20 通常掛金等の積立方法(積立方式及び掛金等の形態)の変更は適正に行われているか。

1. 趣旨
 通常掛金等の積立方法は、契約当初に定めたものを継続的に使用すべきである。したがって、その積立方法を変更することができるのは、一定の要件を満たす場合に限られている。

2. 審査上の留意事項

(1) 通常掛金等の積立方法は、継続して使用しなければならないが、次に掲げる場合は、変更することができるものとする。

イ 財政再計算を行うとき(経験予定脱退率を使用する契約で予定昇給率を使用しない契約にあっては、当該契約締結の時から5年以内の一定期間ごとの対応日から6カ月以内)。

ロ 新たに事業主の実績に基づく予定脱退率、経験予定脱退率又は予定昇給率を採用するとき。

ハ 給付の増額、受給資格の緩和又は給付の種類を追加するとき。

ニ その他積立方法の変更に合理的理由があると認められるとき。

(注) 受託機関の変更又は制度変更に伴い、個人平準方式又は一時払積増方式から他の方式へ変更するとき及び保険契約又は共済契約から信託契約に変更したことに伴い到達年齢方式から他の方式へ変更するときは、上記ニに該当するものとする。

(2) 通常掛金等の形態
 通常掛金等の形態は、給付形態と一元的に取扱われるものである。したがって、給付形態の変更が行われるときは、必ずこれを変更しなければならない。ただし、一時払積増方式又はこれに準ずる方式を採用している場合は、この限りでない。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 通常掛金等の積立方法を変更した契約

(2) 審査書類
 申請書等、掛金の算式、責任準備金率表

(3) 審査手順
 申請書等により、積立方法の変更が確認されたときは、上記2の審査上の留意事項に定める基準に合致した変更であるかどうかを確認する。


21 過去勤務債務等の積立方法(管理方式、掛金等の形態及び償却割合)は適正に定められているか。また、これらの変更は適正に行われているか。

1. 趣旨
 過去勤務債務等の掛金等は、通常掛金等と同じく掛金等の重要な部分を占めている。
 したがって、過去勤務債務等は、年金制度の内容や事業主の経理負担等の実情に即した適正な積立方法を定めて償却していく必要があり、これを頻繁に変更することにより年金財政上の弊害及び税務上の問題を生じさせないよう配慮する必要がある。

2. 審査上の留意事項

(1) 過去勤務債務等の管理方式
 過去勤務債務等の管理方式は、個別管理又は一括管理のいずれかの方式によるものとする。ただし、経験予定脱退率を使用している場合には、一括管理方式によるものとする。

(2) 過去勤務債務等の掛金等の形態及び償却割合
 過去勤務債務等の掛金等の形態及び償却割合は法令附則第16条第1項第7号イからハまでによる。

(3) 過去勤務債務等の積立方法(管理方式、掛金等の形態、償却割合)の変更
 過去勤務債務等の積立方法は、次に掲げる場合には、変更することができる。

イ 財政再計算を行うとき(経験予定脱退率を使用する契約で予定昇給率を使用しない契約にあっては、当該契約締結の時から5年以内の一定期間ごとの対応日から6カ月以内)。

ロ 基礎率の変更が必要になったとき。

ハ 給付の増額、受給資格の緩和又は給付の種類を追加するとき。

ニ 次に掲げる場合において、過去勤務債務等の洗替が必要と認められるとき。

(イ) 法人の合併又は営業譲渡が行われるとき。

(ロ) 共同委託者(結合子会社)を追加又は除外するとき。

(ハ) 臨時拠出金を払い込む必要が生じたとき。

ホ その他積立方法の変更に合理的理由があると認められるとき。

(4) 過去勤務債務等の洗替基準
 財政再計算を行うとき(経験予定脱退率を使用する契約で予定昇給率を使用しない契約にあっては、当該契約締結の時から5年以内の一定期間ごとの対応日から6ヵ月以内)及び基礎率の変更がある場合は、過去勤務債務等の洗替を行う。また、基礎率の変更がない場合であっても、次に掲げる場合において必要と認められるときは、過去勤務債務等の洗替を行うものとする。

イ 給付の増額、受給資格の緩和又は給付の種類を追加したとき。

ロ 法人の合併又は営業譲渡が行われるとき。

ハ 共同委託者(結合子会社)を追加又は除外するとき。

ニ 臨時拠出金を払い込む必要が生じたとき。

ホ 受益者等が企業型年金加入者となったため、又は既に企業型年金加入者である当該受益者等に係る適格年金契約に基づく給付の額の一部を当該企業型年金加入者の個人別管理資産に充てるため、給付の額を減額し、適格年金契約の資産の移換を行うとき。

ヘ その他過去勤務債務等の額が著しく増減すると見込まれるとき。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約、過去勤務債務等の積立方法を変更した契約

