小林分科会長
なお、今後はこの答申を受けて、国税庁においては、この改正どおり行政を行っていただくということになっております。
 以上、まことに簡単ですけれども、清酒の製法品質表示基準を定める件の一部改正につきまして、その後の状況について御報告させていいただきました。
 それでは、最初の審議に入りたいと思います。「酒類における有機等の表示基準を定める件の一部改正について」の説明ということになりますが、今月12日に国税庁長官から諮問を受けました「酒類における有機等の表示基準を定める件の一部改正」につきましては、国税審議会会長から当分科会に付託することが適当であるとの御判断をいただいております。
 これを受け、本日、国税審議会議事規則第3条の規定により、当分科会で御審議いただくものでございます。
 それでは、今回の改正について事務局の方から御説明をお願いいたします。

寺内酒税課長
 酒税課長の寺内でございます。それでは、この「酒類における 有機等の表示基準を定める件の一部改正」につきまして説明させていただきます。
 その前に恐縮でございますが、お手元にございます資料をご確認いただければと思います。「議事次第」と「配席図」、それから「委員名簿」、それから今の答申のほか、検討資料と書いたものがございます。ちょっと薄い方でございますが、検討資料と書いた資料をめくっていただきまして、「配付資料一覧」というものがついております。
 配付資料は、「酒類における有機等の表示基準を定める件の一部改正」についてと「酒類の表示の基準における重要基準を定める件」について、この二つの審議事項に関する資料でございます。
 本日一つ目の審議事項となっております、有機等の表示基準の一部改正につきましては、1ページ目の資料1でございます。本日御審議していただきます改正事項の事務方案が資料1でございます。
 それから、本日二つ目の審議事項になっております、「酒類の表示基準における重要基準を定める件」につきましては、2ページ目以降最後のページまで、これ資料2でございます。本日御審議していただきます「重要基準として定める事項」の事務方案でございます。
 次に、「国税審議会酒類分科会参考資料」と書いたものがございます。参考資料の方を1枚めくっていただきますと、「配付資料」がずらっと配付資料1から15までございます。これは本日の審議事項につきまして、御説明させていただきます際の参考資料でございます。1ページ目から3ページ目にかけての資料1、資料2は、今年の4月、国会において改正法が成立いたしまして、この9月1日より施行されております酒類の表示基準を定めるための根拠法であります「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」及び「同法律施行令」の抜粋でございます。
 2ページをお開きいただきますと、2ページの一番上の第86条の8におきまして、国税審議会の諮問ということで、財務大臣は酒類の表示基準を定めようとするとき、またはその重要基準を定めようとするときは、あらかじめ国税審議会に諮問しなければならないと規定されております。この規定によりまして、本日の審議事項として、「酒類における有機等の表示基準の一部改正」と、それから「酒類の表示の基準における重要基準を定める件」、この二つの改正内容について御審議をお願いするということでございます。
 それから、資料3から15につきましては、後の御審議の参考としていただくため、「今回の改正法の内容」あるいは「諮問等の手続き・内容」、「酒類の表示の基準等」についての資料がつけられております。
 最後に、お手元に「酒類の適正な販売管理への取組等について」と書いたものと、「お酒の適正な販売管理に向けて」というパンフレットがございます。この資料は、審議事項が終了しました後に御説明申し上げます。以上の資料でございます。
 それでは、まず酒類の有機等の表示基準を定める件の一部改正につきまして、御説明申し上げます。
 まず、「参考資料」の方を御用意いただきまして、参考資料の20ページ、資料11がございます。「酒類における有機等の表示基準」の概要でございます。
 この有機等の表示基準の制定の経緯ですが、近年、消費者の食品に対する認識が、安全や健康といった観点から高まっていることは御案内のとおりでございますが、こうした中で、いわゆる有機農産物、あるいは有機農産物加工食品という場合の「有機」という言葉、表示について、きちんと定義をする必要が出てきたわけでございます。そこで、平成12年1月に農林水産省におきまして、「酒類以外の有機農産物や有機農産物加工食品」について、日本農林規格、いわゆるJAS規格というものですが、「有機」と表示する際の基準が定められたわけでございます。これを受けまして、酒類においても、それまで、例えば有機ワインというような名称のお酒が生産されていたということもあり、有機等の表示の適正化を図り、消責者の適切な商品選択に資するため、「酒類における有機等の表示基準」を定めたわけでございます。
 この「酒類における有機等の表示基準」を定めるに当たりましては、酒類も農産物を主原料としておりますので、この有機農産物加工食品に関するJAS規格、日本農林規格等に準拠した内容になっております。
