会長
 御説明ありがとうございました。
それでは、これから質疑に入りたいと思います。ただいま連続して御説明いただきました六つの資料の内容につきまして、御質問、御意見ございましたら、どうぞ御自由に御発言いただきたいと思います。
田嶼委員どうぞ。

田嶼委員
 田嶼でございます。丁寧な御説明をありがとうございました。
確定申告のダウンロードとe-Taxについてお伺いしたいと思います。
私は、ダウンロードができるということを知らなかったものですから、こんな便利な方法があるのだと思って大変参考になりました。このe-Taxの方では自分のデータを送ることになります。その場合の最後にお話ありましたセキュリティの面から、どのような手当てといいますか、セキュリティが担保されているのかということについてお伺いしたいと思います。

岡本審議官
 それは私の方から御説明させていただきます。今最後に申し上げました国税庁のシステムにおけるセキュリティの概要、これはKSKシステムということで御説明をさせていただきましたけれども、e-Taxで入ります情報も最終的にはKSKシステムに入ってきて、同じ利用資格の制限などによりセキュリティの措置をとっておりますので、先程申し上げたようなことと同じようなセキュリティの保護策をe-Taxの情報についても施しているということでございます。

会長
 よろしいですか。
それでは、ほかに何かございますでしょうか。
小林委員どうぞ。

会長代理
 今、審議官の方から御説明のありましたお酒の業界なのですが、例のビール業界で新しい取引制度が導入されまして、これはもともとリベートをたくさん出すのでそれが値引きの原資になっているという、そういう状態を何とかなくそうとこういうことで新取引制度を導入されたわけですが、御承知のとおり、どうもそれぞれ思惑がございまして、なかなかメーカーの方の価格制度も浸透しない。それからスーパーの方では、とても値引きなどできる状態ではないというような形で出てまいりまして、今の岡本審議官の説明のところでも卸売業者のマージンの問題が出てまいりましたけれども、国税庁としましては、最近起こってきているこの問題についてはどういうふうに対応されるのか、といいますのはいろいろ業界の方から御質問がございまして、私もどういうふうに答えていいのか分からないものですから、この機会にちょっと御説明いただければと思っております。

岡本審議官
 小林先生の方がお詳しいのではないかと思うのですけれども、基本的に国税庁のスタンスとしましては、先ほどの大きな紙の中でも御説明いたしましたように、現状でも卸、マージンが非常に低下していると収益構造が変化しているということで、これに対する右の方の将来像のところでは、それなりの適正マージンの確保というふうに書かせていただいているのですけれども、それを導くツールというのは、一義的にはやはり公正取引の推進ということだと思います。ですから、規制緩和が行われる中でも公正取引をきちっとしていって、競争条件をきちっとするということが大事なことだと思うのですけれども、今いろいろ言われておりますことは、基本的には各種のリベートが極めて不透明な形でケースバイケースで出されるということで、卸、製造、小売それぞれが経営のいわば健全化、透明化という点からも決していい状況ではなかった。
そういうために基本的に一番簡単に考えますと、そういった不透明なリベートをなくしていくと、むしろその出荷価格に対してそれに適正なマージンを上乗せして卸価格になり、更に小売価格になり、それに末端の消費者価格になっていくというのが望ましいのだろうと思うのですけれども、そういうことで不透明なリベートの廃止ということは、我々も従来からいろいろな場で業界にもお話をしてまいりましたし、それは公正取引委員会も同じスタンスだと思います。
ただ、今ときどき新聞に出ているような記事というのは、個別の契約について言いますと、いろいろなケースがあり得るものですから、それについて一々国税庁なりがどうこうしろということは申し上げられない、公正取引委員会もむしろ逆に問題があれば指摘はするのでしょうけれども、一般的にはそれぞれの個々の商取引になりますので、我々としては成り行きを見守っているという状況かと思います。

会長代理
 一つ私が分からないのは、どうしてメーカーさんがああいうふうに歩調を合わせて、おたくもやるなら私どももという、そういう感じになるのでしょうか。それが私ちょっと理解できないのですが。

