1. (6) 消費税

     昭和63年(1988年)4月に税制調査会で抜本的な税制改革についての答申が出されたことを受けて、税制全般にわたる見直しが行われ、同年12月末には、税制改革関連法案が国会で可決され、公布された。

     この税制改革により、広く公平に消費に負担を求める「消費税」が創設され、平成元年(1989年)4月1日より適用された。

     その後、消費税法は、「税制問題等に関する両院合同協議会」における協議を踏まえ、平成3年(1991年)5月に議員立法により、非課税範囲、簡易課税制度、限界控除制度、中間申告・納付制度の改正が行われ、同年10月1日から施行されている。

     また、平成6年(1994年)6月に税制調査会で活力ある福祉社会の実現を目指す観点から、所得税負担の軽減と消費課税の充実を図るといった税制改革についての答申が出されたことを受けて、税制の抜本的な見直しが行われ、同年11月に「所得税法及び消費税法の一部を改正する法律」及び「地方税法等の一部を改正する法律」が国会で可決成立し、公布された。

     この法律改正により、消費税について中小事業者に対する特例措置の見直し(簡易課税制度の改正、限界控除制度の廃止等)など制度の抜本的な改革が行われるとともに、消費税率の引上げが行われ、また、地方分権の推進・地域福祉の充実等のため、地方税源の充実を図ることとし、消費譲与税に代えて地方税として地方消費税が新たに創設され、平成9年(1997年)4月1日から施行された。

     さらに、平成15年度税制改正においては、現下の経済・財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化のための「あるべき税制」の構築に向け、税制全般にわたる見直しが行われ、消費税についても、今後の少子高齢化における消費税の重要性に鑑み、消費税に対する国民の信頼性、制度の透明性を向上させる観点から、中小事業者に対する特例措置等(事業者免税点制度や簡易課税制度の適用上限の引下げ、中間申告納付制度の改正等)について抜本的な改革が行われたほか、消費税法に消費税の額を含めた価格表示の義務規定が設けられるなどの改正が行われ、平成16年(2004年)4月1日から適用することとされた。

    1. イ 消費税の概要

       消費税は、国内において、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け及び役務の提供(資産の譲渡等)並びに保税地域から引き取られる外国貨物を課税の対象としており、国内取引については事業者を、輸入取引については外国貨物を保税地域から引き取る者を納税義務者としている。

      (注) その課税期間の基準期間(個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度をいう。)における課税売上高が3千万円(平成16年4月1日以後開始する課税期間については1千万円)以下の事業者については、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき納税義務が免除される(小規模事業者に係る納税義務の免除)。ただし、選択により納税義務者になることもできる。

       なお、その事業年度の基準期間がない法人(社会福祉法人を除く。)のうち、当該事業年度開始の日における資本又は出資の金額が1,000万円以上である法人については、当該事業年度の納税義務は免除されない。(図5参照

       なお、国内取引のうち土地の譲渡及び貸付け、金融取引などの消費に負担を求める税としての性格上課税対象としてなじまないもの及び医療、教育など社会政策的な配慮に基づくものについては非課税としている。

       また、消費税は国内における消費について負担を求めるものであることから、物品の輸出や国際運輸、国際通信等は免税としている。

       消費税の課税標準は、国内取引については課税資産の譲渡等の対価の額、すなわち実際の取引価額であり、輸入取引については課税貨物の関税課税価格、関税額及び個別消費税額の合計額であり、消費税の税率は、4%である。

       また、地方消費税の税率は消費税額の25%(消費税率換算で1%相当)となることから、消費税と地方消費税を合わせた税率は5%となる。

       ところで、納付税額の計算に当たっては、その課税期間の課税標準額に対する消費税額から当該課税期間中に行った課税仕入れ及び保税地域から引き取った課税貨物に係る消費税額の合計額を控除する。

