16 通常掛金等の拠出期間が制度加入時から退職時又は通常退職年齢まで拠出するよう定められているか。

1. 趣旨
 適格年金契約は、加入者の退職後における年金の給付に必要な原資を準備するため、使用人の在職中に掛金を拠出する事前積立を建前としており、通常掛金等の拠出期間は、制度加入時から退職時又は通常退職年齢までの全期間としなければならない。

2. 審査上の留意事項
 通常掛金等の拠出については、制度加入時から退職時又は通常退職年齢まで継続して拠出するように定められていなければならないが、次に掲げる期間で、当該期間を給付額算定の勤続(加入)期間に算入しない場合は、年金規程等にその旨を明定することにより、当該期間の通常掛金等の拠出を打切ることができる。

(1) 通常退職年齢を超えて勤務した場合において、当該通常退職年齢を超えて勤務した期間

(2) 定年年齢を引き上げたにもかかわらず、旧定年年齢までの勤続(加入)期間により給付を行う場合における旧定年年齢以降の期間

(3) 休職期間(育児休業期間、介護休業期間等を含む。)

(4) 一部の者が定年を延長して勤務した場合において、その定年を超えて勤務した期間

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約、定年延長等により退職時又は通常退職年齢まで拠出をしなくなった期間がある契約

(2) 審査書類
 年金規程等、就業規則又は労働協約

(3) 審査手順

イ 年金規程等により、通常掛金等の拠出期間が制度加入時から退職時又は通常退職年齢までとなっているかどうかを確認する。

ロ 就業規則又は労働協約に定年延長規定があり、定年延長期間(定年の定めがない場合は通常退職年齢を超えて在職する期間)を勤続(加入)期間に算入しない場合は、年金規程等において拠出を打切る扱いになっているかどうかを確認する。


17 掛金等の払込方法(拠出時期及び拠出額)は正しいか。

1. 趣旨
 掛金等の拠出時期及び拠出額については、年金財政上適正に定められていることが必要であり、年1回以上規則的に拠出する方法によらなければならない。また、払込方法を変更する場合は、税務上の弊害が生ずるおそれがあるので、その変更に合理的な理由があるかどうかを審査する必要がある。

2. 審査上の留意事項

(1) 掛金等の拠出時期は、一定期間経過するごとに拠出されるよう、年金規程等において定められていなければならない。

(2) 掛金等の拠出時期は、次に掲げる場合を除き、変更することができない。

イ 財政再計算を行うとき(経験予定脱退率を使用する契約で予定昇給率を使用しない契約にあっては、当該契約締結の時から5年以内の一定期間ごとの対応日から6ヵ月以内)。

ロ 新たに事業主の実績に基づく予定脱退率、経験予定脱退率又は予定昇給率を採用するとき。

ハ 給付の増額、受給資格の緩和又は給付の種類を追加するとき。

ニ その他掛金等の拠出時期の変更に合理的な理由があると認められるとき。

(3) 掛金等の払込みが当該契約書又は協定書上の掛金払込みの猶予期間を経過し、なお、相当期間(おおむね1年)継続して延滞した場合に、事業主がその後継続して掛金等を払い込む意思が認められないときは、適格要件に合致しないものとして取扱う。
 ただし、事業主においてその後継続して掛金等を払い込む意思が認められるときは、1年程度上記期間を延長することができる。

(4) 延滞掛金の払込方法は次のいずれかによることができる。

イ 延滞掛金の合計額(延滞利息を含む。)を一括して払い込む方法

ロ 延滞掛金の合計額(延滞利息を含む。)を当該延滞期間に相当する期間内に均等分割して払い込む方法

ハ 延滞期間終了時に過去勤務債務等の額を洗替えし、掛金率(額)を改めて払い込む方法

(5) 掛金等は、法人事業主にあっては一事業年度分、個人事業主にあっては1年分の掛金等に相当する金額を超えて払い込むことができない。ただし、次に掲げる場合はこの限りでない。

イ 掛金等の払込みが延滞し、それまでに延滞した掛金等に相当する金額の全部又は一部を払い込むとき。

ロ 臨時拠出金を払い込むとき。

ハ 受益者等が企業型年金加入者となるため、又は既に企業型年金加入者である当該受益者等に係る適格年金契約に基づく給付の額の全部又は一部を当該企業型年金加入者の個人別管理資産に充てる場合において、過去勤務債務等の現在額の全部又は一部について法規附則第5条第2項第2号の規定に基づき掛金等を払い込むとき。

(注) この場合において、当該掛金等の払込み時期は企業型年金に係る規約について厚生労働大臣の承認を受けた日から当該企業型年金に係る規約の施行日の前日までとなることに留意する。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約、掛金等の払込み方法を変更した契約

