28 要留保額の移受管の手続きは正しく行われるようになっているか。

1. 趣旨
 要留保額の全部又は一部を当該契約に係る受託機関(以下「移管受託機関」という。)から他の受託機関(以下「受管受託機関」という。)へ移管するため、法令附則第16条第1項第9号ホの規定に基づき、金銭その他の資産を返還する場合には、この移受管の手続きが正しく行われるようになっているかどうかを審査する。

2. 審査上の留意事項

(1) 金銭その他の資産の移受管は、委託者(契約者)及び受託機関の間で移受管額等について規定した書類(以下「移受管協定書等」という。)に基づくものとする。

(2) 要留保額の移受管を掛金等配分割合その他一定の割合に基づいて行うときは、当該割合を変更した日の前日の積立財産を基準とする。
 ただし、要留保額を移管した後の積立財産が零となる受託機関の移管額は、次に掲げる額とする。

イ 信託契約においては移管日の前日現在の最終信託財産額

ロ 新企業年金保険契約又は企業年金保険契約においては移管日の前日現在の保険料積立金の額から当該保険料積立金の額に係る納税義務の確定した特別法人税等の額を控除して得た額

ハ 退職年金共済契約においては移管日の前日現在の共済掛金積立金の額から当該共済掛金積立金の額に係る納税義務の確定した特別法人税等の額を控除して得た額

(注1) 同一の信託会社で既に締結されている年金指定単契約に係る要留保額を移管して新たに年金特定契約を締結する等、同一の信託会社における複数の信託契約の間で要留保額を移受管した場合も法令附則第16条第1項第9号ホに該当することに留意する。

(注2) 委託者と金融商品取引業者が締結した投資一任契約が解除されることにより、委託者と信託会社が締結した年金特定契約も解除される場合には、当該年金特定契約を締結している信託会社は、要留保額の移管に係る手続きを正しく行うことに留意する。

(3) 移受管は、制度変更日から2ヵ月10日以内に行うものとする。ただし、財政再計算の場合は、原則として申請書等の提出期限までに移管を行う。

(注) 要留保額の移受管に際して、給付に支障をきたすおそれがあると認められるときは、すみやかに総幹事受託機関へ移管する。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 要留保額の移受管があった契約

(2) 審査書類
 契約書、申請書等、年金規程等、移受管協定書等

(3) 審査手順

イ 契約書、申請書等、年金規程等により要留保額の移受管の事実を確認し、上記2の審査上の留意事項を満たした移受管協定書等が作成されていることを確認する。

ロ 移受管額の計算が正しいかどうかをワークシート等により検証する。

ハ 年金規程付則等に法令附則第16条第1項第9号ホに基づき要留保額の移受管を行う旨が規定されていることを確認する。


29 臨時拠出金(ターミナルファンディング) の払込みは適正に行われているか。

1. 趣旨
 掛金等の払込みは、年1回以上規則的に行われなければならないが、その場合1事業年度分(個人事業主の場合は1年分)の掛金等に相当する金額を超えて払込むことはできないこととされている。しかし、年金数理計算時に予測できなかった事由等の発生により、給付に必要な額がその時の積立財産の額を上回ることとなった場合は、特別措置としての臨時拠出金の払込みが認められる。

2. 審査上の留意事項

(1) 臨時拠出金の払込み額は、直接の原因となった脱退者への給付不足額のほか、同一事業年度内に予定されている年金給付額等も含めて算定することができる。

(2) 数回に分れて臨時拠出金を払込む場合の申請等は、事業主の同一事業年度内の臨時拠出金に限り一括してこれを行うことができる。

(3) 臨時拠出金を払込む場合は、その金額及び拠出日を年金規程等に明記しなければならない。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 臨時拠出金の払込みを行う契約

(2) 審査書類
 年金規程等

(3) 審査手順
 積立財産と給付請求金額等とを対比して臨時拠出金を必要とするかどうかを確認し、必要と認められるときは、上記2の審査上の留意事項にしたがって処理する。


30 契約の全部又は一部が解除された場合における要留保額は受益者等に帰属するようになっているか。

1. 趣旨
 適格年金契約の全部又は一部が解除された場合における当該契約に係る要留保額は、受益者等に帰属するものである。(法令附則第16条第1項第10号。)

2. 審査上の留意事項

(1) 制度の廃止に伴って契約を解除する場合について、次の点が年金規程等に規定されていなければならない。

イ 制度が廃止された場合は、法令附則第16条第1項第10号イからニまでに該当する場合を除いて、要留保額は受益者等に帰属するようになっていること。
 また、積立財産が退職年金の給付に充てるため留保すべき金額を超えている場合のその超える額は、受益者等又は事業主に帰属するようになっていること。

