奥村座長
 ありがとうございました。
 寺沢先生の方から何かございませんか。

寺沢氏
 岡本先生がほとんど完璧に報告してくださったので、私の方ではほとんど追加はないのですけれども、一つだけこれは説明しておいた方がいいかなという点と、それから私なりの感想を一言申し上げておきたいと思います。
 2ページに、連邦は許可、それから州は免許。あえて許可と免許の説明を避けましたけれども、聞いた限りでは、許可というのは永久に効力があるもので、そのために手数料などのお金を払わない。それから、免許というのは、一応もらうのにお金がかかるそうで、一定の期間しか有効でない。こういう違いがあるのだという説明を受けました。これは基本的なことなので、申し上げておいた方がいいかなと思います。
 それから、私なりの印象なのですけれども、いろいろなことをお聞きしまして、今回の主たるテーマがアルコール問題に関係するところがどういうふうな手段で対処しているかということについて調査するということで行ったわけですけれども、アメリカ、カナダ、どちらにしましても決定的な手はないなというのが、印象でした。決定的な手がないながらも、いろいろと取り組んでいるということは実態としてありまして、そういう意味では日本も、例えば、法規制を導入したり、あるいは関係業界が努力したり、あるいは消費者を中心とした地域というところで努力したり、それぞれがそれなりの手段でアルコール問題に取り組んでいかないと、やはり問題は解決しないだろうなという印象を強く受けました。
 それからもう一つ、手段としては決め手がないために、例えば、この報告の中で言うと、8ページにありますカリフォルニアのようなプログラムを実施しています。8ページの一番下に、違反が発生しないようにさまざまなプログラムを実施するというところで簡単な説明がありましたが、具体的にはコミュニティ、あるいは地区警察とABCとでパートナーシップを組んで問題解決に当たるのだということで、やっている六つのプログラムの紹介を受けました。内容について簡単に説明します。
 一つ目は、免許の申請者、あるいは従業員に対する教育プログラムというものです。免許の新規取得者、あるいは酒類を取扱っている店舗の従業員に対して、こういうふうなことを守ってくださいというふうな教育をする。
 二つ目は、「インパクト」と言っていますけれども、「アルコール・ビヴァレッヂ・コントロール」の担当官と、それから地区警察が組んで実地検査をする。その場合に違反があれば、いろいろ教育をするという手立てを考えるというものです。
 三つ目は、地区警察でのおとり捜査。これは説明にありましたけれども、未成年者に密かに売っているのではないかということを確認するため、おとり捜査もやっています。
 四つ目に、地区警察に対する補助金という制度がありまして、アルコール当局からお金を出して警察官自身を教育するというふうなプログラムがあります。
 五つ目として、「リテール・オペレーティング・スタンダード・タスク・フォース」というものがありまして、免許取得者に対して、ごみ処理、落書き消し、照明の設置、近隣住環境の質を落とさないようなことなどをするようにというプログラムがあります。
 六つ目に、DSTと言いまして、これは、その免許取得者が法令を遵守している一方で、人々が酒類を買いやすいと感じている店があった場合に何となくあそこは違法に売ってそうだということを暗示させるような、そういう場合には、おとりを使っていろいろな注意を促すというふうなプログラムがあります。これぐらいカリフォルニアではいろいろと具体的な施策を用意してやっています。それも言ってみれば、コミュニティと地区警察とでタッグマッチを組んでプログラムを実施している。これからそういうふうなこともやる必要性があるのかなという印象を受けました。
 それから、報告しているときにお感じになったと思うのですけれども、カナダでもアメリカでも、NPOというものの活動がかなり活発になってきていますね。これはいろいろ話を聞いているプロセスで、大体10年前くらいからNPOが活躍するようになってきたということでした。どこのヒアリング対象に行っても、大体そのようなことを言っています。ですから、供給サイドだけでなくて、飲む立場の方からもこれからいろいろ活動しないと、全体にはアルコール問題というのは治まらないだろうなという感じがしました。

