1 改正の概要

 平成23年度税制改正において、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)(平成23年11月30日成立、平成23年12月2日公布)により、納税環境整備に関する国税通則法の改正が行われました。

(1) 税務調査手続

 税務調査における事前通知や調査終了などの手続は、従来、通達等に基づき実施していましたが、

  • 調査手続の透明性及び納税者の予見可能性を高め、調査に当たって納税者の協力を促すことでより円滑かつ効果的な調査の実施と申告納税制度の一層の充実・発展に資する観点
  • 納税者に対する説明責任を強化する観点

から、法令上の手続として明確化されました。

(2) 更正の請求

 既に行った申告に誤りがあり、税額が多過ぎた場合や還付金額が少な過ぎた場合に、税額の減額や還付金額の増額を求める「更正の請求」については、従来、更正の請求ができる期間が、原則として法定申告期限から1年間とされていましたが、納税者の救済と課税の適正化とのバランス、制度の簡素化を図る観点から、更正の請求ができる期間が、原則として法定申告期限から5年間に延長されました。
 なお、併せて、課税庁が増額更正できる期間も5年に延長されています。

(3) 理由附記

 国税に関する法律に基づき行われる申請に対する拒否処分及び不利益処分については、従来、所得税法等の個別法により理由附記を行うこととされていた一部の処分を除き、原則として理由附記を行うこととされていませんでしたが、処分の適正化と納税者の予見可能性確保の観点から、全ての処分について、理由附記を実施することとされました。
 ただし、個人の白色申告者などに対する更正などに係る理由附記については、記帳・帳簿等保存義務の拡大(平成26年1月1日施行)と併せて実施することとされています。

(注) 個人の白色申告者のうち前々年分あるいは前年分の事業所得、不動産所得又は山林所得の金額の合計額が300万円を超える方に必要とされていた記帳と帳簿書類の保存が、平成26年1月からは、これらの所得を生ずべき業務を行う全ての方(所得税の申告の必要がない方を含みます。)について必要となります。

 このうち、更正の請求期間の延長に関しては、平成23年12月2日の法律の公布とともに施行され、税務調査手続及び理由附記に関しては、平成25年1月1日に施行(ただし、個人の白色申告者などに係る理由附記については、平成25年において記帳・帳簿等保存義務が課されている方などを除き、平成26年1月1日以後に行う処分から適用されます。)されています。

2 改正国税通則法の施行に伴う対応

 国税庁では、法施行後の税務調査手続などを適正かつ円滑に実施する観点から、全職員に対して改正に関する職場研修を実施した上で、平成24年10月から12月までの間、法施行後に実施することとなる一部の手続について、先行的に取り組みました。
 また、今般の改正により国税通則法に新たに設けられた税務調査手続に関する規定の取扱いなどを定めるため、法令解釈通達を制定するとともに、法令を遵守した適正な調査が行われるよう「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について」を定め、職員に対して指示しました。
 なお、改正の概要などを解説したパンフレットを作成して税務署窓口などに設置したほか、国税庁ホームページに法令解釈通達などとともに専用ページを設けて掲載し、改正事項の納税者への周知にも取り組みました。