1 概要

国税庁では、公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報であることに鑑み、統計法における公的統計の基本理念である
① 行政機関等における相互の協力及び適切な役割分担の下に、体系的に整備されなければならないこと
② 適切かつ合理的な方法により、かつ、中立性及び信頼性が確保されるように作成しなければならいないこと
③ 広く国民が容易に入手し、効率的に利用できるものとして提供しなければならないこと
④ 公的統計の作成に用いられた個人又は法人その他の団体に関する秘密は、保護されなければならないこと
を前提に、内国税の賦課、徴収及びこれらに関連する計数を各種統計として作成・公表している。これらは部内、他省庁、大学、民間研究機関、国会等において税務行政に関する基礎資料として活用されている。

国税庁で作成・公表している統計

区分 基幹統計 業務統計
全数調査 - 税務統計
(国税庁統計年報)
標本調査 民間給与実態統計調査 会社標本調査
申告所得税標本調査

2 基幹統計(民間給与実態統計調査)

(1) 沿革
 国税庁で作成・公表している基幹統計調査である民間給与実態統計調査は、昭和23年分の調査を大蔵省主税局で行っていたものを、翌年の昭和24年分調査から国税庁が行うこととなり、この年分を第1回として、以後毎年実施され、平成30年分の調査で第70回目となる。
 昭和29年分の調査から、統計法に基づく指定統計(第77号)となり、統計としての基礎的な裏付けができた。
 昭和38年分の調査から、調査結果について報道機関を通じて公表する方法をとった。
 昭和53年分の調査から、集計方法を手集計から電子計算機によることとしたため、迅速性、正確性が増したほか、より多くの項目の作表が可能となった。このため、当年分から性別、平均年齢、平均勤続年数等の項目を新たに集計に加えた。
 平成19年の統計法改正により、平成20年分の調査から基幹統計とされ、また、これまで各国税局・沖縄国税事務所で行っていた照会対応、調査票の回収、審査、疑義照会といった事務について民間委託を開始した。
 平成21年分の調査から、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(平成18年法律第51号)に基づき、民間競争入札(いわゆる市場化テスト)を実施し、平成26年分の調査からは、新プロセスへ移行している。
(2) 目的
 この調査は、統計法に基づく基幹統計「民間給与実態統計」の作成を目的とする調査である。「民間給与実態統計」は、民間の事業所における年間の給与の実態を、給与階級別、事業所規模別、企業規模別等を明らかにし、併せて、租税収入の見積り、租税負担の検討及び税務行政運営等の基本資料とすることを目的としている。
(3) 特色
 この調査の特色は、次のとおりである。
イ 従事員1人の事業所から従事員5,000人以上の事業所まで広く調査していること。
ロ 給与階級別、性別、年齢階層別及び勤続年数別による給与所得者の分布が分かること。
ハ 企業規模別(事業所の属する企業の組織及び資本金階級別)に給与の実態が分かること。
(4) 調査の対象
 この調査は、各年12月31日現在の源泉徴収義務者(民間の事業所に限る。)に勤務している給与所得者(所得税の納税の有無を問わない。)を対象としている(下図網掛け部分)。

民間給与実態統計調査における調査の対象

  源泉徴収義務者
民間の事業所 官公庁等
給与所得者 従業員(非正規を含む。)、役員 国家公務員、地方公務員、公庫職員等(非正規を含む。)
全従事員について源泉所得税の納税がない事業所の従事員
労働した日又は時間によって給与の金額が算定され、かつ、労働した日にその都度給与の支給を受ける者

(5) 調査の方法
 この調査は、標本として抽出された源泉徴収義務者(以下「標本事業所」という。)及び標本事業所に勤務する給与所得者(以下「標本給与所得者」という。)について行っている。
 標本の抽出は、標本事業所の抽出及び標本給与所得者の抽出の2段階からなっている。
イ 第1段抽出
 事業所を、事業所の従事員数等によって層別し、それぞれの抽出率で標本事業所を抽出している。
 なお、第1段抽出は、国税庁長官官房企画課で行い、抽出された標本事業所には、国税局総務部企画課(沖縄国税事務所にあっては総務課)から調査票を送付している。
ロ 第2段抽出
 標本事業所の給与台帳を基にして、一定の抽出率により標本給与所得者を抽出している。ただし、標本事業所において年間給与額が2,OOO万円を超える者は、精度向上のため全数を抽出している。
 なお、第2段抽出は、標本事業所が行っている。

