小鞠酒税課長
それでは、検討資料の2「地理的表示に関する表示基準」の改正(素案)を御覧いただきたいと思います。
 酒類の地理的表示につきましては、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律に基づきまして、平成6年12月に「地理的表示に関する表示基準」を定めまして、ぶどう酒及び蒸留酒の地理的表示の保護を図ってきたところでございます。
 このぶどう酒及び蒸留酒について限ったのは、国際的に、WTOで、このぶどう酒及び蒸留酒について地理的な表示を保護するといった枠組みができたことを受けて行っているものでございます。
 具体的には、平成7年6月に、国税庁長官が、国内で保護する焼酎乙類の産地というものを指定したところでございますが、具体的には壱岐焼酎の産地である壱岐、球磨焼酎の産地である球磨、それから、琉球泡盛の産地である琉球、この3カ所を定めております。これらの産地を表示する地理的表示は、当該産地ごとに定められた方法で製造された焼酎乙類以外には使用することはできない。そういった保護をしているところでございます。
 現行はそういうことでございますが、先ほど長官からもお話しさせていただきましたように、酒類を取り巻く環境の大きな変化の中で、私ども国税庁といたしましては、酒類業の健全な発達を図るために、いろいろな取り組みを行っているところでございます。
 その一つとして、清酒の振興策の一つとして、消費者の視点に立ちまして、良質な酒類の提供をしていくということがございます。そのために消費者への適切な情報提供が不可欠だといった観点から地理的表示を活用いたしまして、地理的なブランドを確立することによって、商品の付加価値を高めていく。清酒の需要振興を図っていく。そういったことを考えているところでございます。
ここで、現在はぶどう酒と蒸留酒を保護しておりますが、清酒の地理的表示を保護する規定を追加いたしまして、清酒の地域ブランドの確立に向けた体制の整備を行うものでございます。
 これにつきましては、世界的な枠組みとしてのぶどう酒・蒸留酒の保護に加えまして、さらに日本独自にこの清酒の保護、日本独自の、国際的な枠組みよりもさらに一歩進んだことを行うものでございます。
 具体的な内容といたしましては、検討資料2の2枚目でございますが、地理的表示の保護ということで、(1)において現行ではぶどう酒と蒸留酒の規定があるわけでございますが、(2)を新設いたしまして、「清酒の産地のうち国税庁長官が指定するものを表示する地理的表示は、当該産地以外の地域を産地とする清酒について使用してはならない」ということで、国税庁長官が指定した地理的表示、これを指定した産地につきましては、それ以外のところでは使ってはいけないといった規定を設けるわけでございます。
 次の(3)でございますけれども、「前各号の規定は、当該酒類の真正の原産地が表示される場合又は地理的表示が翻訳された上で使用される場合若しくは「種類」、「型」、「様式」、「模造品」等の表現を伴う場合においても同様とする」ということでございます。これは、例えばでございますけれども、現行の焼酎の例でございますと、壱岐というものを指定しておるわけでございまして、壱岐焼酎でないにもかかわらず壱岐という名前を使ってはいけない、これは当然のことでございますが、さらに壱岐風ですとか、壱岐以外、例えば新潟で造られた焼酎に「壱岐焼酎と同じような製法で造られています」、「壱岐風の焼酎ですよ」といったように、真の原産地ではないけれども、それと似たものだ、何とか風や何とか型とかいった表示も駄目だというふうに強く保護しているものでございます。現行、焼酎についてはそういう保護をしているわけでございますけれども、清酒につきましても、そういった保護をして、指定された表示そのものずばりはもとより、さらに、何とか風といった表示も駄目だという保護をしたいと思っております。
 これが改正を考えている内容でございます。よろしくお願いします。

小林分科会長
 ありがとうございました。
 地理的表示に関する表示基準を定める件の一部改正(素案)でございますが、御質問等ございましたらお願いいたします。

飯村委員
原産地表示という流れでいきますと、一つの流れとしては非常に結構なことだと思います。けれども、例えば地理的表示という場合に、その地域で製造されたものということは当然出てくると思いますが、技術的な立場から申し上げますと、水とか米とかいった原料までさかのぼると、どこまでそれを規定したら良いのかという問題が出てくると思います。その辺はいかがでしょうか。

初谷課長補佐
 現在指定されております壱岐・球磨・琉球におきましても、産地として使う水が指定されておりまして、どういうものを壱岐と呼ぶか、どういうものを球磨と呼ぶかという部分については先ずは、業界の中で話し合っており、そういった業界から申請が出てきて、それを適当と認めるかどうかということを、国税局なり国税庁で判断するということで、行政としては枠組みを作り、先ずは、業界の中で話し合ってもらって、どういうものを指定するかについて決めてもらうということになっております。
 飯村委員がおっしゃったように、水やお米を限定するとしたときに、その後どういうチェック体制というものでコンプライアンスを図っていくのかということになるかと思います。恐らく世界的にも、ボルドーという地理的表示が付されたワインが本当にボルドーで造られたブドウを使ってやっているのかどうかについては、多分に紳士協定的なところもありまして、そういったことについては業界の中できちっとやっていただくということでございます。周知徹底するのはもちろん行政の役割ですし、業界の中でも消費者を裏切らないように、そういうことはしないということでやっていただく必要があると思い、そこは徹底してやっていきたいと思います。いずれにしろ、行政としては枠組みを作って、内容については業界の意見をよく聞いて、清酒にも地理的表示というのができるようにします。
 どういったものをその土地の清酒として認定するのかということは、先ずは、業界の中で自主的に決めて相談してくださいというふうにお願いしていく予定でございます。

