大柳課長補佐
 情報の提供を受ける仕組みぐらいでしょうか。独占禁止法の所管はやはり公正取引委員会ですので、そちらの方で独占禁止法違反ということで告発するなりして処罰され、そういう情報が公正取引委員会の方から得られれば、うちの方では取消し等の手続に入ることができます。

水谷氏
 公正取引委員会の決定に基づいて、それで処分しましょうと、処罰しましょうと、こういう意見ですね。

奥村座長
 今のご意見はそうです。

水谷氏
 公正取引委員会の決定もかなり過激と言うとしかられますけれども、問題が多いと言われていますよね。もうちょっと厳密にやるべきじゃないかという意見と、そんなにできないんじゃないかと、両方意見が出ているような気がするのですね。それじゃあ生ぬるいからもうちょっとしっかりと、酒税の方でも、国税の方でももっとはっきりした方がいいという、こういう意見でしょうけどね。本当に今、独禁法違反というのがお酒の面でありますか。何かございますでしょうか。

前田企画専門官
 今あるのは警告ですね。行政指導としての警告というのは昨年ありましたけども、独占禁止法違反で処罰されたというのは今のところありません。

水谷氏
 公取もなかなか慎重ですよね、これやるの。不当廉売ですよね。不当廉売については、かえって消費者の利益を損なうんじゃないかという観点があるものですから、なかなか難しいと彼らも考えているのじゃないかというように思いますけどね。ちょっと私もその辺ここまではっきり言うべきかどうかというのはよくわかりませんね。ここまで言う必要あるのかなと。公取がやればそれで任せておいてそのままでいいのではないかと、むしろ。そんな感じなのですけどね。公取がどこまで行ったらどうするかということまで決めなきゃいけない、なかなか大変なんじゃないかなと思うんですけどね、行政として。

戸田酒税課長
 不当廉売について、過去数回の警告があったのは事実でございます。ただ、私どもいわゆる酒類行政をやっておりまして、現在問題となっているのは不当廉売よりも、むしろ差別的な取り扱いの方でございまして、例えば、正当な理由がないのにある一定の安売り店にのみ大量のリベートを出すことによって、周辺の競争環境を悪化させるというところでございます。実は、この認定は不当廉売よりも証拠の収集が難しいものでございます。ところが、これを放置しておりますと、例えば、極めて安易に売らんかなという安売り競争を行った結果、売れば売るほど自分のところにどんどん、他の人と違う差別的といえるリベートが入ってくるものでございますから、そういうふうなことが出てきます。これは独占禁止法の世界でなかなか難しいものでございますから、私どもといたしましては何らか酒税法あるいは酒類行政の世界で何かできないだろうかなというふうに思ったところでございます。

奥村座長
 宇賀先生、先程ほかのテーマでとおっしゃったのは、この3とか4に関わるところでございますでしょうか。ぜひお願いします。

宇賀氏
 今の点なんですけれども、今、規制緩和を進めて、事前規制をできるだけなくしていこうと。他方で違反があった場合、ルールをしっかりしてその制裁をしっかりやっていきましょうという、そういう大きな流れの中にあるわけで、そういう中から言いますと、こういう独禁法違反があった場合に、仮に独禁法の中にいろんなサンクションの規定、課徴金ですとか排除措置とか、そういったものがあるわけですけれども、どうもそれだけでは十分でないと。課徴金についても余り不当に違反行為で得た利益を召し上げるという、そういう性格のものですから、十分な抑止効果が必ずしもないし、他方で刑事的な制裁の面でも、かなり最近積極的にやる方向になっていますけれども、実際問題として告発まで至るというのはなかなかマンパワーの問題もあって難しいわけです。
 そういう中で最近、行政制裁のあり方を考える際に、例えば、免許とか許可とか、そういうものを撤回するとか、あるいはいろんな参加資格を失わせるとか、そういった形での行政的な制裁の方が実効性が上がるのではないかとか、いろんな場面で言われているわけです。独禁法違反の場合も、ここでは罰則を受けた者となっていますけれども、罰則ですと刑罰とそれから一部独禁法の中に過料がありますけれども、なかなかこれだけだと、そもそもこれに該当する場合がほとんど出てこないと思うんですね。ですから、罰則だけじゃなくて、例えば課徴金を受けた者とか、あるいは審決でも、例えばどういう審決があったとか、そういったものも含めてそうしたものに対しては免許を撤回するとか、あるいはそこまで行かなくても一定期間営業を停止にするとか、あるいはもし更新制を導入するのであれば、その後一定期間免許資格を与えないとか、そういった形でのサンクションというのがやっぱりないとうまくいかないのではないかと。また、なかなか実際問題としてそこまで行くケースというのは限られていますけれども、そういう規定があるということだけでも一定の抑止効果があるんではないかというふうに思います。
 ただ、じゃあ現行の酒税法の中でそれを入れられるかというのはちょっと微妙な点がありまして、現行の酒税法というのは目的ではありませんけれども、酒税の確保ということを目的としていますので、そういった公正競争の確保とか、そういったものを入れていくなり、あるいは今後免許の付与の関係でいろんな社会的な規制の問題も入れていくということになると、この法律自身少し見直しして、酒税の確保というところに焦点を合わせるんじゃなくて、もっと広くいろんな目的を取り込めるような形のものに再編成するといいますか、そういうことをやっぱり考えていく必要があるんじゃないかなというように思います。

