辰馬委員
 清酒製造業者の立場から、未成年者飲酒に関する問題全般のことでもよろしいでしょうか。

小林分科会長
 結構です。

辰馬委員
 未成年者飲酒の問題は、我々メーカーを含めまして、流通業界、飲食店、それから、家庭等が互いに連携して、対応すべき共通のテーマであります。
 健康、安全、環境への配慮、コンプライアンス、トレーサビリティー等に関し、世間の目が厳しくなっておりますが、それ以前に、私たちメーカーは致酔性飲料を提供する者として、未成年飲酒の啓蒙は当然の使命だと捉えております。精魂込めて造った酒がおかしな売られ方あるいは無秩序な飲まれ方をするということは、本意ではございません。やはり百薬の長として、酒を飲むことによって、健康でハッピーな気持ちになっていただきたい。健全に飲まれてこそ酒造りは完結すると考えます。
 先ほど来、商品や売り場での警告の表示について説明がございましたが、今、業界でもいろいろと対応しているところでございます。マスコミによる広告・宣伝に関する自主基準の設定、さらには、街頭での啓蒙活動、売り場での確認、それから、正しい飲み方の啓蒙や知識の普及、本日は日本酒スタイリストの金子先生もいらしていらっしゃいますけれども、子供への食育、食を通じた人格形成、これも大切ではないかと考えております。WHOの動静も視野に入れながら、未成年飲酒防止策に取り組んでいるところでございます。
 麻薬やたばこが今大変問題になっておりますが、そういったものと酒が同列にされ、悪者論が蔓延してまいりますと、酒が何か暗いものだというイメージになりかねません。未成年の人が大人になったら酒を楽しもうという憧れを持つような方向へ持っていかないと、酒害だけが強調されて、禁酒的な方向になると多くの健全な愛飲家にとってはハッピーなことではなく国家財源にも影響して参ります。
 そのためにも、経済的な規制が今どんどん緩和されている中で、しっかりと秩序が守られるように、社会的な規制、健全な飲酒へのチェックを行政当局の対応としても、是非お願いしたいと存じます。
 今、マーケットでは、清涼飲料水に近いムードの、度数が低いタイプの酒が氾濫しております。その酒を買う場所も、言葉を交わさないで無言で買える店が非常に多くなっております。先ほどこう津さんがおっしゃいました通販もそうでございます。また、自販機はチェックが入りますけれども、酒を扱う24時間営業の店も沢山あります。これが続々とふえておりまして、今までの一般酒販店を淘汰していっております。これは酒に限らず、薬屋さんもそうです。一般家電もそうです。何とかカメラとか何とかホームセンターといった形態の店がどんどん出てまいりまして、そういうところのバイイング・パワーが極めて強くなっております。酒に関しましては、先ほど、大武長官がおっしゃいましたように人口が減少し、全体の消費量が増えない中でバイイング・パワーの大きい店がたくさん出てまいりましたことによって、納入価格の競争が厳しくなり、メーカーや納入卸の収益に影響を及ぼす局面も出てきております。競争社会ですので、組織力や機能性発揮による低価格は消費者にとり、大きなメリットであることは事実でありますが、一方酒はどちらかというとアナログの世界でございまして、特に日本酒やワインのような醸造酒は、食品と同じ感覚で目玉的に極端に格安に売られることには疑問を感じております。
 リーズナブルは商品価値の大切な要素でありますが、価格一辺倒ではなくて、サービス、アナログな販売、語れる酒を語れる店で、造り手の顔や売り手の顔、おなじみの客の顔やハートが通じる店でのおいしい酒との出会いが増えてほしいと願っております。
 そういうことで、今、新しく提案されておりますことの趣旨に賛同いたします。
 清酒は今、若者層にあまり飲んでいただいてないのが実情なのですけれども、若い人たちにはスローフードの美意識を身につけ、心を豊にしてほしい。今日本に足りないものは感動、感性、美意識です。倫理、モラル、心が荒廃しています。
 食は、人を良くすると書きます。食育即ち食を通じた人格形成を幼いころから大事にして、酒道を教育の場で取り上げていただくことが、未成年飲酒防止にもつながるのではないかと思っております。
 以上でございます。

小林分科会長
 ありがとうございます。
 私の方から一つだけ。酒類販売管理者の制度があるかと思いますが、これは今回の制度とは、特に関係ありませんか。その販売管理者の研修内容とか条件とか、そういうことは全然関係ないのでしょうか。

亀井酒税企画官
 今回の表示基準の改正とは直接関係ございませんけれども、酒類販売管理者に対する研修というものが行われておりますので、変更内容については、従来型の広報にあわせまして、酒類販売管理者研修の中で徹底していくということにしたいと思っています。

小林分科会長
 そうですか。
 今回の改正案でございますと、お酒コーナーにある「未成年者の飲酒は法律で禁止されている」旨の表示が、「20歳以上の年齢であることを確認できない場合には酒類を販売しない」という文章になるわけですね。結局、販売業者の意思が強調されていて、今までは「法律で禁止されております」ということですから、受け身的なものですけれども、今度の改正ではポジティブなものになるわけですね。
 もし、ほかに御意見がなければ、このあたりで事務局案を了承するということにしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

小林分科会長
 ありがとうございます。それでは、今後、この改正案につきましてはパブリックコメントなどの手続をしなければいけません。このパブリックコメントの結果につきましては分科会でお諮りするということも考えられますけれども、改正案を変更するまでのことがなければ、改めて皆様にお集まりいただいて分科会でお諮りする必要もないというふうに思っております。
 したがいまして、大変恐縮ですが、本分科会でさらに審議をするべきかどうかという点につきましては、私に御一任いただければと思いますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

小林分科会長
 ありがとうございます。それでは、そういう手続にさせていただきたいと思います。
 酒類分科会了承後の手続きですが、国税審議会は、国税審議会会長が適当と認めた場合に限り、分科会の議決をもって国税審議会の議決とすることができるというふうに決まっておりますので、この報告を国税審議会の議決として良いかどうか、国税審議会会長の御判断を待つということになります。もし、よろしいということになりますと、国税審議会の答申としての体裁を整えた上で国税庁長官に御報告させていただくということになりますが、その点について御承知いただければと思っております。
 それでは、次に、第2の審議事項でございますが、「地理的表示に関する表示基準を定める件の一部改正について」でございます。
 この件につきましても、去る6月9日に長官から国税審議会長に諮問がございまして、国税審議会会長から当分科会に付託することが適当であるという御判断をいただいております。前の議題と同様、国税審議会議事規則第3条によって、当分科会で御審議いただくものということでございます。
 それでは、事務局の方から、今回の改正について御説明をお願いいたします。

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