飯村委員
清酒につきましては、おっしゃったとおりだと思います。水につきましては、恐らく遠いところから持ってきて製造しているということは、ちょっと考えられないと思いますけれども、米につきましては、産地が極めて狭いエリアの米を本当に使うということは、現状ではなかなか難しいと思いますので、その辺は、今おっしゃったような業界での自主的な発案でおやりになるということでしたらばそれで結構だと思います。その辺がかなり厳しくなってしまって、逆に有名無実になってしまい、今おっしゃったような消費者を裏切るようなことになってしまうと、非常に大変なことになると思いますので。
 私が思いますのは、フランスのAOC等の場合に、非常に伝統があり、その長い伝統の中でそういう紳士協定というものが培われてきたというふうに思います。けれども、今回の場合は、むしろ伝統ということでいけば、日本では余りやられていなかったということで、ある面では、良い傾向ではありますけれども、そこで有名無実にならないように配慮をしていただくということが重要ではないかと思います。

小川委員
 二つ、質問させてください。
 新しい方で、「国税庁長官が指定するものを表示する地理的表示」というのは、どういうものを具体的に想定しておられるのかというのが1点。それから、第2点は、今の焼酎の関係では、例えば、球磨焼酎ですよと言って韓国で造ったものを日本で売ろうとしてもできないということでしょうが、先ほど長官が言われたような、諸外国が日本酒だと言ってニューヨークで売っているものは、今回の件には何の関係もないのですねという、その2点です。

初谷課長補佐
まず、具体的にどういうものを想定しているかということですけれども、まだ業界の中でいろいろ話し合っている段階です。原産地表示についても、いわゆる、こういうものを原産地とし認定しようということがまとまっている広島県の西条のようなタイプ、それから、どういったものを認定しようかということを今話し合っている段階の、石川県の白山のようなタイプなどいろいろ話し合いの段階がございまして、既に決まっているところ、あるいは、今話し合っているところの中から、そういう申請、地理的表示を認定してほしいという申し入れが来るのではないかと考えております。

小川委員
今の話では、これを具体的に審議するのには、全然イメージが、とれないわけですね。だから、最後の参考資料14にあるように、品名とか産地、例えば「こういうことになりましょう」というのがないと、この抽象的な文言で良いでしょうというわけにはいかないでしょう。
 だから、それぐらいはここで皆さんにお話ししておかないと、イメージがとれないのではないですか。例えば、何と書くのですか。

大武国税庁長官
例えば、一例で私が知っているところで言いますと、石川県の白山市というところがあり、五場の大きな酒屋さんがあるわけです。それらが、多分、名前としては加賀菊酒というネーミングで、その白山の手取川の水を使って、ある一定基準以上の品質のものを造り、それを統一の加賀菊酒という名前で地理的表示をとりたいと、こういう要望なのでございます。例えばですね。

小川委員
そうすると、今の例ですと、品名のところに、例えば加賀何とか酒という名前で入る。

大武国税庁長官
菊酒という名前で、これは要するに、その地域のものにしかこの名前は使えませんよということでございます。

小川委員
産地としては、例えば石川県の何々。

大武国税庁長官
白山の酒の中の。はい。

小川委員
そして、使用基準のところへ全部ああだこうだと。

大武国税庁長官
全部入ってきます。

小川委員
そういう意味というわけですか。

大武国税庁長官
そういう意味でございます。

小川委員
なるほど、分かりました。

岡本審議官
今のはかなり地域が限定されているのですけれども、他にも既に先行して我々のこの長官の指定以前にやっているものとしては、例えば長野県産酒というのがありまして、長野県は、結構、県産品の振興を県独自でされている。それは、たしか、長野県のお米を使って、ある程度の精米歩合で、自分のところの長野県の地元にある蔵元で造ったものということで、独自のシールを作って、同じシールでPRをしている。場所は広いですけれども、共通のルールに乗れば、そういうこともこちらで拾う可能性もありますし、そのほかに広島の西条あたり、幾つか動きがありますので、地域は広かったり狭かったり、また規定の仕方は、先ほどもありましたように、業者と言いますかメーカーごとにかなり厳しいところをねらうか、緩やかにするかはまちまちですけれども、そのどういう形にもそれなりに対応できるようなことを考えております。

小川委員
つまり、各社が持っているブランドを超えて、ある、例えば長野。

岡本審議官
共通の基準ということでございます。

小川委員
そうすれば、たくさんの会社の製品が入る、と。そのブランドを超えたものが。

岡本審議官
共通ブランド、統一ブランドという意味ではないのですけれども、それぞれの独自のブランドで、ただ「共通の基準に合致したものですよ」ということを、それぞれのネーミングで表示すれば、消費者にとっても、こういうもので、こういう地方のお酒なのだという、差別化というのでしょうか、個性化が見込まれるのではないかと考えております。

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