(2) 審査書類
 契約書、年金規程等

(3) 審査手順

イ 契約書、年金規程等により、掛金等の拠出時期に関する規定が、上記2の審査上の留意事項に掲げる基準に合致しているかどうかを確認する。

ロ 拠出方法を変更する場合は、上記2の審査上の留意事項に掲げる場合に該当しているかどうかを確認する。


18 加入者が負担した掛金等の額が、掛金等の額の50%を超えていることはないか。

1. 趣旨
 適格年金契約の掛金等は、法令附則第16条第1項第2号により事業主が払い込むこととされているが、事業主を通じて加入者が、掛金等の一部を負担することもできる。この場合における加入者負担額が事業主負担額に比して過大であるような場合は、適格年金契約として適当ではない。
 また、掛金等の加入者負担がある場合には、原則として年金制度への加入及び脱退は本人の任意とする。

2. 審査上の留意事項

(1) 通常掛金等の加入者負担割合は、通常掛金等の額の50%相当額を超えることはできないことに留意する。

(2) 制度変更に際しては、掛金等の加入者負担割合を変更することができるが、財政再計算の結果、通常掛金等の額が変更され、かつ加入者負担の額を変更できない事情がある場合には、その負担額が通常掛金等の額の50%相当額を若干上回っても差支えないものとする。

(注) 過去勤務債務等の額に係る掛金等を加入者に負担させるときは、合理的な負担方法によることとし、かつ加入者の負担割合については通常掛金等に準じた取扱いとしなければならない。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約のうち掛金等の加入者負担がある契約、加入者負担がある契約に変更した契約及び加入者負担割合が変更された契約

(2) 審査書類
 申請書等、年金規程等

(3) 審査手順
 年金規程等における掛金等の加入者負担割合が上記2の審査上の留意事項に定める基準に合致しているのかどうかを確認する。


19 掛金等の額及び給付の額の算定の基礎となる基準給与は、適正か。

1. 趣旨
 掛金等の額及び給付の額の算定の基礎となる基準給与は、事業主の恣意性が介入するおそれがなく、かつ従業員に理解し易いものを使用することが適当であるので現に使用している給与規程又は退職金規程(これに準ずるものを含む。)に定められたものを使用することを原則とする。また、基準給与に従業員個々の事情により差の生ずる住宅手当、家族手当又は残業手当等不安定な各種手当を含めることはできない。

2. 審査上の留意事項

(1) 基準給与は、給与規程又は退職金規程に定められたものを使用することが原則であるが、年金制度のために特別に定められた給与であっても事業主の恣意性が介入するおそれがないと認められる給与であれば基準給与とすることができる。

(注) 使用人の一定の状況(例えば、勤続年数、資格等)に応じてあらかじめ定められたポイントを付与し、当該ポイントの累計に一定の金額を乗じて給付の額が算定される制度(いわゆるポイント制)において、付与されたポイントに当該一定の金額を乗じた額は、年金制度のために特別に定められた給与に含むものとする。ただし、ポイントの格差が概ね規則的であり極端な段差が生じていないこと、付与された最低ポイントと最高ポイントの格差が大幅に乖離していないことに留意する。

(2) 役職手当、特殊勤務手当、技能手当等毎月一定額が支給され本来基準内賃金とみなされる給与については、基準給与に含めることができる。

(3) 厚生年金保険における標準報酬から実費弁償に類するもの及び不安定要素の大きいものを除いたものについて厚生年金保険の標準報酬月額等級区分によるものを基準給与とすることができる。

(4) 使用人兼務役員の基準給与は、法基通9-2-23(使用人分の給与の適正額)の例により算定した基準給与としての適正額とする。

(5) 就業規則又は労働協約に日給者及び月給者の区分が明定されている場合において、日給の月給換算は就業規則又は労働協約の定めによるものとし、その定めがない場合は、実労日数等客観的な基準に基づき換算するものとする。

(6) 年により上下変動が著しい年俸は基準給与とすることはできないが、年俸を構成する部分で、安定的に増加するとみなされる部分がある場合には、当該安定的とみなされる部分を基準給与とすることができる。

(7) 掛金等の算出の基礎となる基準給与と給付額算出の基礎となる基準給与を異にすることはできない。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約、給与比例制に変更された契約及び給与体系が変更された契約並びにポイント制に変更された契約及びポイント体系が変更された契約

(2) 審査書類
 申請書等、年金規程等、就業規則又は労働協約、給与規程、退職金規程、資格規程、昇格基準等

(3) 審査手順
 年金規程等の基準給与と就業規則又は労働協約、給与規程、退職金規程と照合し、その内容が上記2の審査上の留意事項を満たしているかどうかを確認する。また、申請書等に記載された基準給与の引用条文等が正しいかどうかを確認する。なお、ポイント制の制度においては、資格規程、昇格基準等により、事業主の恣意性が介入する余地がないかどうか確認する。

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