 この「有機等の表示基準の概要」でございますが、1にございます、「有機農産物加工酒類」における有機等の表示におきましては、このイに掲げる原材料及び使用割合、ロに掲げる製造その他の工程に係る管理、それからハに掲げる「有機農産物加工酒類の表示方法」と、こういった基準を満たしている有機農産物加工酒類に限りまして、「有機又はオーガニック」といった表示をすることができるということでございます。
 このイの原材料及び使用割合におきましては、まず原材料がJAS法に基づいた格づけをされた有機農産物であること。それから、その使用割合が95%以上であること。それから、食品添加物は必要最小限度の量であることといったことが定められております。
 使用できる食品添加物につきましては、クエン酸とか、乳酸とかといったものが定められております。これは別表1というものに定められておりますが、今回の諮問事項であります、有機等の表示基準の一部改正は、この別表1の食品添加物について、所要の改正を行うものでございます。
 続きまして、2の方にございます、「有機農産物加工酒類の名称の表示」では、有機農産物加工酒類の名称の表示、原材料に使用した有機農産物等の名称の表示、それから有機農産物等の使用表示について、表示方法を示しているということであります。
 3番目の「有機農産物等を原材料に使用した酒類における有機農産物等の使用表示」では、有機農産物加工酒類以外の酒類について、有機農産物等を原材料に使用しているといった場合の表示できる要件でございます。
 4は「酒類における遺伝子組換えに関する表示」ということで、以前、高オレイン酸大豆という議論をしましたが、遺伝子組換えに関する表示を行う場合の要件でございます。
 次に、「検討資料」、薄い方の検討資料の方、本日御審議いただく改正事項でございますが、1ページをお開きいただきたいと思います。
 1ページの改正(素案)でございますが、食品添加物についての、別表1の改正についての素案を示したものでございます。
 この酒類の有機等の表示基準につきましては、先ほど申し上げたとおり、「有機農産物加工食品のJAS規格」、日本農林規格等に準拠したものとなっております。今般、農林水産省において、この日本農林規格で使用が認められている食品添加物について、その名称に誤りがあったことを理由として、「リン酸一水素カルシウム」が「リン酸二水素カルシウム」、この線を引いてあるところでございますが、「一」が「二」に改められることになりました。
 これを受けまして、酒類における有機等の表示基準においても、同じような改正を行う必要が出てきたということでございます。
 この有機農産物加工食品のJAS規格の一部改正の方、これは農林水産省が所管しておりますが、今年の5月20日付の農林物資規格調査会に既に諮問されておりまして、23日の農林物資規格調査会部会で審議されました。
 パブリックコメントが6月6日から7月5日まで行われて、WTO通報も行われたとのことでございます。
 これらにおいても、あるいは9月16日の農林物資規格調査会における審議においても、特段の意見なく了承された内容と聞いております。
 この有機農産物加工食品のJAS規格の改正の経緯について、何でこのようなことになったのかということを、具体的に御説明申し上げます。
 JAS規格で使用が認められている食品添加物。これは、平成11年に国際連合の食糧農業機関、いわゆるFAOと言われるものですが、それと世界保健機関、WHOの合同食品規格委員会というのがございまして、これはコーデックス委員会というところでございますが、ここで採択されました有機農産物の生産に係る国際的なガイドライン、コーデックスガイドラインと言うものでございますが、その付属書の2の表3において使用可能とされている食品添加物のうち、我が国の食品衛生法において使用が認められているもの、これをJAS規格で使用が認められている食品添加物というふうにされております。
 このうち、コーデックスガイドラインで、実は「mono calcium phosphate」と記載されているものを、JAS規格におきましては「リン酸一水素カルシウム」というふうに訳してこれまで記載しておりました。今般、農水省において、この「mono calcium phosphate」の内容を有権的に定義している、JECFAというところがあるんですが、これもやはりFAOとWHOの合同委員会なんですが、先ほどの委員会とは独立した食品添加物の特別な委員会、専門家委員会でございます。
 ここの評価品目リストで確認をしましたところ、この物質は、「Calcium dihydrogen phosphate」となっていることが判明したわけでございます。その日本語名は「リン酸二水素カルシウム」と訳すべきものであるということで、今回の改正を行うこととなったということでございます。「リン酸一水素カルシウム」と「リン酸二水素カルシウム」というのは違う物質でございます。食品衛生法において両方とも使用が認められている物質であります。健康に害のない安全な物質であります。
