飯村委員
よろしいですか、もう一つ。
得てして、産地の表示と、その土地の何々酒としますと、競争が激しくなってきたときに、今おっしゃったような、かなりオーバーな表現が出てきてしまうこともありまして、そういうこともある程度考慮していかないと、消費者にとって、内容と名前とが一致しないというようなことになってしまうことも危惧されますので、その辺も御配慮いただきたいと思います。
初谷課長補佐
はい。業界とよく話し合って、その辺は注意してやっていきたいと思います。
小林分科会長
金子委員、利用される側として、何か御意見ございませんでしょうか。
金子委員
そうですね。消費者の目に近い意見でよろしいでしょうか。
特に日本酒は表示がきちんとされていないのが現状です。海外に足を運びましたときに、やはりよく分かりませんでした。果たして流通や保管がもきちんとされているのかと思いました。現地で飲むときは、このような不安を抱えたままでいただくことが多いですので表示をきちんとしていただくということは意味のあることだと思います。
小林分科会長
ありがとうございます。
潮田委員、いかがですか。
潮田委員
先ほどのニューヨークのお酒の1件ですけれども、ああいうふうなものというのは、酒類業界、つまり、日本酒の業界にとって、相当程度、具体的な被害のレベルになりつつあるのですか。それとも、まだ、ちょっとした懸念ぐらいの程度なのですか。
初谷課長補佐
データはないのですけれども、現実に「sake」と言って売られているものが日本産ではなかったのでがっかりしたという声は届いておりまして、ただの懸念ではないと思います。
潮田委員
例えば、酒として売っていけない理由というのが、日本だってウイスキーとか、造りますよね。スコッチと言ってはまずいのでしょうけれど、ウイスキーを造って輸出したって良いのだろうと。諸外国が酒を造っていけないのかなという気がしないでもないのですが。
初谷課長補佐
そこは、酒というのは別に構わないのだと思うんです。SAKEで「酒」というふうに書いてあっても、別にそれでも構わない。それは単なるアルコール飲料を日本語に訳しただけの話ですので、そこまで規制することは、当然、いかにWTOの議論が整ってもできないと思います。ただ、こういう表示がしっかりして、将来的に、灘の生一本でも伏見でも、そういう表示がきちんと出てきて、世界的にも有名になれば、例えば、「酒」と書いてあっただけで、「ああこれは日本の酒だ」というふうに、外国の人が手にとって日本のお酒だと間違えて飲むことはないだろうと考えております。要は、そういうきちんとしたブランドを選ぼうというふうになるのではないかということを期待して、やっているものでございます。
潮田委員
つまり、私がイメージしますのは、酒といった場合には、ウイスキーにおけるスコッチと同じレベルのブランド性と言いましょうか、酒というのはつまり日本製なのだというぐらいのところを目指しているわけなのですかという意味なのですか。
初谷課長補佐
ええ。ただ、酒というだけでは分からないので、特定の地理的表示があることによって、これは良い酒だということが外国の人にも分かっていただけるようにしたいということです。
大武国税庁長官
例えばシャンパンというのはシャンパーニュ地方のスパークリングワインでございます。そういう意味では、酒というのは、スパークリングワインと同じで原産地についてもしようがないのだと思うのですが、それが例えば灘の生一本といえば、それはシャンパンであるというような広め方を世界にできないかなという意味でございます。
むしろ、辰馬委員の方から言っていただいた方が良いのかもしれないのですが、実は先般も南部美人という、二戸の酒屋に行きました。大正時代の酒の値段表がございまして、南部美人は1合が1銭でございました。灘の酒は、灘の生一本は4銭でございました。灘の生一本というだけで4倍の値段をとっていたわけでございます。
実は当時の値段表が残っていて見せていただきましたけれども、そのぐらい、正に世界でもそういうような差別化が何か日本酒にできないか。特に、今、ニューヨークで売られている日本産以外の清酒も、恐縮ながら日本産の清酒も、かなり船便で送っているものですから、飲んでみられたら分かるのですが、とてもじゃないけど、先ほど金子委員の言われたように、流通過程が不明で、封を切るまでどんな酒か分からないという状態が展開されています。そういう意味では、そういう地理的表示がされたようなものについては、少なくとも空輸で、その最後の流通、消費者の点まで、正に消費者の了解で安心して飲める状態を、業界としてもやってほしいというので、生販三層の勉強会等もさせていただいているわけでございます。やはり今までは造るところだけ一生懸命やっておられるのですが、飲む現場、金子委員の言われたようにそこがどんな担保をされているかが、残念ながら、日本酒はどうも確たるところができていないのではないか。そこをやはり我々としては全力でてこ入れしていきたい。その一つのツールとして、こういうような地理的表示みたいなもので何か改革ができないかという思いがあるということであります。
ですから、すぐにWTOの枠組みにできるわけではありませんから、それ自体が対抗できるとは思えませんけれども、しかし何らかの形で将来へ向けての布石ができればと。当時の大正時代は、正に灘の生一本で、商標法もなければ何もない時代に、そうやって確立していたということ自体がやはりすごいなと感激したことがきっかけなのでございます。
津委員
そのことのために、この地理的表示以外の手というのは、何か具体的にお考えはあるのでしょうか。つまり、これだけではまだ、なかなか、今おっしゃられたようなことというのは、そこまでは届かないだろうとは思うのですけれども、それ以外のことというのは、何かありますのでしょうか。
大武国税庁長官
むしろ、後で皆さんに指摘をいただきたい。例えば販売管理者についても、何も未成年であるかどうかを確認するだけではないので、その人たちによってどういう売られ方をしているかということを確認する。
これからは、また別途説明していただければよろしいのですが、抜き打ち検査、いわゆるコンビニとか小売店に抜き打ち検査、つまり、それの試飲会をやって、今、本当に良い酒か悪い酒かというのを、単なる酒屋さんが自分で持ってきた、きき酒会ではない、むしろその現場から抜き打ちして、それの評価をするというようなことも考えておりまして、そういうことを徹底して、いずれは評価として外へ出していく。どこの店屋さんのどれはペケだ、どこは良いというようなことまで将来はむしろ酒類総研なりでやってもらったら良いのではないかと私どもは思っておりまして、この辺も生販三層を入れたところでやっていきたいと思っています。
ですから、そういう意味では、今まで造り手の側から議論してきたのを、先ほど金子委員の言われたように、消費者サイドからどういうふうに評価できるかということを全部この体系の中でいろいろな工夫をしていきたいと思っていまして、また、さらに補足していただければと思います。