国税庁は、発足以来、「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」という使命を達成するため、税務行政を推進してきました。特に、平成13年の中央省庁等改革を契機として、担当する事務について、事務の実施基準などのルールを定め、公表いたしました。また、併せて、国税庁が達成すべき目標を設定し、その目標に対する実績を評価して公表することとしました。

 こうした改革は、税務行政が納税者である国民の皆様から負託されたものであるという基本的認識に立って、

  1. 1 国税庁の使命、実績目標、施策等を国民の皆様に明らかにし、説明責任を果たすこと
  2. 2 事務全般について、客観的に実績を評価することにより、効率的で質が高く、時代の要請に合った行政を目指すこと
  3. 3 仕事の進め方を改善し、職員の意欲の向上、組織の活性化を図ること

 を目的としたものです。

税務行政を取り巻く環境は、大きく変化しています。高齢化の進展など我が国社会の変化や経済のグローバル化に伴い申告者数が大幅に増加する中、調査・徴収事務は、一層複雑・困難なものになっています。また、訴訟社会の到来により、審理を充実し、課税処理の一層の透明性・統一性の確保を図っていく必要性も増しています。一方で、定員については、厳しい対応が求められており、こうした中で、国税庁がその任務とする「内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現」を果たしていくためには、税務行政の透明化を進め、納税者利便を高めつつも悪質な納税者に毅然と対応することで国民の皆様の負託に応えていく必要があります。
 私たちに与えられた人的資源・物的資源を最大限に活用していくためには、国税電子申告・納税システム(e-Tax)など、IT(情報通信技術)の活用とともに内部事務の一元化・電話相談の集中化といった取組を進めることにより、納税者の皆様の利便性の向上と行政運営の一層の簡素化・効率化を両立させ、十分な調査・徴収事務量を確保していかなければなりません。

 納税者の利便性の向上に当たっては、納税者の皆様の申告と納税をサポートするため、国税庁ホームページを活用した税務情報の提供、e-Taxや確定申告書等作成コーナーの導入・改善など、ITを活用した納税者サービスの充実に取り組んでいます。
 e-Taxについては、国税庁における当面の最重要課題として、現在、国税庁・国税局・税務署を挙げて、その普及に向けた各種施策を強力に推進しているところです。納税者の利便性の向上などの観点から、これまで、国税関係手続の「オンライン利用促進のための行動計画」に基づき、機能や運用の改善などを進めてきたところであり、引き続き、税理士会や関係民間団体との連携を図りながら、e-Taxの普及に向け、積極的な取組を進めていきます。
 また、業務の一層の効率化を図るため、内部事務の一元化や電話相談の集中化などの施策を進めているところです。内部事務の一元化とは、これまで個人、法人、管理・徴収といった部署別に行っていた内部事務について、部署や税目といった垣根を取り払い、同種の事務を統合して一つの部署で一体的に処理することをいいます。
 今後とも、このような取組をはじめとして、事務の効率化・合理化、経費削減などのさらなる最適化を図っていかなければなりません。

 税務調査に当たっては、最新の社会経済情勢や業種・業態の景況を踏まえ、申告内容や資料情報などを分析・検討し、真に調査が必要な納税者に対して深度ある調査を実施するなど効果的・効率的な事務運営に取り組んでいます。特に複雑化・広域化する経済取引については、その実態に応じた調査体制の編成や調査技法の開発を行うなど的確な調査の実施に努めています。
 また、近年の経済の国際化の進展に伴い、二重課税のリスクが高まる一方で、国際取引を利用した脱税、租税回避を図るケースも増加しています。これらの国際的課税問題の解決に向けた対応の必要性が高まっています。このような問題は、一国での対応には限界があるため、我が国としても、国際会議などの場を通じて活発な意見交換を行うなど、外国税務当局とも協力してその解決に取り組んでいます。さらに、各国の税制の差異や租税条約の違いを巧みに利用して我が国の税負担を免れる国際的な租税回避行為や、グループ企業間の取引を通じた所得の海外移転が問題となっています。こうした国際的な課税問題に対しては、適正・公平な課税を実現する観点から、積極的に取り組んでいます。

 滞納の圧縮に当たっては、期限内収納の確保に向けた各種施策に取り組み、滞納の未然防止を図る一方、滞納となった国税については、納税者の個々の実情に即しつつ、消費税滞納事案の優先処理、大口・悪質滞納事案の重点処理、少額滞納事案の効果的・効率的処理を基本方針として、全体として着実な整理促進が図られるよう取り組んでいます。

 この「国税庁レポート2008」は、このような国税庁の取組について、納税者の皆様に分かりやすく説明するために作成したものです。編集に当たっては、

  1. 1 国税庁は、どのような方針で税務行政を推進しているのか
  2. 2 税務行政で改善すべき点は何か

などについてもご説明しています。

 申告納税制度の下で、納税者の皆様に、自発的かつ適正に納税義務を履行していただけることが、国税庁の使命を達成することにつながります。この「国税庁レポート2008」が納税に対するご理解を深める一助になれば幸いです。

 平成20年6月

国税庁長官 牧野 治郎