高倉室長
それでは、厚生労働省の方から、飲酒と健康に関する情報、また未成年者飲酒防止の関係でということでの取り組みなどにつきまして、簡単に資料に沿ってご報告をさせていただきたいと存じます。
ページ、おめくりをいただけますでしょうか。まず、実態編からでございます。これは未成年に限らず全体像といいましょうか、未成年自体については後ほど出てまいりますが、まず、20歳以上の飲酒習慣者の推移でございます。1ページ、グラフ化を上にしてございますけれども、週3日以上かつ1回に飲む量が1合以上という方を飲酒習慣者というふうに分類いたしますと、平成2年から12年にかけての10年間の推移で見ますと、男性の場合には、20代で若干減ったかのように見えますが、おおむね3割前後、あと70歳以上が4割前後ということでございますけれども、それ以外の世代では、50%台の半ばから70%台半ばまでという、おおむね横ばいの飲酒習慣者比率でございます。女性の方は、右側のグラフで見てとれますように、比率といたしましては、10年前、10%までの間で分布しておりましたものが、少し10年間かけてふえてきていると。しかし、男性と比べると大変比率は低いと、こういう状況が見てとれるところでございます。
おめくりをいただきまして、こういう若干の習慣ではなく、医学的に見てアルコール依存であるという事態に至ったということで、医療機関で受療している方、受療に至らない方も多く、問題でございますけれども、現に医療機関で受療している方の大体の規模でございます。精神及び行動の障害ということで見ますと、3万人から4.5万人ぐらいと、4〜5万人ぐらいのオーダー。アルコール性肝疾患の方がもう少し多い状況でございまして、5〜6万人ぐらいという状況でございます。
このアルコール依存症という段階に至った方の長期予後、健康影響の実態でございますが、各種の10年程度の追跡調査のメタアナリシスでございますけれども、断酒できた方が2〜3割、節酒が7〜10%、引き続き問題飲酒という方が3〜4割で、10年以内に亡くなった方が20〜40%と。特に単身者では死亡率が高く、肝硬変、心疾患、事故、自殺というような状況がございます。予後の良否につきましては、自助グループ、地域に断酒会といったような自助組織がございます。そういったものの参加と関連が高いと。しかしながら、そこに参加しなくても断酒・節酒している方もいると。こういう観察結果でございます。
きょうの特に中心課題としていただきました未成年の部分につきましては、この2ページの下の方で、少し古い資料で恐縮ですが、平成5年に、アルコール白書と通称いたしまして、専門家の各位にアルコール関連問題の現状をまとめていただく中から、未成年の部分の関連障害として列挙されておりますところを転載させていただきました。身体的な問題、精神的な問題、社会的な問題と、3つに分けてございますけれども、身体面としては、特に未成年の方の場合に最も危険なのは、急性アルコール中毒。なかなか適量を知らずむちゃ飲みを行い、あるいは一気飲み促進と、そういったことで急性アルコール中毒、死亡に至る場合がある。このフラッシャーというのは、アルコールに強くなく顔が赤くなる方のことを医学的にはフラッシャーと呼んでいるそうでございますけれども、日本人の約半数はこういうフラッシャーで、未成年あるいは飲酒習慣を持たない方の場合には、アルコール代謝酵素の活性が低いので、むちゃ飲みによる急性アル中が発生しやすいということが第一に挙げられております。また、成人よりも、少量のアルコールで肝臓障害や膵臓炎が発生することが知られていると。その他、ここにございますような、各種の身体上の障害が生じるという観察レポートがあるということでございます。精神的障害のところは、個々に申し上げませんけれども、一般的に言われていることでございますが、いろいろな観察レポートによりますと、学習意欲、精神的成長の停止、依存症へ移行しやすい、そういった問題が指摘されております。社会的障害としましては、一番大きなものは飲酒運転による事故。車の事故はティーンエイジャーが多い、その中でやはり飲酒運転によるものが多いという状況でございますし、あるいはまた、浪費、借金、学問を怠る、仕事についている青年の場合には無断欠勤等の社会的な問題が指摘されているという状況でございます。
3ページから、これは昨年の秋口から冬にかけまして整理されて発表されました実態調査の概要ということで、4ページをごらんいただけますでしょうか。平成8年度に一度厚生科学特別研究で調査したものを、また、5年後のフォローということで、12年度に調査したものでございます。調査方法欄の後段に書いてございますが、学校にご協力いただいた上で、調査票については、生徒が自記式無記名、のりつき封筒で未開封のまま回収と。そうしませんと、なかなか正直な回答が得にくいということで、工夫を凝らさせていただいております。有効回答数は4、参考の表の下の方にございます。中学生4万7,000人強、高等学校生5万9,000人強ということで、かなりな数でございます。
