税務行政を取り巻く環境を見ますと、少子高齢化や国際化・IT化という大きな流れに加え、直近では内外の経済情勢が急激な変化を見せ、それに伴い、様々な課題が生じております。
我々は、この厳しい状況の中で、国の活動を支える歳入確保のため、「適正・公平な課税及び徴収の実現」という国税庁の任務をしっかりと果たすことにより、国民の負託に応えていきたいと考えております。
そのためには、我々税務職員一人一人が高いモラルを維持し、法令に沿った適正な課税・徴収を行うとともに、悪質な脱税や滞納に対しては厳正な姿勢で臨むことにより、税務行政の信頼感と公平感を保つことが重要です。また、国税組織全体としても、限られた定員・予算の下、ITの活用などを進めることにより、納税者の利便性の向上を図りつつ、税金の無駄遣いとならないよう経費の節減と事務の一層の効率化を進める必要があります。

取引の国際化・IT化などにより、調査が一層困難になる中で、適正・公平な課税を実現するため、我々は幅広く情報を収集し、取引の実態に応じた調査体制を整え、効果的な調査や査察の実施に努めています。併せて、課税に当たっては、課税処理の透明性・統一性を確保するため、事実認定と法令の解釈・適用を的確に行うこととしています。
また、確実に税金を徴収するため、期限内収納に向けた各種施策を推進して滞納の未然防止に努め、滞納事案については、納税者の実情を踏まえつつ、大口・悪質事案、消費税滞納事案などに重点的に取り組んで、滞納残高の圧縮を図っています。
申告納税制度の下では、納税者に自発的かつ適正に納税義務を履行していただくことが、最も重要です。
申告と納税に当たっての皆様の利便性を向上するため、e-Tax(国税電子申告・納税システム)の使い勝手の向上や国税庁のホームページを通じた情報の提供など、ITを活用した納税者サービスの充実に努めています。また、国税局ごとに電話相談センターを設置して、昨年11月からすべての税務署の電話相談の集中化を実施したところです。更に、税務署における納税者窓口の一本化を進めており、本年7月からすべての税務署で実施してまいります。
これらの取組は、一層の事務の効率化にもつながるものです。

この「国税庁レポート2009」は、国民に対する行政の説明責任を果たすため、我々が抱えている課題と取組・その実績を納税者に分かりやすく説明するという編集方針のもとに作成したものです。
この「国税庁レポート2009」が我々の活動に対するご理解を深める一助になれば幸いです。

平成21年(2009年)6月

国税庁長官 石井 道遠