 ただ、「リン酸一水素力ルシウム」については、酒類製造者におきましては、できるだけ品質の優良な醸造用資材の調達に努めるということで、40社ぐらいのメーカーが加盟しております「醸造用資材規格協議会」、これに加盟している資材メーカーから原料を購入しております。ここのメーカーの商品としては、「リン酸二水素カルシウム」だけが、販売品目リストに掲げられております。酒類製造者が「リン酸一水素カルシウム」を購入して、使用しているとは考えられないということが1点ございます。
 それから、「リン酸一水素カルシウム」を酒類の製造に使用する場合は、イースト菌の培養とか、そういった酵母の培養剤として使用されることになりますが、水にほとんど溶けないという特性を有しておりまして、栄養分が溶け出さず、お酒の酵母の培養剤としての効果は余り期待できないということから考えましても、酒類の製造に使用している事例はないというふうに思われます。
 また、日本酒造組合中央会に確認しましたら、市販用清酒の製造において、この「リン酸一水素カルシウム」を使用することは、ほとんど考えられないということでございました。
 それでは、なぜ今までこの別表1に「リン酸一水素カルシウム」が掲載されてきたかというと、酒類の有機の表示基準の別表1を作成する過程では、このJAS規格をそのまま平成12年当時でありますが持ってきているわけでございます。その中に誤訳でありました、「リン酸一水素カルシウム」というものが入っていたわけですが、その時点においては、酒類の製造において、今後、全くこの使用される見込みが、可能性がないことが明らかであるもの以外のものについては、そのすべてを食品衛生法上認められた食品添加物として掲げることとしておりました。したがいまして、この「リン酸一水素カルシウム」については、一応酵母の培養剤ということでございますから、酒類の製造及び使用される可能性が全くないとは言えないという判断から、当時はこれも掲載するということにしたものでございます。
 とはいえ、これは御指摘があろうかと思いますが、この時点で、「有機農産物加工食品のJAS規格」の別表1に掲げられているものとはいえ、それをそのままひいて「酒類における有機等の表示基準」に掲げる食品添加物について、コーデックスガイドラインに掲げてある食品添加物の英語名までさかのぼることなく、食品添加物の名称に誤りがないとの前提で判断をし、誤りを把握できなかったということは事実でございます。その意味では当時の確認が不十分であったという御指摘は当然あろうかと思いますが、今回の改正につきましては、JAS法を所管いたします農林水産省におきまして、「酒類における有機等の表示基準」が準拠しております、有機農産物加工食品のJAS規格の別表1に掲げられた「リン酸一」が「リン酸二」に改められたということを受けまして、酒類における有機等の基準の別表1についても同様の改正を行うという性格のものでございますので、御理解いただきたいと思います。
 一方、つけ加えますと、「リン酸二水素カルシウム」の方については今度掲げられるわけでありますが、酒類業界においては、特に清酒製造業界において、もろみの発酵を助成促進するための仕込み水に使用されているケースがございます。今回、改めて私どもでその使用実態を把握いたしました。現在、清酒製造業者約1,900者のうち約130者がこれを使用しているようでございます。このほか、合成清酒で15者、しょうちゅう乙類で1者、リキュール類で2者が使用しているようでございます。ただそのこれらの「リン酸二水素カルシウム」が使用されております酒類につきましては、「リン酸二水素カルシウム」以外の原材料等が、酒類におけます有機等の表示基準に規定する製造方法の基準を満たしているかどうかを確認しましたところ、そのほとんどすべてが有機米以外の米を原料に使用しているか、または、製造工程に係る管理が有機の表示基準に合っていないなどの理由によりまして、今回の改正によりまして影響を受ける酒類はないものと見ております。
 ただ、この点につきまして、念のため正確に申し上げますと、逆に現在この有機のほかの基準を満たしていて、「リン酸二水素カルシウム」を使用して、それで有機等の表示をしているものがあるかと申しますと、今回調べましたところ、これはほんの数者ですがございました。これは形式的にそのまま考えますと、これまで別表1を遵守していなかったとも言えるわけでございます。しかし、誤訳がなければ表示基準を遵守した表示を行っていたということにもなるわけであります。したがって、これに対し何らかの処分が行えるかというとこれは難しいのではないかと考えております。
 いずれにいたしましても、こうした状況を踏まえますと、改正後におきましては、今後、その他の有機の要件を満たす場合は、この「リン酸二水素カルシウム」を使用した酒類についての有機等の表示が可能となるわけでありますが、現在のところそうした表示をし得るものが直ちにたくさん出てくるということはないものと考えているところでございます。
 以上が「酒類における有機等の表示基準」についての御説明でございます。よろしく御審議のほどお願いします。

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