3 業務統計

(1) 税務統計(国税庁統計年報)
イ 沿革
 税務統計(国税庁統計年報)は、「第1回大蔵卿年報書」が明治9年に刊行されて以来「主税局統計年報書」、「国税庁統計年報書」とその名称を変えて現在に至っており、平成29年度分の調査で第143回目となる。
ロ 目的
 国税に関する基礎統計として、国税の申告、賦課、徴収及びこれらに関連する計数を提供し、併せて租税収入の見積り、税制改正及び税務行政の運営等の基礎資料とすることを目的としている。
ハ 調査の方法
 この調査は、その大部分が税務署において調査したものを、国税庁及び各国税局・沖縄国税事務所で取りまとめて、全数調査の方法により調査・集計したものであるが、これらは、税務署が統計を作成するために特別な調査を行うものではなく、事務処理の過程から得られる情報に基づき、派生的に作成されるものである。
(2) 会社標本調査
イ 沿革
 会社標本調査は、昭和26年分から始まり、以後毎年実施しており、平成30年度分の調査で第69回目となる。
 調査結果は、初回以来「国税庁統計年報書」に掲載しており、さらに、昭和38年分の調査からは、調査結果に基づき「税務統計から見た法人企業の実態」として、法人企業の総数、資本金、営業収入金額等について、若干の解説を加えて公表している。
 平成21年度分の調査からは、標本法人の基礎データの作成に当たり、国税電子申告・納税システム(e-Tax)により提出された確定申告書等の電子データを活用している。
ロ 目的
 この調査は、我が国の法人企業について、資本金階級別や業種別にその実態を明らかにし、併せて租税収入の見積り、税制改正及び税務行政の運営等の基礎資料とすることに目的としている。
ハ 特色
 この調査の特色は次のとおりである。
(イ) 中小法人についても調査しており、いわゆる法人組織である企業の全体を網羅していること。
(ロ) 法人の決算額ではなく、税務署に提出された法人税の確定申告書等の計数に基づいていること。
ニ 調査の対象
 内国普通法人(休業、清算中の法人並びに一般社団・財団法人(法人税法第2条九の二に規定する非営利型法人を除く。)及び特殊な法人を除く。)について、その年の4月1日から翌年3月31日までの間に終了した各事業年度(この間に事業年度が2回以上終了した法人にあってはその全事業年度)を対象として、翌年7月31日現在でとりまとめている。
ホ 調査の方法
 この調査は、標本調査であり、調査対象法人(母集団)から資本金階級別・業種別等に一定の方法で標本法人を抽出し、その標本法人の基礎データを基に、母集団全体の計数を推計したものである。
 標本法人の基礎データは、税務署に提出された対象事業年度分の法人税の確定申告書等に基づき、税務署及び各国税局・沖縄国税事務所において作成している。
(3) 申告所得税標本調査
イ 沿革
 申告所得税標本調査は、昭和26年分から始まり、以後毎年実施しており、平成30年分の調査で第68回目になる。
 調査結果は、初回以来「国税庁統計年報書」に掲載しており、さらに、昭和38年分の調査からは、「税務統計から見た申告所得税の実態」として、若干の解説を加えて公表している。
 平成22年分の調査からは、標本の基礎データの作成に当たり、国税電子申告・納税システム(e-Tax)により提出された確定申告書等の電子データを活用している。
ロ 目的
 この調査は、申告所得税納税者について、所得者区分別・所得種類別の構成、所得階級別の分布及び各種控除の適用状況の実態を明らかにし、併せて租税収入の見積り、税制改正及び税務行政の運営等の基礎資料とすることを目的としている。
ハ 調査の対象
 調査の対象は、各年分の申告所得税について翌年3月31日現在(平成24年分以降は、翌年3月31日までに申告又は処理をした者のうち、6月30日現在)において申告納税額がある者全部である。したがって、所得金額があっても申告納税額のない者(例えば、還付申告書を提出した者等)は、調査対象から除かれている。
ニ 調査の方法
 この調査は、標本調査であり、全国524税務署より、所得者区分別・合計所得階級別に、一定の方法で標本を抽出し、その標本の基礎データを基に、母集団全体の計数を推計したものである(一部の調査項目については、全数調査である。)。
 標本の基礎データは、税務署に提出された対象年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書等に基づき、税務署において作成している。