岡本審議官
 それは、先ほどもこれは製造のところで触れさせていただきましたように、過剰供給、過度の競争というのでしょうか、ビールメーカーならビールメーカー同士の過当競争というものが、そもそもの問題なのではないだろうか、我々としてはむしろそういうふうにして安売りに走るということではなくて、もともと致酔性のある飲料でもありますから、もっと品質のいいもの、ないしは、うちのビールは他社と比べても違うのだというのが分かるような、そういうものを造っていただく方が本来のあり方だとは思っているのですけれども、なかなかシェア争い、量的な競争だけになってしまうと、往々にして、むしろ流通の方がそれに対して被害を受けているという好ましくない状況なのではないかと思います。

会長代理
 ありがとうございました。

会長
 そのほかございますでしょうか。島上委員どうぞ。

島上委員
 ストックオプション課税についてお伺いしたいと思います。
これについて、最終的には国税の判断は給与所得だということで、私もこれはこれで正しいと思いますし、それでいいのですけれども、かなり早い時期に課税の現場において一時所得であるという判断で処理していたという報道もありまして、それが、その後変わっていったというのであれば、納税者として非常に困惑するというか、後になってそうでないと言われると大変困るということがあります。こういう判断の揺らぎ、揺らぎという言葉が適切かどうかわかりませんけれども、そういうことを防止するために、どのような策というものをお取りになっておるのか、あるいはこれから改善なさろうとお考えになっているのか、そこら辺をお聞きしたいのです。

長官
 多分ストックオプションというのが海外で最初に導入された頃というのは、その付与の目的は、どちらかと言うと給与所得では私はなかったと思います。すなわち、従業員だけではなくて広く関係者にも特に目的が明確でないままストックオプションの付与をされていました。したがって、これは多分当初においては一時所得の面があったのだろうと私は思います。
ところがその後、これはGEのような企業が一番主導された。ジャック・ウェルチ氏がはっきりと明言しておられますが、やはり企業における忠誠心をいかにして保つかという手段としてストックオプションを使い出したところから、かなりこれは給与という面が強くなってきた。特にジャック・ウェルチ氏がGEの建て直しを図るときに、日本型経営ではありませんが、アメリカの場合には長期勤務ではありませんので、短期勤務であってもいかにその間その会社に忠誠心を持たせるかということで、入ったときにストックオプションの権利を与えて従業員であった期間にどれだけ株が上がったかということによってストックオプションの利益が自分に還元されるという、いわばインセンティブ報酬の役割を果たすようになった。これを入れた時点から、多分ストックオプションの当初のいわば狙いが、完全に給与所得化していったのだろうと思います。
確かに今島上委員が言われたとおり、その変化自体についての国税庁の認識がかなり遅れた、その結果、多分多くの方々が従来の一時所得という扱いのままで処分しているのではないかという現場における誤解が走ったと思っています。
そういう意味では、先ほど次長が御説明した中の一つなのでございますが、グローバル化の流れの中でこういうストックオプションなども、ある意味では日本で始まった制度ではありませんものですから、そういういわば実体の変化というものをいかに早く察知して、それを全国津々浦々まで統一的な取扱いをするということを徹底する作業をやっておりまして、各局に審理課ないしは審理官というのを設けまして、統一的な取扱いが徹底できるように今努めているところでございます。
特にここは、今のストックオプションに限らず会計基準の国際的相互浸透という辺りは、東京局が主体でまさに国際租税回避スキームもそうでございますけれども、中心でありますが、実は最近は地方局においてもこういう話が出てきていますので、できるだけ事前照会も受けながら、できるだけ審理という面では全国で統一的な取扱いをしたいと思っています。
ただ、現実から申し上げますと、従来、例えば一番いい例がこれは国際課税では全くありませんが、資産課税などで例えばいわゆる借家権とか借地権というのは実は地域によって、とっても違っております。
例えば東京などには早くから借地権制度というのが定着しているわけなのですが、大阪などは実はほとんど借地権という発想がなく、借家制度が中心であった、それを全部東京の目で同じ借地権割合の制度を全国津々浦々でやるのがいいのかどうかという議論がございまして、そういう地域実態にあった審理というのをどちらかというと国税局では通達の中で、それを尊重する部分があったと思っています。
しかし、ここは全国統一の日本の国税でございますから、地域実態よりは現実の処理として、審理の一体化を図ろうということで、実は人事面においても相互交流をさせるというようなことを徹底して今やりだしているということでございます。
確かにいろいろ誤解があったところは、我々としても反省しているところであります。

