24 特定年齢は合理的に定められているか。

1. 趣旨
 特定年齢は掛金等の決定に際し選択する標準的な加入年齢であるから、合理的に定められていることが必要である。

2. 審査上の留意事項

(1) 特定年齢の定め方は、次に掲げるもののうちいずれかによるものとする。

イ 過去3年間の新規加入者の平均年齢

ロ 過去3年間の年齢別新規加入者数の最も多い年齢(モード)

ハ 年金制度に加入することのできる最低の年齢

ニ 通常掛金等が最小となる年齢

ホ その他合理的であると認められる年齢

(2) 特定年齢の定め方及び特定年齢は、次に掲げる場合には変更することができる。

イ 財政再計算時(経験予定脱退率を使用する契約で予定昇給率を使用しない契約にあっては、当該契約締結のときから5年以内の一定期間ごとの対応日から6カ月以内)。

ロ 加入資格又は受給資格を変更したとき。

ハ 合併等により特定年齢の実質的な変動が大幅であるとき。

ニ 新たに事業主の実績に基づく予定脱退率又は経験予定脱退率を使用したとき。

ホ その他特定年齢を変更することについて合理的な理由があるとき。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 特定年齢を使用する加入年齢方式を採用している新規契約、財政再計算を迎えた契約、特定年齢を変更した契約

(2) 審査書類
 申請書等、人員構成表

(3) 審査手順
 申請書等に記載した特定年齢が、人員構成表の加入年齢別人員分布等から判断して上記2の審査上の留意事項に定める基準に合致しているかどうかを確認する。


25 他社勤務期間の通算を行うこととしている場合は、年金規程等に通算に関する定めが明記されているか。また、共同委託(結合)契約の場合又は出向・転籍に伴い掛金等を他社に負担させる場合には、その掛金等の負担方法は合理的に定められているか。

1. 趣旨
 適格年金契約における他社勤務期間の通算は、共同委託(結合)契約の場合、他社へ出向した場合、勤務期間を通算する会社(以下「関係会社」という。)から転籍があった場合、法人の分割・合併により転籍があった場合、営業譲渡及び法人成等により従業員を引継いだ場合等に行うものとする。
 この場合において、他社勤務期間に見合う過去勤務債務等の掛金等は、原則として当該他社が負担しなければならないのであるが、その負担方法は合理的に定められていることが必要である。

2. 審査上の留意事項
 掛金等の負担方法で合理的な方法とされるものは、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に掲げるようなものとする。

(1) 共同委託(結合)契約の場合

イ 通常掛金等は、次に掲げるいずれかの方法により負担する。

(イ) 加入者別に掛金率(額)が定められている場合には、それぞれの法人について計算された額

(ロ) (イ)以外の場合には、年金規程等の共通の掛金率(額)

ロ 過去勤務債務等に係る掛金等は、次に掲げるいずれか一の方法のうち最も合理的であると認められるものにより負担する。ただし、事業主の人員構成等からみて合理的であると認められるときは、共通の掛金率(額)によることもできる。

(イ) 負担区分の算定時点におけるそれぞれの加入者の責任準備金又はこれに類するものの比

(ロ) 負担区分の算定時点におけるそれぞれの加入者の勤続(加入)期間の比又は加入者の給与と勤続(加入)期間の相乗積の比

(ハ) その他合理的な方法

(2) 共同委託者を除く関係会社間で転籍があった場合

イ 適格年金契約締結前又は締結後において適格年金契約を締結していない関係会社より転籍があったとき。
 転籍者に係る過去勤務債務等の掛金等の負担調整は、例えば退職給与引当金の設定の基礎となった要支給額に相当する金額を関係会社から受取ることにより行う。
 この場合において、年金規程等に関係会社名を明記し、その勤続期間を通算する旨の規定を設けることに留意する。

ロ 適格年金契約を締結している関係会社間で転籍があったとき。
 転籍元会社の適格年金契約の当該転籍者に係る要留保額を転籍先会社の適格年金契約における当該転籍者に係る責任準備金額を限度として移管することができる。この場合において、年金規程等に関係会社名を明記し、その勤務期間を通算する旨の規定を設けることに留意する。

(注) 転籍元会社の適格年金契約における要留保額が、転籍先会社の適格年金契約における責任準備金を上回る場合は、当該上回る部分は当該転籍者に分配しなければならない。ただし、年金規程に明定して退職時に併せ給付する場合には、当該上回る部分を移管することができる。

(3) 法人の合併があった場合

イ 被合併法人における勤務期間を通算することができる。ただし、原則として被合併法人における退職金及び退職年金が清算支給されていないときに限る。この場合において、年金規程等に被合併法人における勤続期間の通算条項を設けることに留意する。

