(1) 開発途上国に対する技術協力

アジア諸国を中心とした開発途上国への技術協力

 国税庁では、国際協力機構(JICA)の技術協力の枠組みなどの下、開発途上国の税務行政の改善、日本の税務行政に対する理解者の育成などを目的に、アジア諸国を中心として、開発途上国に対する技術協力に積極的に取り組んでいます。

技術協力の概要

1 開発途上国への職員派遣(派遣型)

 現地税務当局の要望を踏まえ、納税者サービス、国際課税、職員研修などの分野について、職員を講師として派遣しています。平成24年度は、カンボジア、中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムなどへ派遣し、講義などを行いました。
 また、開発途上国の税務行政に対して継続的なアドバイスを提供することを目的として、JICAの「長期専門家」としても職員を派遣しています。平成24年度においては、インドネシア、マレーシア、ベトナムに職員が常駐しています。

2 国内研修における講義などの実施(受入型)
  1. (1) 「国際税務行政セミナー(ISTAX)」

     開発途上国の税務職員を対象とした研修であり、日本の税制・税務行政全般について講義などを行っています。このセミナーには、中堅職員を対象とした一般コースと幹部職員を対象とした上級コースがあり、平成24年度には両コースあわせて計26名が参加しました。

  2. (2) 「国別税務行政研修」

     特定の開発途上国の税務職員を対象とした研修であり、各国からの要望に沿った講義などを行っています。平成24年度は、カンボジア、中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タンザニア、ベトナムの税務職員95名が参加しました。

  3. (3) 「アジア国際課税研修」

     複数のアジア諸国の税務職員を対象とした研修で、「国際課税」に関する講義などを行っています。平成24年度は5か国(中国、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム)から11名が参加しました。

  4. (4) 「国税庁実務研修」

     世界銀行などの奨学金制度を利用し、我が国の大学院(修士課程)に留学している開発途上国の税務職員を対象とした研修です。日本の税制・税務行政全般に関する講義などを行い、平成24年度は、慶応義塾大学、横浜国立大学、政策研究大学院大学、一橋大学の各大学院に在籍している留学生19名が参加しました。

受入研修の実施状況

(単位:国、人)

  平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度
国際税務行政セミナー(ISTAX)・一般コース 国数 18 19 18 20 15
人数 20 20 18 20 15
国際税務行政セミナー(ISTAX)・上級コース 国数 10 11 14 12 11
人数 10 11 14 12 11
国別税務行政研修 国数 8 8 4 6 7
人数 108 100 54 51 95
アジア国際課税研修 国数 6 6 4 3 5
人数 12 11 9 7 11
国税庁実務研修 国数 10 9 12 12 12
人数 17 21 20 19 19

(2) 税務当局間の国際会議への参加

二重課税や租税回避の問題解決に向けた各国間の協力

 経済の国際化や高度情報化の進展により新たな取引形態が拡大する中で、ひとつの所得に対して複数の国が課税する二重課税の問題や、租税回避行為などによりどこの国においても課税されない「課税の空白」といった問題が、各国税務当局が取り組むべき課題となっています。こうした問題の解決に向けての各国税務当局間での協力や経験の共有を図るため、国税庁は様々な国際会議に積極的に参加しています。その主なものとしては、以下に紹介するまる1OECD税務長官会議、まる2アジア税務長官会合、まる3OECD租税委員会などがあります。

  1. まる1 OECD税務長官会議

     OECD税務長官会議は、税務行政の幅広い分野にわたって各国の知見・経験の共有などを行う場となっています。平成25年5月には、ロシア連邦・モスクワで第8回会合が開催され、海外取引等を利用した国際的な脱税(オフショア・ノンコンプライアンス)への対抗、「税源浸食と利益移転」問題への対応、企業の税務コンプライアンスの向上等について意見交換が行われました。

  2. まる2 アジア税務長官会合

     アジア税務長官会合(SGATAR:Study Group on Asian Tax Administration and Research)は、アジア地域における16か国・地域の税務当局で構成され、域内の協力と知見の共有を図るための議論が行われる場となっています。平成24年11月には、タイで第42回会合が開催され、税務執行面における国際協力の推進を図るとともに、直面する共通の諸問題について意見交換が行われました。

  3. まる3 OECD租税委員会

     OECD租税委員会は、モデル租税条約、移転価格ガイドラインなどの整備や、各国税務当局の有する知見や経験を共有する場となっています。OECD租税委員会の下には、それぞれ個別のテーマを扱う検討部会が組織され、意見交換が行われています。国税庁は、こうした租税委員会の活動に積極的に参加しています。詳しくは、国税庁ホームページの「OECD租税委員会(CFA)」http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/oecd/index.htmをご参照ください。