会長
 そのほか、いかがでしょうか。
こう津委員どうぞ。

こう津委員
 今日初めて出席をさせていただきます。よろしくお願いします。
先ほど徴収部長のお話の中にありました税務行政の民間委託の話で、多分、今日、私初めてなので今までの中で御説明があったとしたらお許しいただきたいのですけれども、例えば実際に民間委託をしているような国というのはどの程度あるのかとか、それがどの程度の部分を民間委託しているのであるとか、それの問題点であるとかというようなことは何か資料としてあるのでしょうかということが1点。
それからIT化と効率化が進んでいくと、それは先ほどのKSKシステムでもそうですけれども、どんどん業務委託とかアウトソーシング化というのが進んでいくのは当然だと思うのです。そうすると、いわゆる中枢の核の部分は民間委託していなくても、実際的にはそういうふうな形になっていくというように見えるのですが、その辺の線引きというのは何かおありになるのか聞かせていただきたいと思います。

長官
 補足があれば、後で青山審議官にお願いしたいと思いますが。
海外を含めて特に徴収部分については、今日申し上げたコールセンターああいう部分を民間委託しているのは、例えばカナダですとか、そういうところが検討中と聞いています。ただ、ここは、やはり各国においても国税債権である以上、いわゆる最後の徴税権というところにかかわっているものですから、純粋に滞納整理そのものを民間委託している国というのはほとんどないのでございます。
いわゆる督促をするとか、そういう辺りを民間にお願いをする。ただ、その場合も守秘義務、ここはだれが滞納しているかという情報が万が一漏えいすることになりますと、その人自体の生涯全てにかかわる事態になりますので、この辺りをどのように担保しながらやるかというのは、それぞれの国で工夫をされているというふうに思います。
もう一つ全く違う制度なのですが、これは実はアメリカが今、法案を通してやろうとしている話なのですが、国税債権の最大25%相当額まで、納付しょうよう等の受託事務への報酬としてサービサーに支払うという話があります。これは一種の不良債権ビジネスと似たところがあります。
それから、アウトソーシング全体で申し上げますと、実は我が職場についても、かなり多くのアルバイトの方々に手伝っていただいています。もちろんこれは公募でやっているわけです。この方々には内部事務、主として発送とか、送ってこられた郵送物の封を切って、それを仕分けしたりという作業などをお願いしているところですが、やはり守秘義務というものを踏まえてやっているということです。先ほどKSKシステムでは、だれがアウトプットしたかを明確にするなどのセキュリティをとっていることを岡本審議官が説明したと思うのですが、そこはアウトソースするとしても、かなり限定的なのかなと私どもは思っています。個人情報保護法というのが制定されているわけですから、我々としてはどういうふうにチェックしながらやるか、しかし定員は増えない中でぎりぎりどこまでアウトソースできるか、これが実は今、こう津先生が言われた質問の中で、我々自体が今どこで線引きをできるか一番悩んでいるところであるということがございます。

会長
 活発な議論が尽きないところでございますけれども、ちょうど予定された時刻になっております。この機会に是非御発言をということであれば、最後の御質問をお受けしたいと思いますがいかがでしょうか。よろしいですか。
それでは審議はこのくらいにさせていただきます。本日の議事要旨並びに議事録の公開につきましては、国税審議会の議事規則によりまして、まずは簡潔な内容のものを議事要旨として公表し、議事録は完成次第公表させていただきたいと存じます。
議事録につきましては、公表前に皆様の御発言内容について誤りがないかどうかを確認させていただきたいと思いますが、議事要旨につきましては、会長一任ということで処理させていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

 それでは、以上をもちまして第7回国税審議会を閉会させていただきます。皆様、ありがとうございました。散会いたします。

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