ロ 被合併法人の従業員の過去勤務期間に係る給付額の評価割合は、合併法人の従業員の評価割合と同一にするのを原則とする。

(4) 法人の分割があった場合
 勤務期間の通算及び過去勤務期間に係る給付額の評価は、合併の場合における取扱いと同様とする。

(5) 営業譲渡があった場合
 法人の分割の場合に準じて行う。

(6) 営業譲受の場合
 合併の場合に準じて行う。

(7) 法人成の場合
 個人事業の廃止の時に、退職金の打切り支給がなかった場合は、個人事業当時の勤務期間を通算することができる。

(8) 出向の場合

イ 使用人を出向させた場合には、その勤務期間を通算する旨を年金規程等に明定しておくことが必要である。

ロ 出向先で役員となっている従業員は、出向元年金制度の加入者とすることができる。

ハ 掛金等の負担関係

(イ) 通常掛金等:給与の負担割合に応じて負担する。

(ロ) 過去勤務債務掛金等:原籍会社で負担する。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約のうち他社勤務期間の通算期間がある契約及び他社勤務期間の通算をすることとなった契約

(2) 審査書類
 年金規程等、掛金等の負担方法に関する覚書

(3) 審査手順
 年金規程等において他社に勤務した期間を通算する旨の定めがあるかどうかを確認し、掛金等の負担について上記2の審査上の留意事項を満たした覚書があるかどうかを確認する。


26 過去勤務期間に係る給付額の評価は100%以下の一定割合で行われているか。

1. 趣旨
 給付額の計算又は受給資格の判定において制度施行日(変更日)前の期間もみようとする場合は、過去勤務期間に係る給付額は、100%以下の一定割合で評価する必要がある。

2. 審査上の留意事項

(1) 給付額の計算又は受給資格の判定上、過去勤務期間に係る給付額の評価方法としては、次のいずれかの方法が認められる。

イ 実際の勤務期間をすべてみる方法

ロ ある一定割合で見る方法

ハ 特定の年月日以降みる方法(社内年金の発足日、退職金の清算等合理的な原因がある場合に限る。)

ニ 全くみない方法

ホ 上記イ〜ニの合理的な組合せでみる方法

ヘ 年金はイ〜ハ、一時金はニによる方法

(2) 評価方法は、給付の増額等年金制度の改善を行う場合以外には変更することはできないものとする。

(注) 過去勤務期間に係る給付額の全部又は一部について評価しなかった場合において、当該企業の発展、年金制度の成熟等諸般の事情により、過去勤務期間に係る給付額の評価を行い、又は評価割合を引上げることは、上記(2)の「給付の増額等」に該当するものとする。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約、過去勤務期間に係る評価方法を変更した契約

(2) 審査書類
 年金規程等、退職金規程等

(3) 審査手順

イ 年金規程等により過去勤務期間に係る給付額の評価方法が上記2の審査上の留意事項を満たしているかどうかを確認する。

ロ 評価方法の変更を行っているかどうかを確認し、行っている場合は、それが給付の増額等年金制度の改善に結びつくものであるかどうかを確認する。


27 留保すべき金額を超える額(剰余金)は事業主に返還するようになっているか。また、剰余金及び要留保額の計算は正しいか。

1. 趣旨
 年金制度においては通常年1回年金財政決算が行われる。年金財政決算の結果、留保すべき金額を超える額が計上された場合、これを年金財政上の剰余金といい、財政再計算時に事業主に返還しなければならないことになっており、この剰余金返還の取扱いが年金規程等に明定されているかどうかを審査する。
 また、法令附則第16条第1項第8号、第9号又は第10号ハの適用がある場合には、剰余金及び要留保額の計算が正しく行われているかどうかを確認する必要がある。

2. 審査上の留意事項

(1) 留保すべき金額を超える額(剰余金)の取扱いについて、次のような規定が年金規程等になければならない。

イ 経験予定脱退率を使用している契約については、次のいずれかの方法で規定されていること。

(イ) 毎年事業主へ返還する。

(ロ) 5年以内の一定期間ごとに事業主へ返還する。

ロ 上記イ以外の契約については、財政再計算時に事業主へ返還する。

(2) 年金財政決算は、毎年一定の期日に行うよう契約書又は年金規程等に規定されていなければならない。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約、財政再計算を迎えた契約、新たに事業主の実績に基づく予定脱退率を使用する契約、新たに経験予定脱退率を使用する契約

(2) 審査書類
 申請書等、年金規程等、剰余金及び過去勤務債務等計算表

(3) 審査手順
 申請書等、年金規程等、添付書類により、法令附則第16条第1項第8号、第9号又は第10号ハの適用の事実を確認する。

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