結果でございますが、5ページでごらんいただけますでしょうか。飲酒者の割合、月1回以上飲酒者ということでとらえますと、学年が上がるほど高い。男子で中1、13.7%、高校3年生49.9%。約半分でございます。女子では、中1で12%、高校3年では38.3%と。平成8年調査と比較いたしますと、女子の方は高校生で、12年の方が少し高いという傾向が見られております。月1回以上よりももっと頻度の高い、週1回以上というところでとらえますと、男子では中1で3.9%、高校3年生で17.0%。女子では、中1が3.3%、高校3年生、8.7%となっております。次は省略いたしますが、飲酒量でございますが、学年が高いほど多量飲酒者の割合が高い。特に、飲むときはつぶれるまで飲みますという回答をした人の割合、高3男子で9.1%、女子で3.5%でございました。
入手経路の方に進ませていただきますと、一度も飲んだことがないという人が、それぞれ男子14%、女子14%と、約14%は高校3年生で一度もこれまで飲んだことがないということでございますが、複数回答でありますけれども、コンビニ、スーパーが、男子が56%強、女子が50%強。家にある酒を飲むという方が、男子で44.9%、女子で47.6%。また、居酒屋で飲みますと、男子で33.8%、女子で32.7%、3分の1ぐらいと。酒屋で入手しますという人が、男子28.4%、女子で18.6%。自販機の比率は、平成8年と比べて減っておりまして、男子20.6%、女子で9.7%という状況でございました。
6ページは、それをグラフ化したものでございますので、省略させていただきます。
また、本日は別途、より詳しい全体報告書の方も配付させていただきますので、また後日ご参照いただければと思います。
7ページ以下は、このアルコール問題を含めての健康問題全体に対する当省の今取り組んでおります大枠を簡単にご説明させていただいた上で、その中でのアルコールの位置づけということでご用意させていただきました。ごく簡単に説明させていただきます。
7ページ、平均寿命と健康寿命。健康寿命というのは、寝たきり等にならない期間ということでございますが、いずれも世界一ではありますが、生活習慣病と呼ばれる無自覚なうちに進む病気が大変ふえておりまして、これが健康寿命の延伸を妨げております。
おめくりいただきまして、8ページでございますけれども、生活習慣病は、がん、脳卒中、心臓病、糖尿病、歯周病などがあたりますが、そういったものをできるだけ早い段階で予防して、健康増進をしようということで、一昨年の3月から『健康日本21』という表題で、健康づくり運動論を呼びかけているというのが、この8ページの表でございます。生活習慣として、食事、運動、休養、そしてたばこ、アルコール、歯の健康と、これを取り上げまして、これが危険因子、疾病、健康寿命につながっていくという疫学的な調査に基づいて、具体的な目標を設定しております。
本日の中心でありますアルコールにつきましては、ちょっと前後して恐縮ですが、11ページ、一番最後のページに、アルコール分野ではどんな目標を立てたかということを提示してございます。3本柱でございます。多量飲酒者を2割以上減らしたいということで、現状が4%、女性が0.3%、これを2割以上減少と、2010年の目標を定めております。また2番目は、未成年者の飲酒。これは法律で禁止されていることでありますので0%を目指すと。3「節度ある適度な飲酒」の知識の普及。節度ある適度な飲酒としては、これは1日平均純アルコール20グラム程度。トータル平均ということで、備考欄に、女性の場合、高齢者の場合、依存症の方の場合云々ということで、もちろん個別には、この20グラムでは多過ぎるという人も大勢おられるわけですけれども、男性の一般的な方で観察した場合には、これぐらいの量の飲酒者の方が、全く飲まれない方よりもむしろ死亡率が若干低いといったようなデータがあると。ただ、過ぎると大変また死亡率が高まる、危険因子である。そういったことから、この情報を普及しようと。この3つを柱にさせていただいております。
どんなふうに進めるかということで、9ページで、4つの柱で「健康日本21」という、アルコールを含めた、生活習慣病予防、健康増進の対策を進めております。知らないうちにどんどん病気が重くなるということで、普及啓発。また、中央でやっているだけでは届かないということで、都道府県・市町村、地方計画をつくっていただいくということ。あるいは、各種のヘルス事業、健康相談、健康教育、そういったところも含めた保健事業の推進。そして、いろいろと科学的根拠に基づいて評価しながらやっていく。こういう姿で行動変容を支援していこうとしております。
最後に10ページでございますけれども、今この運動論を行政通知で呼びかけておりますけれども、今国会にこの法的基盤として健康増進法、まだでき上がっておりませんので仮称でございますが、健康増進法の案というものを提出すべく現在準備をしておりまして、基本的には、みずから努めて周りが支援ということでありますが、特に飲酒との関係では、左に書いてある情報提供の推進、飲酒も含めた生活習慣に対する普及啓発といったようなことを進めていきたいと考えております。
以上が、厚生労働省としてご報告ということでございます。どうもありがとうございました。