奥村座長
 ありがとうございました。御議論をいただく前に、皆さんのお手元の資料でウォール・ストリート・ジャーナルの関連記事がございますので、事務局から御案内していただけますか。

土屋課長補佐
 課長補佐の土屋でございます。お手元に配付いたしました、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の9月14日版記事について、簡単に概略を御紹介させていただきます。これは、私どもがアメリカから帰国した後の記事でございます。
 後ろの方にA3版でオリジナルを付けてございます。枠で囲んだところの部分、それから2枚目の部分全体がこちらのアルコールに関する記事でございます。
 お手元の和訳のところですけれども、辞書にも載っていない言葉もあるものでから、若干誤訳がありましたらお許しいただきたいと思います。
 お手元の資料のaのところですけれども、要約しますと、ロード・アイランド州に住む一家の子供さんが夜通し卒業記念パーティーを開こうという計画を御両親に持ちかけて、それを聞いた御両親は、それはちょっとまずいのではないかということで、パーティーをするならば自宅の裏庭でやるように子供に説いたということです。そして、それに従って自宅の裏庭でパーティーを始めたわけですけれども、明け方4時半ぐらいまでやっていて騒々しい状態だったので、警察が出てきてしまい、その場はお開きになったのですが、そのことに関していろいろな議論が起こったというふうなことが書かれております。
 お手元の資料ですと、eからf、gの辺りですけれども、ここに御両親や、専門家の意見、それから酒類業界の意識等に関するくだりがございます。
 また、次のページで、hのところですけれども、同じような経験のある方からも、やはり意見を聞いております。hの下から4行目のところですけれども、親たちは偽善的なものだと考えていると書いてあります。なぜなら、そういう親の何人かが高校や大学時代に自分たちの飲酒にまつわるエピソードを自慢げに語っているからで、この周辺に住む親たちは、法律的な異端派となることと、責任を負うことを恐れているだけなのだというふうなことを言っております。
 そのほかにも、法律で規制するというふうな動きもあったようですけれども、議論の末、法案自体は不採用になったというふうなことが言われております。
 最後にkのところですけれども、このウォール・ストリート・ジャーナル紙では、最後に「子供達はばかげたことをするものだ。しかし、誰だって子供達がそうしている間に殺されるのは嫌なのだ。」ということで締めくくっております。
 次ページのところ、3ページ目ですけれども、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が実施いたしましたアンケートの結果が載っております。アンケート結果では、上半分の三つと下半分の三つに大きな差が見られるというふうに感じられます。このアンケートをとった結果から見ても、いろいろな意見があるのだろうというふうなことが窺えるところでございます。
 簡単ではございますが、私からは記事の紹介をさせていただきました。

奥村座長
 ありがとうございました。経済をおやりの方は御承知のことなのですが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は経済専門紙で、かなり水準が高いもので、その新聞の一面、トップ記事に当たるところで、長文のアルコール問題を取り上げております。こういったことからもかなり関心が高いテーマになっていることが窺われるのではないかと思います。
 それでは、前回、山下先生、田中先生からヨーロッパの状況を御報告いただきまして、本日、アメリカ、カナダの御報告を岡本先生、寺沢先生からいただきました。私どもにとりましては、海外の状況という大変有益な情報を得られ、また、分析していただいた情報も得られましたので、改めて4人の先生方に感謝申し上げたいと思います。本日の御報告のこと、そして、場合によりましては前回のヨーロッパのことなどを合わせまして御検討いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

