECDと連携しながら、アジア・太平洋地域の国々を主な対象とするアカデミーを令和元(2019)年5月に税務大学校和光校舎で開講しました。国税庁は、OECDと協力してアカデミーの研修を定期的に開催し、開発途上国職員の調査技術の向上、国際的な協力関係の構築に貢献しています。

OECDアジア太平洋租税・金融犯罪調査アカデミー
OECDアジア太平洋租税・金融犯罪調査アカデミー

(2)国際会議への参加

〜 国際課税の問題解決に向けた各国間の協力 〜

 各国税務当局間での協力や経験の共有を図るため、国税庁では、OECD税務長官会議、アジア税務長官会合などの国際会議に積極的に参加しています。

イ OECD税務長官会議

 OECD税務長官会議は、OECD加盟37か国及び非加盟16の国・地域の税務当局の長官クラスが参加し、税務行政の幅広い分野にわたって各国の知見・経験の共有等を行う場です。平成31(2019)年3月には、チリ(サンティアゴ)で第12回会合が開催され、税務コンプライアンス向上のための取組等について意見交換が行われました。令和2(2020)年の末頃に第13回会合がオランダで開催される予定です。

ロ アジア税務長官会合

 アジア税務長官会合は、アジア太平洋地域における17の国・地域の税務当局の長官クラスが参加し、域内の協力と知見の共有を図るための議論を行う場です。令和元(2019)年10月には、インドネシアで第49回会合が開催され、デジタル・エコノミーに対する課税への取組や税務行政に関する近年の動向等について意見交換が行われました。