日時: 平成16年6月8日 13:30〜15:30
場所: 国税庁第一会議室
出席者:
懇談会メンバー | 奥村 洋彦 座長 |
田中 利見 座長代理 | |
井岸 松根 | |
須磨佳津江 | |
寺沢 利雄 | |
本間千枝子 | |
御船美智子 | |
矢島 正見 | |
説明者 国税庁 | 村上次長 |
寺内酒税課長 | |
濱田鑑定企画官 | |
若尾酒税企画官 | |
初谷酒税課課長補佐 | |
小森酒税課課長補佐 | |
亀井酒税課課長補佐 | |
本宮酒税課課長補佐 | |
前田酒税課課長補佐 | |
土屋酒税課課長補佐 |
奥村座長
それでは、始めさせていただきます。本日は第18回の懇談会ということになりました。
懇談会では様々なテーマについて、知見をお持ちの方からお教えいただいておりますが、本日は、社会的要請への対応のあり方を中心とした酒類業界の現状と課題というテーマで教えていただき御議論させていただくという会合でございます。
最初に、全国卸売酒販組合中央会の会長でいらっしゃいます國分様、専務理事の高氏様からお話をいただきたいと思います。
大体、15分ぐらいお話をいただきまして、あと15分ぐらい御質疑させていただくということでお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
國分会長
ただいま御紹介をいただきました全国卸売酒販組合中央会の会長をいたしております國分でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
ここ数年来、酒類業界は大きな環境変化の中にございます。お手元に配っております「酒販業界の現状と課題」という資料に書いてございますが、小売業態の変化を、売場の変化で見てみますと、ここに掲げてございます表のような感じでございます。
1999年、つまり5年ほど前、一般酒販店のシェアは45.2%ございましたけれども、酒販業界紙による2004年予測シェアは17.0%になっております。スーパーマーケットのシェアが8.9%から32.0%に、コンビニエンスストアのシェアが11.6%から20.0%に、ディスカウントストアのシェアが15.5%から17.0%に、業務用酒販店のシェアが13.2%から12.0%に、そのほかの百貨店や生協関係のシェアが5.6%から2.0%にというようなドラスティックな変化予測が出ているところでございます。今後さらに拡大が予測される業態といたしましては、ドラッグストア、あるいはホームセンター、スーパーセンターというような業態が予測され、このことにより大きく変化してくるというふうな感じでございます。
その要因といたしましては、大店法、酒販小売免許の緩和、ワンストップショッピング志向、車利用のショッピング志向、購買行動の二極化というようなことがございます。このほかにも、少子高齢化というようなことがございますので、宅配ビジネスや、通信販売というようなものも大きく出てくるのではないかという予測がございます。
価格でございますけれども、各お店の大型化に従い、大量仕入れ、大量販売が可能になり、外資の侵攻を待つまでもなく、だんだんと安くなってきているというのが現状でございます。資料に小売の粗利益率を載せておりますが、おおむねこのようなところではないかなと思っております。
このような状況の中で、我々卸売業界がどういうふうになっていったかということを、「酒類卸企業数並びに酒類卸売販売高の減少」という表に表してございます。平成8年の企業数が1,623者ということでございましたけれども、年々これが少なくなりまして、平成13年の実績で見ますと1,087者、売上販売金額で見ますと、平成8年の5兆7,240億6,300万円から4兆5,969億600万円と大きく減ってきております。平成8年から13年までに536者の卸売企業数の減少があったということでございます。
販売業者数を見ますとこのようになっておりますけれども、業界の再編成というものが進んでおり、再編成をしていった業者がございますので、実際に、もとからの経営者の減少数というのは、さらに相当数いるのではないかと考えております。
また、最近の特徴といたしましては、業界再編成ということで、特に総合商社の進出が大きいということが言えると思います。中間流通は卸の業界でありましたけれども、中間流通、あるいは小売、あるいは飲食業界の方まで系列を進めているというのが商社の実態ではないかと考えております。
資料の方に酒類の販売業者倒産の高原状態化というのを書いておりますが、負債総額もここに書いてあるとおりでございまして、まだまだこういう再編成並びに淘汰というものが進んでいるというのが現状ではないかと思います。
卸に求められる機能は、最近非常に複雑化しておりまして、より高度なサービスレベルが要求されるということであります。正確性、迅速性、品質保証というようなところまで及ぶわけでございまして、この諸外国の卸売業者と比べましても、日本の卸売業者、中間流通の機能というのは非常に優れていると思います。その機能を発揮できない企業は、徐々に再編成の波に巻き込まれ、今申し上げましたような形に推移してきているというのが現状でございます。