岡本氏
 今回、全体を通しまして感じたことを、先ほど言えなかったものですから、ここで申し上げさせていただきたいと思います。
 寺沢先生がおっしゃったこととかなり近いこともあります。それから今配られたものの中にも、出てくるのですけれども、アメリカの場合、コミュニティの力、とりわけNPOの力といいましょうか、そういうものが非常に大きいということが先ほどから言われております。先ほどの説明で出なかった組織として、今配られた訳語のiのところの3行目のMADDという組織があります。この組織は、実は訪れた11カ所のうちの半分以上で議論に出てきた組織です。
 この組織がどういうものかいうと、「マザーズ・アゲインスト・ドランク・ドライビング」で、酔っ払い運転に反対する母の会とでも訳すのでしょうか。このMADDは、1980年にできた組織で、自分の子供を飲酒運転による交通事故で亡くした母親たちが集まってできたものです。出発したのはサクラメントいうふうに説明されていましたけれども、カルフォルニアから瞬く間に全米に広がりました。そういう親が多いということなのでしょうか。非常に広い組織力と、それから強力な力を持っていまして、先ほど飲酒年齢が21歳に引き上がったという話をしましたけれど、これは実はこの組織がなかったら、多分成らなかっただろうという組織なのですね。どういうことかといいますと、この組織が連邦議員に、各州でそれぞれ圧力をかけます。実は1980年代、連邦政府から州政府にハイウェイも含めた道路整備のための多額の補助金が出ておりました。そしてこの組織が中心になって、それぞれの州が飲酒年齢を21歳に引き上げないと、その補助金を削減するという法案を出させて、それを成立させのです。こうしてそれぞれの州では、しぶしぶなのか積極的なのかわかりませんが、最終的に1980年代の半ばに、すべての州が21歳になりました。それまでは州によって20歳であったり、21歳もありましたけれども、19歳のところもあったような記憶していますが、そういったところが一律に、全て21歳に引き上がったということです。今、アメリカでは21歳にならないとお酒が飲めないというふうになっていますが、そういう組織が動いたというのがもともとのことなのです。
 この組織については、行く先々でかなり議論の中に出てきており、本当はそういうところにも行くべきだったのかなと個人的には思っているわけなのですけれども、そういうグループが、多分、日本では一番欠けている部分ではないかと思います。
 以上です。

本間氏
 MADDの始めのDは何の略ですか。

岡本氏
 「ドランク・ドライビング」。飲酒運転です。この組織ではホームページも作っております。そこにアクセスするといろいろなことが出ております。

奥村座長
 それでは、御自由に御発言いただきたいと思います。
 カリフォルニアのABCには、450名の職員の方、200人の「インヴェスティゲイター」がいらっしゃると書いてあるのですが、これはアルコールだけの分野でこれだけいらっしゃるのですよね。

岡本氏
 そうです。アルコール関連だけに限っての数です。

奥村座長
 何かものすごい人数の多さのように感じてしまうのですが、いかがでしょう。

岡本氏
 そのように説明を受けました。

奥村座長
 日本ではこういう「インヴェスティゲイター」のような公務員の方々というのはほとんどいらっしゃらないと考えていいのですか。

土屋課長補佐
 国税庁の組織は、全国で5万6,000人ぐらいおりますけれども、その中でお酒を担当している人は全国で1,000人ぐらいおります。すべてが取締りをするというわけではございませんが、全国で1,000人という規模からすれば、カリフォルニアは人口で言っても3,300万人ぐらいの都市ですから、結構多いかなという感じもしないわけではございません。

奥村座長
 念のためですが、カリフォルニア州の酒類管理局というところは、酒税に関して税金の徴収もやっていらっしゃるところなのですか。今、国税庁と比較なさいましたが、国税庁の場合は私の理解ではかなりの方が徴税業務にかかわっていらっしゃるのだと思っていたのですが、カリフォルニアの場合、この450名の方は徴税業務にかかわっていらっしゃる方が入っているのですか。

土屋課長補佐
 徴税業務は別のところでやっていると聞いております。

奥村座長
 機能が違いますよね。

土屋課長補佐
 はい。ですから、単純な数字だけで比較したら多いかなという感じはしますけれども、実際のその業務の面からすると、非常に日本の方が少なくなっているというふうに感じられます。