       この場合において、控除税額は次のように計算することとなる。

      1. A 課税売上割合が95%以上の場合は、当該課税期間中の課税仕入れ等の税額の全額を控除することができる。

        課税売上割合の算式

      2. B 課税売上割合が95%に満たない場合は、次の方式のいずれかにより計算する。
        1. 1 個別対応方式
          その課税期間中の課税仕入れ等の税額を、課税売上げにのみ要するもの、非課税売上げにのみ要するもの並びに課税売上げ及び非課税売上げに共通して要するものに区分し、次の算式により計算した金額が控除税額となる。
          個別対応方式による控除税額の算式
        2. 2 一括比例配分方式

           一括比例配分方式による場合には、次の算式により計算した金額が控除税額となる。

           控除税額=課税仕入れ等の税額×課税売上割合

          (注) 仕入税額控除の適用を受けるためには、課税仕入れ等の事実を記載した帳簿の保存に加えて、請求書等(請求書、領収書、納品書その他取引の事実を証する書類)も併せて保存することとされている。

           なお、中小事業者の仕入れに係る税額の控除の特例(簡易課税制度)の規定が設けられており、その課税期間の基準期間における課税売上高が2億円(平成16年4月1日以後開始する課税期間については、5千万円)以下である事業者が、この制度の適用を受ける旨の届出書を提出している場合には、課税標準額に対する消費税額に一定の率(みなし仕入率(注))を乗じた金額を控除する課税仕入れ等の税額とみなして納付税額の計算をすることができる

          (注) みなし仕入率は次に掲げる事業の区分に応じてそれぞれに定める率とされている。

          1. 1 第一種事業(卸売業)―――――― 90%
          2. 2 第二種事業(小売業)―――――― 80%
          3. 3 第三種事業(製造業等)―――――― 70%
          4. 4 第四種事業(13及び5以外)―――――― 60%
          5. 5 第五種事業(サービス業等)―――――― 50%

       消費税及び地方消費税の申告・納付は、国内取引についてはその課税期間の末日の翌日から2か月以内(個人事業者の確定申告については3月末日まで)に、確定申告書を提出し、その合計額を納付することとされている。

       なお、直前の課税期間の確定消費税額が400万円を超える事業者については、課税期間開始後3か月毎(3か月を経過した日から2か月以内)に年3回、それぞれ当該確定消費税額の4分の1の消費税額とその25%の地方消費税額を中間申告・納付し、直前の課税期間の確定消費税額が48万円を超え、400万円以下の事業者については、課税期間開始後6か月を経過した日から2か月以内に年1回、当該確定消費税額の2分の1の消費税額とその25%の地方消費税額を中間申告・納付することとされている。

       (平成16年4月1日以後開始する課税期間については、直前の課税期間の確定消費税額が4,800万円を超える事業者は、一月ごとに年11回、当該確定消費税額の12分の1の消費税額とその25%の地方消費税額を中間報告、納付することとされた。)

       また、輸入取引については、課税貨物を保税地域から引き取る時までに申告、納付することとされている。

       事業者(免税事業者を除く。)は、帳簿を備え付けて、これに資産の譲渡等又は課税仕入れ若しくは課税貨物の保税地域からの引取りに関する事項を記録し、かつ、当該帳簿を保存しなければならないこととされている。帳簿は、これらの記載事項を充足するものであれば、商業帳簿でも所得税、法人税における帳簿書類でも差し支えない。

    2. ロ  消費税の調査・指導等

       消費税については、平成3年(1991年)7月以降、従来の広報、相談、指導を基本とした施策に調査を加えた執行体制に移行し、所得税・法人税等との同時処理・同時調査を行うことにより、納税者の利便を図り、制度の一層の定着と、適正・公平な課税の実現に努めている。

       調査では、大口・悪質と認められるものなど調査の必要性が高い者に重点を置き、効果的な展開を図るとともに、消費税の還付申告法人等消費税の観点から必要があると認められる者に対して消費税に重点を置いた調査を実施し、的確な課税処理に努めている。

       また、消費税には、簡易課税制度の適用がない事業者については課税仕入れに関する帳簿及び請求書等の保存がない部分の仕入税額控除が認められないなど、所得税、法人税とは異なる制度上の特色があるため、この制度に則した適切な課税処理を図るとともに、その後に適正な申告がなされるよう的確な指導を行っていくこととしている。(表22参照)。