(2) 審査書類
 申請書等、年金規程等、掛金の算式、責任準備金率表

(3) 審査手順

イ 管理方式を年金規程等の関係条文によって確認し、実際の計算がその方式どおりに行われているかどうかを確認する。

ロ 申請書等と年金規程等に定められた償却割合を突合し、算式で実際に同割合が使用されていること及び同割合が上記2の審査上の留意事項に定める基準に合致しているかどうかを確認する。

ハ 積立方法を変更した場合は、上記2の審査上の留意事項に定める基準に合致しているかどうかを確認する。


22 通常掛金等の積立方式は、予定利率、予定死亡率、予定脱退率及び予定昇給率(給与比例制の場合)を算定基礎とし、原則として平準的な掛金等によって事前積立を行うものとなっているか。

1. 趣旨
 適格年金契約の掛金等は、法令附則第16条第1項第5号において適正な年金数理に基づき算定されなければならないと定められており、予定利率、予定死亡率、予定脱退率及び予定昇給率(給与比例制の場合)を算定基礎とし、原則として平準な掛金等によって事前積立を行う積立方式を使用しなければならない。
 なお、給付額が、法令附則第16条第1項第6号に規定する掛金等に係る給付開始時の元利合計額に等しいものであるときは、適正な年金数理に基づいたものではないことに留意する。

2. 審査上の留意事項

(1) 通常掛金等の積立方式は、次に掲げるもののうちいずれかによるものとする。

イ 到達年齢方式

ロ 加入年齢方式

ハ 個人平準方式

ニ 一時払積増方式

ホ その他合理的な積立方式

(2) 基礎率

イ 予定利率、予定死亡率及び予定脱退率は、すべての契約について使用する。

ロ 予定昇給率は、給与比例制を採用している契約に使用する。ただし、一時払積増方式の場合はこの限りでない。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約、財政再計算を迎えた契約、通常掛金等の積立方式を変更した契約、基礎率を変更した契約

(2) 審査書類
 申請書等、基数表

(3) 審査手順

イ 申請書等に記載した積立方式が、上記2の審査上の留意事項に定めるとおりになっているかどうかを確認する。

ロ 予定利率、予定死亡率、予定脱退率及び予定昇給率を使用しているかどうかを申請書等及び基数表により確認する。


23 予定死亡率、予定脱退率及び予定昇給率は、算定の時の現況において合理的に計算されているか。また、予定利率は設定の時及び再計算日において基準利率以上となっているか。

1. 趣旨
基礎率のうち、予定死亡率、予定脱退率及び予定昇給率はその算定時の現況において合理的に計算されたものを使用しなければならない。したがって、これらの基礎率は、原則として事業主の実績によるものでなければならないが、例えば死亡率や事業主の実績によることが相当でない場合等の脱退率は、それぞれに応じた算定方法が定められている。また、予定利率は設定の時及び再計算日において法規附則第5条第4項に規定する基準利率以上の率を使用しなければならない。

2. 審査上の留意事項

(1) 予定死亡率

イ 予定死亡率は、通常は次の方法によるものとする。

(イ) 国民生命表

(ロ) 厚生年金基金の財政運営において使用する死亡率

(ハ) 確定給付企業年金法施行規則第43条第2項第2号に規定する基準死亡率

ロ イに掲げる予定死亡率は、合理的に補正することができる。

ハ 予定死亡率は、国民生命表等が改められた場合でその見直しが必要なときを除き、次回の財政再計算の時まで変更することができない。

(2) 予定脱退率

イ 予定脱退率は、算定の日前3年間の実績に基づいて算出することを要する。ただし、設立後日の浅い法人のように使用すべき実績がない場合や火災等により過去の記録を失い実績によることができない場合等には、次回財政再計算を3年後に行うことを条件として、次の方法によることができる。

(イ) 業種、業態並びに事業規模が類似している事業主の脱退率を勘案して算定する。

(ロ) 1年以上3年未満の実績に基づいて算定する(異常な退職者を含む年度を除いた場合を含む。)。

(ハ) 法人の分割等により新たに設立された法人については、分割前の法人等の脱退率を使用する。

ロ 予定脱退率の算定基準日は、原則として次のとおりとする。

(イ) 財政再計算(財政再計算と同時に年金規程を変更する場合を含む。)の場合
 再計算日。ただし、脱退率に大幅な変動がないと認められるときは再計算日前6カ月以内の日を算定基準日とすることができる。

(ロ) (イ)以外の場合
 年金規程の施行日若しくは変更日又はこれらの日前6カ月以内の日

ハ 予定脱退率の算定にあたっては、当該算定の基礎となった期間に異常な退職者を含む年度があるときは、当該年度又は当該異常な退職者を除いて過去3年以上の実績を使用するものとする。