矢島氏
 よろしいでしょうか。前回のヨーロッパの報告をお聞きいたしまして、そして本日アメリカ、カナダの報告を聞いて、さらに実感というか確信的に思ったことが一つございます。それで、こういうふうに思って、それは当たっているのかどうかということなのですが、アルコール問題というふうに言っても、やはり中心は青少年問題なのではないかということです。それから、NPOの活躍が日本では欠けているようで、向こうは活発であるというふうにありますが、それもやはりアルコール関連のNPOの活躍の中心がやはり青少年問題なのではないでしょうか。
 更に、広告や販売店への教育などに関しても、青少年対策が中心なのであって、結局は、やはり青少年問題としてのアルコール問題というのが極めて大きな問題として、アメリカ、カナダでもなされていると、こういうふうに解釈していいのかどうかということでございます。
 それから、2点目なのですが、前回のヨーロッパでは、その青少年の問題として「アルコポップス」とか、つまり甘いサワー系の飲みやすいものが非常に急増しているということと、それから、やはりもう一つの問題は、「ビンヂ・ドリンキング」。この二つの報告があったのですが、今回のアメリカ、カナダでは、そういったような状況はあったのかなかったのか、その2点についてお聞きしたいと思います。

岡本氏
 4人で答えれば4人とも違う答えをするかなと思います。最初の点ですけれども、こちらからの質問が、要するに未成年者についてということもありまして、それに対して答えてくれた部分も多分あると思います。ですから、飲酒の問題というのは、必ずしも未成年者の問題だけではなくて、例えば、アルコール依存症者の問題とか、暴力事件とつながってくるとか、そういうことももちろんあるのでしょうけれども、多分こちらからの質問というのが比較的それに集中していて、その質問に答えてくれたというところがあるので、何となくこの未成年者の問題がクローズアップされているかなとは思います。ただ、大きな問題であることは事実ということであると思います。
 それから第2点の方ですけれども、「ビンヂ・ドリンキング」というのが問題になっているかということです。多分、先ほどの新聞、これでもそうでしょうけれども、何かにつけてやはり日常的に、これは日本でもどこかの大学の卒業記念のパーティーか何かで、騒いでえらいことになったというのが、確か今年ニュースになったりしていましたので、やはり若者の飲酒の延長線上でそういう飲み方というのが問題になっているとは思いますが、今回の調査のときにそういう「ビンヂ・ドリンキング」ということについて、あまり話題には上がりませんでした。

矢島氏
 それから「アルコポップス」についてはどうですか。

土屋課長補佐
 アルコポップスのような個別の話はやはり出てきませんで、アルコール飲料であれば、これはすべてアルコール飲料なのだからというふうに基本的には割り切って考えていると思います。

井岸氏
 先ほどの奥村座長の質問にちょっと関連するのですけれども、昔なつかしい専売という言葉が出ているのですが、この専売の場合には、各州の酒類管理局というところが全部管理すると考えてよろしいのでしょうか。それで、その場合には、当然免許とか何とかそういうことは、逆に専売ですからあまり関連がない。ということは、未成年者の取締りや何かに重点が置かれている、そういう酒類管理局というふうに考えてよろしいのでしょうか。
 また、それに関連するのですが、先ほどカリフォルニアでは200名、ニューヨークでは30名の「インヴェスティゲイター」が行政違反について、ニューヨークに至っては何も武器を持たないで取締りをやっているということで、そうすると、具体的にはどういうことをこの人たちはやっているのでしょうか。免許の管理体制というか、そういったことについては、専売制が敷かれているところではどういうふうになっているのでしょうか。

岡本氏
 専売制。ページ数で言えば、2ページのところでしょうか。基本的には州が直接販売しているという州営店というか直営店と言いましょうか、そういう形だと思います。ただ、ここではビールは普通除かれるということです。

井岸氏
 直営店だということになってくると、免許の管理とか、あるいは取締りなんかといっても人数が少なくて済むというふうに単純に考えてしまうのですが、いかがでしょうか。

土屋課長補佐
 実際に行った州がカリフォルニアとニューヨークなものですから、専売州に行っておりませんで、詳しい話は聞けませんでした。訪問した州の管理局からは、専売州があって、そこのところは専売的にやっているというところまでしか聞けませんでした。
 人数についてですけれども、カリフォルニアでは先ほど岡本先生から説明されたとおりで、実際、警察やコミュニティとも連携してやっているわけなのですが、ニューヨークでは、概要だけしか聞けませんで、実際の取締りは警察官がというふうなところで終わってしまいました。

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