奥村座長
 今、的確なご指摘いただいているんですが、前何か酒税の確保だけじゃなくて、何か文言を追加したとおっしゃっていましたよね。

戸田酒税課長
 それは財務省設置法でございます。酒税法の方は変わっていないです。

奥村座長
 そうすると、この文言の追加を検討すべきであるとお書きになられたときには、今、宇賀先生がおっしゃったような法律改正のところも一応念頭に入れているわけですか。

戸田酒税課長
 幅広くご意見を伺いたいということですので、法令改正も念頭には入ると思います。

奥村座長
 水谷先生は今の宇賀先生のご意見に対して何かございますか。

水谷氏
 実際、ここまで強く書いた方がいいかどうかということですけどね。行政というものはいかにあるべきかということとの関係なんですけれども、所詮最終的には裁量が必要だと、私は行政について思っているのですよ。大きな流れとして、行政はできるだけ透明性にと。明示されない場合は行政はやっちゃいかんという話がありますけれども、私はそうでもないと思っているのです。最終的には行政判断というのがある。本来、この酒業だけじゃありませんけれどもね、本当は社会のためにプラスになるようなことを企業としてやらなきゃいけないわけですね。にもかかわらず反社会的な動きが出てきたときにどうするかというために法律があるのだと。ですから、法律というのは最低にしておくべきだという気持ちがありまして、法律は最低限だから、じゃあ法律だけ乗り越えればいいのかと言いますと、そこに行政という余地があるのだと。それはもう基本的な考え方としてそうでなきゃ社会が成り立たないというふうに私はとっているのですね。そういう点では最低の法律だから、法律が余り全体に出るというのは非常にぎくしゃくしてよくないんじゃないか、規制というのはできるだけ小さくしておいた方がいいんじゃないか。そして、行政の方でやっぱりいろんな指導が出てくるというのは今後ともやっぱり必要なんだと。だから、行政措置を少なくするために法律で全部書き込めというような動きがありますけれども、余りぎりぎりに書かない方がいいんじゃないかと。こういう考え方を私自身は持っているということなんです。ですから、ここでも結果を自主的に公表するのと透明性を高めるということも書いてありますけれども、そういう反社会的な動きをやっている会社だよということだけで制裁は十分出てくると。行政がしゃしゃり出なくてもいいのではないかと、こういう具合に思っていると。そして、過当競争でつぶれるところがあればつぶれていいんじゃないかと。それはもう余分だということなんであって、過当競争で免許が多過ぎるから免許を減らそうというところまでやらなくていいんじゃないだろうか。むしろ追加して免許をまた出そうとしないというだけでいいんじゃないか、行政側は。そんな具合に思っているんですけどね。

奥村座長
 今、コンセプトをおっしゃったんですが、具体的に行政をやる現場を考えますと、何かこういうことを明記しておかないと、免許の取消しとか更新しないとか、できないわけですか。ちょっとその辺の現場のことをおっしゃっていただけますか。