全国卸売酒販組合中央会は、昨年、設立から50周年を迎えまして、これから新しい酒類業界に対するビジョンというものを作成しようというようなことで、お手元にお配りをいたしました「これからの時代の酒類事業のあり方」というものを刊行させていただきました。これは、社会的管理体制の整備が必要であるという立場からまとめられております。
時間もありませんので、これについてごくかいつまんで御報告させていただきたいと思います。酒類の特殊性、一般の商品とはあくまでも違うというようなところから論を起こしておりまして、社会的要請の側面といたしましては、国民の健康維持面での政策、資源・環境面からくる政策、産業の健全発展政策面というものを中心にまとめております。
新しいビジョンを策定する上で重要なこととしては、酒類が一般の消費財に比して、致酔性、依存性、それから担税物資という特性を有しているということでございます。御承知のとおり、お酒は適量に飲酒すれば生活を豊かにするということになるわけでありますけれども、飲み過ぎますと、社会的な弊害が非常に多くございます。健康への弊害や、犯罪にも結びつきます。それから、交通事故等にも結びつくというようなことで、社会的弊害も出てくる商品であります。
時代・環境の変化に伴って、酒類事業には、新たな対処すべき社会的課題が発生しております。国民保健政策・産業政策・財政政策・資源環境政策、それに治安政策の再構築というものが必要であろうということでございます。
それから、海外主要国におけるお酒の事業の運営・規制を見ると、このところ日本と比べて非常に大きな差異が出てきております。この点につきましても、ほかの国との差を「主要国における酒類事業の社会的管理体制一覧」という表にまとめて、この冊子に載せております。
この「これからの時代の酒類事業のあり方」の中には、国民保健政策、資源・産業政策、酒類業界の団体の再整備というような観点から、メーカー、流通業、酒類業組合、行政等に対する20ぐらいの提言を記載しているところでございます。
具体的な提言の内容についてですが、まず国民健康維持政策といたしましては、健康への影響の注意表示の義務化、おとり商品化の制限、広告量の制限、電波媒体広告の制限、価格訴求広告の制限、大容量商品の制限、対面販売、新規免許業者への啓発体制化がございます。それから資源・環境対策といたしましては、容器リターナブルの推進や、そのほかにも省資源等を考えますと、物流機器の標準化というようなものも、この資源環境対策の1つになってくる部分があろうかと思います。最後に産業政策といたしましては、現在、酒類業界の政策運営については財務省の管轄というようなことになっておりますように、今まではやはり財政物資を扱うという政策の比重が多くなっていると言えまして、そういう意味からも、この酒類業者の経営の健全性というようなことも考えなければいけないと思います。その中には、公正取引委員会への措置請求制度、免許停止制の導入、酒類業組合法第42条(合理化カルテル)の活用、経営健全化指導、価格体系の見直し刷新、貸倒に係る酒税の還付制度、酒税と消費税の重複課税の排除がございます。
表示の問題を健康の面のところに書かせていただいておりますけれども、「酒税がこのような形でこの商品にかかっている」ということについては、やはりラベルの上に表示をした方がいいのではないかというようなことも考えております。
それから、事業団体体制の刷新ということで、事業内容の刷新、卸売酒販組合組織の見直し、それから酒類業中央団体連絡協議会の機能の再開発がございます。酒類業には日本酒造組合中央会、ですとか、日本蒸留酒酒造組合ですとか、7つのいろいろな団体がございますけれども、今申し上げましたような社会的要請へ対応していく上で、これらの団体の役割の見直しを行い事業内容の刷新等を行っていく方がいいのではないかということでございます。
それから、酒類事業法(仮称)の制定というようなことを書いております。
それから、行政への意見・要望といたしましては、「酒税法に基づく運営は基よりであるが、主管官庁として、特に産業政策にも十分なる指導を求む」ということでございます。具体的には、全国卸売酒販組合中央会が策定した新ビジョン「これからの時代の酒類事業のあり方」に記述しているとおりでございますが、健康への弊害、社会的な弊害があり、財政物資であるというような特殊商品を扱うということでございますので、やはり酒類行政の一元化、つまり生産から消費されるまでの行政政策というものを、縦割り行政ではなくて横割りにした、一本化した産業政策というものが求められるということでございます。現在、お酒に関し、厚生労働省、文部科学省、総務省等で7省庁連絡会議をやっておるところでありますけれども、省庁が連絡するだけでなくて、一本化した新しい体制というものが必要ではないかということで、酒類事業法(仮称)が現在の酒税法や酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律等に変わって、お酒を一元管理できるような体制にしたらいいのではないかと行政に対し提言しているところでございます。
