新型コロナウイルス感染症の影響を受けられている皆様に心からお見舞い申し上げます。また、日夜、最前線で新型コロナウイルス感染症の治療や看護に力を尽くされている医療関係者の皆様には心より感謝と敬意を表します。
 これまで、政府を挙げて様々な取組が進められてきています。国税庁では、新型コロナウイルス感染症の影響により、申告や納付が困難な方には、その期限を柔軟に取扱うことや、納税が困難な方には、納税の猶予制度を御案内するなど、納税者の皆様の実情に十分に耳を傾けて、迅速かつ丁寧に対応しているところです。納税者の皆様には、引き続き、御不便をお掛けしますが、御理解と御協力をお願いいたします。

 昨年は元号が改まり、平成から令和へと時代が移り変わりました。国税庁は、新たな時代にあっても、引き続き、国税庁の使命である「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」ため、納税者サービスの充実に向けた施策を実施し、より便利に、よりスムーズに申告や納税ができる納税環境の整備に取り組んでいきたいと考えています。
 また、適正な申告を行った納税者が不公平感を抱くことのないよう、悪質な納税者には厳正な姿勢で臨むなど、適正・公平な課税・徴収に努めます。

 我が国は申告納税制度でありますので、税制や税務行政に対する納税者の皆様の理解と信頼が何よりも大切です。このため、税の意義・必要性及び税務行政の取組について広報したり、申告や納税に必要な情報の提供に努めることはもとより、e-TaxなどICTを活用した利便性の高い申告・納税手段の充実に取り組んでいます。

 昨年10月に実施された消費税率の引上げと軽減税率制度については、その円滑な実施と定着に向け、区分経理に関する記帳指導や事業者向けの説明会の開催、具体的な事例に基づいて解説したQ&Aの公表、パンフレットの配布などによる周知・広報や個別の相談等に丁寧に対応してきました。
 多くの事業者の方が、軽減税率制度実施後の初めての確定申告となりましたが、概ね円滑に行っていただくことができたと考えています。
 これまでの間、税理士会、関係民間団体や事業者団体など、多方面の方々の御協力をいただきましたことに感謝申し上げます。

 また、本年1月から個人納税者の方の所得税の確定申告について、スマートフォン専用画面を利用できる対象者を広げるとともに、スマートフォンとマイナンバーカードを用いたe-Taxも可能となりました。
 これにより、自宅からの申告がますます便利になりましたので、是非、ご利用いただきたいと思います。

 マイナンバー制度への取組については、制度を活用した行政事務の効率化を進めるとともに、納税者の皆様が確定申告を行う際に、控除証明書等のデータをマイナポータルから一括で入手し、確定申告書に自動入力を行うことで簡単にe-Taxができる仕組みなどの構築を進めています。

 適正・公平な課税・徴収の実現への取組の面では、納税者の皆様の権利・利益の保護を図りつつ、大口・悪質な事案には組織的に厳正な対応を行っています。
 シェアリングエコノミーなどの新たな分野の経済活動に的確に対応していくための取組や、ICT化の進展に伴う新たな形態の取引に着目した情報収集・分析などにより適正課税の確保に努めています。

 近年の経済活動の一層のグローバル化を背景に、個人・企業による海外への資産移転等が増加する中、国際的な租税回避行為や海外への資産隠しに対する国民の関心が高まっており、国際的に大きな課題となっています。
 このため国税庁は、外国当局との協調等に取り組むとともに、情報収集・活用の強化や執行体制の整備・拡充を図り、積極的に調査等を行っております。

 国税庁としては、こうした様々な取組を通じて、納税者の皆様に適正かつ円滑に申告・納税をしていただけるよう努めてまいります。
 国税庁に課された使命は重大でありますが、この使命を今後とも着実に果たしていくために、将来の経済社会の在り方を十分に見据えながら、不断に業務改革を推進し、組織を進化すべく様々な課題に取り組んでまいりたいと考えています。
 この「国税庁レポート2020」が税務行政に対する皆様の御理解を深める一助になれば幸いです。

令和2(2020)年 6月

国税庁長官 星野 次彦