(注) 異常な退職者を含む年度とは、法人の分割又は企業規模の縮小等により年間退職者数が他の年度に比し著しく増加した年度をいう。

ニ 予定脱退率に安全率を見込む場合は次の方法によるものとする。

(イ) 実績値に80%〜120%の一定率を乗ずる方法。

(ロ) 退職者のうち、短期の勤続者を除いて算定する方法。

ホ 予定脱退率は、次回の財政再計算時まで変更しないものとする。ただし、次に掲げる場合には、脱退率の見直しを行い、必要があると認められるときはこれを変更するものとする。

(イ) 合併又は共同委託(結合)契約への変更(共同委託者(結合子会社)の追加を含む。)等により、加入者数が大幅に増減したとき。

(ロ) 加入資格又は定年年齢が変更されたとき。

ヘ 加入者数が100人に満たない場合は、事業主の実績に基づいて算定された予定脱退率に代えて、複数の適格年金契約の加入者の退職実績に基づいて合理的に算定された予定脱退率(「経験予定脱退率」という。)を使用することができるものとする。
 この場合、上記ロ〜ホは適用しないことができる。

ト 予定脱退率を変更する場合において、前回算定時より加入者数が減少し事業主の実績に基づいて算定することができないと認められるときは、経験予定脱退率を使用することができるものとする。

(3) 予定昇給率

イ 予定昇給率は、算定の日現在の実績による年齢別平均給与又は年齢勤続別平均給与により算出することを原則とするが、当該方法が適当でない場合には、勤務年数別等集団の特性に適合した方法を用いることができる。
 ただし、必要に応じて合理的な方法により将来の給与水準の変動を見込むことができるものとする。

ロ 予定昇給率の算定基準日は上記(2)ロに準ずる。

ハ 予定昇給率は、次回の財政再計算時まで変更しないものとする。ただし、次に掲げる場合には昇給率の見直しを行い、必要があると認められるときは変更するものとする。

(イ) 合併又は共同委託(結合)契約への変更(共同委託者(結合子会社)の追加を含む。)等により、加入者数が大幅に増減したとき。

(ロ) 加入資格又は定年年齢が変更されたとき(加入資格の変更又は定年年齢の変更に対応する年齢の予定昇給率のみを変更するときを含む。)。

(ハ) 基準給与としている給与の体系が変更されたとき。

(4) 数理計算上の定年

イ 定年制のある場合は、その定年年齢を数理計算上の定年とする。ただし、定年延長規定があり延長後の特定の年齢が実質的な定年と認められる場合には、当該年齢を数理計算上の定年とすることができる。

ロ 定年制のない場合は、過去の退職実績又は厚生年金保険の年金支給開始年齢等を勘案して通常退職年齢を定め、これを数理計算上の定年とする。

ハ 通常退職年齢は、原則として次回の財政再計算時まで変更しないものとする。

(5) 予定利率

イ 予定利率は、法規附則第5条第4項に規定する基準利率以上で設定する必要がある。

ロ 予定利率は、次回の財政再計算時まで変更することができない。なお、再計算日において予定利率が基準利率を下回る場合には基準利率以上に変更する必要がある。

(注1) 経験予定脱退率を使用する契約で予定昇給率を使用しない契約にあっては、契約締結の時から5年以内の一定期間ごとの対応日を上記の再計算日とみなす。

(注2) 経験予定脱退率を使用する契約で予定昇給率を使用しない契約から事業主の実績に基づく予定脱退率又は予定昇給率を使用する契約に変更する契約にあっては、当該事業主の実績に基づく予定脱退率又は予定昇給率を使用することとなった日を上記の再計算日とみなす。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約、財政再計算を迎えた契約、基礎率を変更した契約

(2) 審査書類
 申請書等、就業規則又は給与規程、基数表、脱退率算出表、昇給率算出表、人員構成表

(3) 審査手順

イ 予定脱退率及び予定昇給率の算定基準日が上記2の審査上の留意事項に定めるとおりになっているかを確認する。

ロ 予定脱退率を算定している場合は、各年度の退職者数を検討し、異常に退職者の多い年度がある場合には、異常退職かどうかの実態を調査し、上記2の審査上の留意事項のとおり計算されているかどうかを確認する。また、安全率を見込んでいる場合には、上記2の審査上の留意事項に定める方式によっているかどうかを確認する。

ハ 予定死亡率、予定脱退率又は予定昇給率を変更している場合は、上記2の審査上の留意事項に定める基準に合致しているかどうかを確認する。

ニ 定年制があるときは、基数表の最高年齢と数理計算上の定年とが一致しているかどうかを確認する。定年制がないときは、上記2の審査上の留意事項を満たしているかどうかを確認する。

ホ 予定利率を設定又は変更している場合は、上記2の審査上の留意事項に定める基準に合致しているかどうかを確認する。

戻る目次へ次へ