卸のと申しますか、中間流通の立場と申しますのは、生産者と小売の間にあり、非常に微妙な立場でございます。その中で商売をしているということですので、環境に対する対応というのがなかなか難しい立場にございます。したがって、市場正常化と申しますか、市場秩序というようなことになりましても、やはり何らかの規制の中でそれを求めていくというようなことが必要ではないかと考えております。
まとめといたしまして、酒類事業のあり方の理念を十分に理解するとともに、酒類を適時、適切な価格、適切な方法で、適量生産して販売するということは社会的責任であるということを、生産者から小売まで、酒類業者全体が自覚し、酒類事業に当たるということが必要ではないかと考えております。量と申しますか、売上高やシェアに代表される評価ではなく、安心、安全、さらには社会性、環境、消費資源というものに配慮した評価ができるような業界にしていった方が、これからの産業、行政、酒類業界の方向としてはよろしいのではないかと考えまして、「これからの時代の酒類事業のあり方」という、1つの卸のビジョンを作らせていただいたということでございます。
時間がございませんので、中身についてはお話しできないところでありますけれども、後ほど、御覧いただいて、御批評を賜れば幸いでございます。
どうも御清聴ありがとうございました。
奥村座長
どうもありがとうございました。
卸売業界の現状について整理してお話をいただきました。委員の先生方から何かお尋ねになられたいことがございましたらよろしくお願いいたします。
須磨氏
単刀直入に伺いますが、今、通流業界に大分変革が起きている中で、卸売の皆さんの役割は何だと考えていらっしゃいますか。
國分会長
卸売業界は中間流通で機能を果たしていかなければいけないということでありますけれども、卸の機能といたしましては、生産者と消費者の間にあって、これをいかに最適流通に持っていくかということであろうと思っています。
具体的に申し上げますと、生産されたものが100%消費されるということになりますと非常に良いわけでありますが、現在は造ったものが全部売れるわけではなくて、売れるものも売れないものもございます。その中で廃棄されるものもありますし、いろいろとロスが大きいわけです。生産消費の調整作用を働かせ、それをいかに最小化するかということがございます。それと、生産されたものが消費されるまでをいかにローコストで、適正流通ができるかというようなことを考えております。その中には、物流ですとか商流ですとか、リテールサポートですとか、いろいろな機能が入ってまいりまして、非常に複雑でありますけれども、そういう役割を担っていると思います。
皆さんがお店で買い物をされるときに、お店にあるものが全て売り切れるとは限らないわけですが、それを全部売り切れるようにすることが重要でございます。特に最近は、鮮度管理が重視されておりまして、生産の日付や賞味期限がついておりまして、賞味期限を過ぎたものはもう売れないという体制になっておりますから、いかに期限内で消費されるような無駄のない体制を作るかということでございます。そのためには、商品を1箱ずつ運ぶのではなくて、1個ずつ配送しながら調整していくという大変な機能も補わねばならないということです。
須磨氏
既にそういった調整機能を発揮していらっしゃって、例えばアドバイスなどもされているのでしょうか。
國分会長
もちろんでございます。今はもうそれが普通になってきております。
奥村会長
ほかの先生方いかがですか。
御船氏
最後の方に行政への要望として、一本化した産業政策が求められるというようなお話がございましたが、一本化すると、全国卸売酒販組合中央会、あるいは卸売業にとって、どういう利点が導かれるのでしょうか。
國分会長
それは卸売業界ということではなくて、広くお酒の産業政策としてそういうことが望ましいのではないかということでございます。卸売業界は、今お話したような中間の仕事をするわけですから、それを効率的に行えるようにいたしますけれども、やはりお酒を扱っていく上で、国民の健康でありますとか、それから社会的弊害を除くとか、財政物資であるとかいったようなことを考えていきますと、一本化していった方がいいのではないかということです。未成年者飲酒の問題等いろいろなことが出てきているわけでございますので。
奥村座長
資料に、日本のスーパーマーケットは28.5%の粗利益率で、酒販店は21.0%の粗利益率であると書いてありますけれども、これは数字だけ見ていますと、スーパーマーケットの方がお酒を売ることによりもうかっているように思われますが、そういう理解でいいのでしょうか。あるいは、スーパーマーケットは、これから値段をどんどん下げて、もっとシェアを上げてくる可能性もあるというようなふうに読み取った方がいいのでしょうか。
國分会長
この数値は調査機関の発表数値でありますが、意味するところは、外資の一例としてウォルマートの粗利益率は、日本のスーパーマーケットのそれよりも低く、日本のスーパーの価格水準は今後もより一層厳しくなるであろうということを示しており、一方、酒販店の粗利益率は取扱商品の違いもあり、スーパー並の粗利益はあげておらず経営が厳しいことを示しております。
奥村座長
するとスーパーマーケットの方が経費をかけているかもしれないという読み取りも必要だということですか。