ロ 要留保額について各受益者等に分配する方法を具体的に明記しておくこと。

ハ 共同委託(結合)契約の場合にあっては、それぞれの年金規程に係る責任準備金の額の割合又はその他合理的な割合に応じて按分するようになっていること。

(2) 相当の事由に基づき給付額の減額変更を行う場合は、契約の一部解除となり、自主審査要領15 2(2)イ又はロの場合を除き、減額部分に係る要留保額は加入者に合理的な方法で分配する必要がある。また、やむを得ない事由に基づきある特定の加入者を適用除外する場合も契約の一部解除となり、適用除外となる加入者に係る要留保額を当該加入者に合理的な方法で分配する必要がある。ただし、次に掲げる場合のそれぞれ次に定める金額についてはこの限りではない。

イ 事業主が契約の一部を解除して企業型年金加入者となった者又は既に企業型年金加入者である者の個人別管理資産に充てる場合 減額部分に係る要留保額のうち個人別管理資産に充てる額又は過去勤務債務等の現在額に充てる額

(注) 法規附則第5条第2項第2号の規定により過去勤務債務等の現在額の一部について払込みを行う場合における上記イの過去勤務債務等の現在額に充てる額は、法規附則第5条第2項第2号の規定による払込みを行った後の過去勤務債務等の現在額となることに留意する。

ロ 中小企業退職金共済契約の被共済者となった者の被共済者持分額に充てるため事業主が契約の一部を解除し、独立行政法人勤労者退職金共済機構に引き渡す場合 当該独立行政法人勤労者退職金共済機構に引き渡す額

3. 審査手続

(1) 対象契約
 審査上の留意事項(1)についてはすべての契約、審査上の留意事項(2)については給付額の減額変更を行っている契約及びある特定の加入者を適用除外することとした契約

(2) 審査書類
 申請書等、年金規程等

(3) 審査手順
 年金規程等に制度廃止に伴って契約を解除する場合の要留保額の取扱いが明定されているかどうかを確認する。
 また、給付額の減額変更を行う場合又はある特定の加入者を適用除外とする変更を行う場合は、加入者又は適用除外となる者に要留保額が適正に分配されているかどうかを確認する。


31 特例適格年金契約において加入者数はその要件を満たしているか。

1. 趣旨
 特例適格年金契約としての承認を受けられる契約は、原則として加入者数が500人未満の契約に限られる。
 また、特例適格年金契約としての承認を受けた後、加入者数が加入者数要件を満たさないときには、所定の期限内に措令第39条の36第16項に定める届出書(以下「人数要件の届出書」という。)を提出することにより一定期間特例適格年金契約として継続することができる。

2. 審査上の留意事項

(1) 特例適格年金契約の加入者数は、500人未満であることを要する。
 ただし、共同委託(結合)契約においては加入者総数が800人未満、かつ、いずれの法人の加入者数も500人未満であることを要する。
 なお、農業協同組合法、農業災害補償法、水産業協同組合法、土地改良法、農業委員会等に関する法律、漁船損害等補償法、中小漁業融資保証法、たばこ耕作組合法、農業信用保証保険法、漁業災害補償法、森林組合法又は農林中央金庫法に基づき設立された法人の使用人を加入者とする特例適格年金契約については、この限りでない。

(2) 特例適格年金契約の締結後、毎年4月1日の加入者数が加入者数要件を満たさなかったときは、その年の6月末日までに人数要件の届出書を国税庁長官に提出することにより特例適格年金契約として継続することができる。ただし、3回連続して人数要件の届出書を提出し、かつ、3回目に人数要件の届出書を提出した年の翌年4月1日においても加入者数要件を満たさないときは、一般適格年金契約に変更しなければならない。

(注) 次の設例の場合、(t+3)年4月1日においても加入者数が500人以上であれば、(t+3)年4月1日付で特例適格年金契約から一般適格年金契約に変更する。
特例適格年金契約から一般適格年金契約に変更する例の図

(3) 加入者数要件以外の特例適格年金契約の要件を満たす一般適格年金契約が加入者数要件を満たすこととなったときは、当該加入者数要件を満たすこととなった日をもって特例適格年金契約に変更することができる。
 ただし、上記(2)により特例適格年金契約から一般適格年金契約に変更した契約については、特例適格年金契約から一般適格年金契約に変更した日の翌日以降の毎年4月1日に加入者数要件を判定するものとし、当該加入者数要件を満たしている場合には、当該加入者数要件を満たすこととなった日をもって特例適格年金契約に変更することができる。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 すべての特例適格年金契約

(2) 審査書類
 申請書等

(3) 審査手順
 契約締結及び一般適格年金契約から特例適格年金契約への変更に際しては、当該契約が上記2の審査上の留意事項に定める加入者数となっているかどうかを、契約締結後及び一般適格年金契約から特例適格年金契約への変更後は、毎年4月1日における加入者数が上記2の審査上の留意事項に定める基準に合致しているかどうかを確認する。

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