大柳課長補佐
 酒税法上免許の目的は、酒税法上も明確ではないのですが、酒税の保全ということになっておりますので、社会的規制やその他の目的から免許をとらえていくときには、目的のところは明示していくという方向性は必須だということになろうと思います。

奥村座長
 先程水谷先生が、取消しというのはきついけれども、新しく出さないんだというのはいいんじゃないか、追加的に免許を与えないということはいいんじゃないかとおっしゃったことと、それから宇賀先生の方から、もし更新制のようなのが導入されれば、1回与えた免許はずっと永久使えるんじゃないよと、何年かに1回チェックしますよというお言葉もあったんですが、その2つを組み合わせますと、実質的にこの独禁法違反である何らかの罰則を受けた者に対しては、更新制さえ入れておけば事実上免許の取消しが可能になってきますね。

大柳課長補佐
 それは可能だと思います。取消しという手続が非常に行政にとってもある意味では負担が大きいんですけれども、更新制ですと、ある程度点数制みたいなものにして、そういったものを加算して何点になったら免許を更新させないということもできると思います。そういった手法はほかの法律で導入されているものもあると認識しております。

奥村座長
 水谷先生はそういうのに対しては強いご異論はないということですね。

水谷氏
 私もそれでいいと思いますね。あとは更新のことがありますね。更新について、もしそれほどめちゃくちゃな手数でなければ、そういう方法は1つだなという具合に思いますね。ですから、そういう方法があれば余りここまで書き込まなくてもという、そういう感じなんですけどね。

奥村座長
 戸田課長はいかがでしょうか。

戸田酒税課長
 今、大柳が申しましたけれども、更新制の議論というのは、一番典型的なのは運転免許であろうかと思いますが、そういったことを入れるということについては法的には可能だろうと思います。但し、恐らくその場合においては、先程宇賀先生がおっしゃっていますように、酒税法の目的を変える必要はあるとは思います。一応、法律の大改正にはなるかと思います。

奥村座長
 いずれにしても免許取消しという文言を入れたときも大改正は必要なんですよね。ですから、どちらでも大改正は要るので、それをよりコストを少なく、自由化の流れとある程度整合的な方向を向いてやろうとするとというので、もし更新制というところでチェックが可能だったら非常に合意が得られやすいことというのでしょうか。
 山下先生は今の点でご意見ございますか。

山下氏
 ここのご提案の趣旨というのは免許取消しの規定の中に独禁法違反で、これは刑事罰のことを指しているんですかね、刑事罰を受けたことという取消し事由をここの文章に書いてあるような形で明確に規定するということなんでしょうか。あるいは、私はもっと法令違反行為があって、それが非常に悪質なものという、もうちょっと一般的な取消し事由として書けるのかなと思っていたんですが、今の法を新しく改正するのはいわゆる事が難しくなりつつあるんですかね。

戸田酒税課長
 あるいは法のテクニックの問題になるのかもしれませんが、今の更新、あるいは点数制というものを頭に置いた場合に、ある一定の営業停止期間を入れるような場合、それは行政罰でございますから、それを執行するための傾向と透明性みたいなものが必要になってくると思います。ということは、独禁法の世界において行政指導の範囲に留まっています注意だとか警告に連動して、営業停止を命じたり、あるいは点数を減点するということについては、やはりそういった意味からなかなか難しいんではないかと思うところでございます。仮にこれを入れるとすると、やはり独占禁止法における一定の罰則がかけられた場合というふうにするのが適当かというふうに私は思います。先ほど宇賀先生からも同意審決あるいは課徴金の負荷があった場合というふうにお話になりましたけれども、その辺になるのではないかなというふうに思うところでございます。恐らく点数制ということを考えれば、この他にもいろいろな罰則を置くということになるんだと思いますけれども、そういった場合でもかなりその罰則の範囲というのを限定的にしていく必要があろうかと思います。

山下氏
 私は古い行政法を勉強したせいか、やっぱりこういうところで独禁法違反が免許取消し事由として明記されるというのは何となく違和感があったんですけど、今の法律だとこれはしようがないのかなということですね。マーケットの状況を考えれば、こういう点を配慮する必要があるということであればここの文章のようなことで私は構わないのではないかなというふうに思います。

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