4 加入資格のない者を加入者に含めていることはないか。

1. 趣旨
 法令上加入者としてはならない者を、年金規程等において加入者の範囲から必ず除外しているかどうかを審査する。

2. 審査上の留意事項
 次に掲げる者は加入者とすることができないことに留意する。

(1) 役員(法人税法(以下「法」という。)第34条第5項に規定される使用人としての職務を有する役員(以下「使用人兼務役員」という。)を除く。)

イ 事業主である法人の役員をいう(法令附則第16条第1項第3号)。
 ただし、出向中の従業員で出向先において役員となっている者は、出向元において加入者とすることができる。

ロ 法人の役員の範囲は、法人税法上役員(使用人兼務役員を除く。)とされる範囲と同一である(法第2条第15号、法令第7条、法人税基本通達( 以下「法基通」という。)9-2-1)。

(注) 使用人兼務役員は加入者に含めることができるのであるが、その者が使用人兼務役員であるかどうかは次に掲げる法令等の規定に留意して判定する。

イ 法第34条第5項(使用人としての職務を有する役員の意義)

ロ 法令第71条(使用人兼務役員とされない役員)

ハ 法基通9-2-5(使用人としての職制上の地位)

ニ 法基通9-2-6(機構上職制の定められていない法人の特例)

(2) 事業主である個人若しくはこれと生計を一にする親族(法令附則第16条第1項第3号)

(3) 法令附則第16条第1項第2号に規定する受益者等から除かれる者
 一般的には次のような者がこれに該当する。

イ 業務委託契約、請負契約等、事業主と雇用契約以外の契約に基づく関係にある者のように使用人と認められない者

(注) 例えば、所得税基本通達30−2の2に掲げる一定の執行役員制度に基づく執行役員がこれに該当する。

ロ 1年に満たない期間を定めて雇い入れられる者のように、日々雇い入れられる者及び臨時に期間を定めて雇い入れられる者

(4) 定年年齢又は通常退職年齢までの期間が受給資格を得るに必要な期間に満たないことが明らかな者
 ただし、定年年齢又は通常退職年齢を超えて勤務した場合に、その超えて勤務した期間を給付額算定の勤続(加入)期間に算入することとしているときは、受給資格を得るに必要な期間を満たすこととなったときに加入させることができる。

(注) 就業規則に定年延長の規定があり、その延長期間を勤続(加入)期間に算入する場合には、使用人兼務役員についても使用人と同様の取扱いができる。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約、加入者の範囲を変更した契約

(2) 審査書類
 年金規程等、就業規則又は労働協約、株主名簿等の確認書類

(3) 審査手順

イ 年金規程等の「加入者」として定義されている使用人の範囲については就業規則又は労働協約を参照し確認する。

ロ 加入者から除外すべき者について、年金規程等に正しく規定されているかどうかを確認する。

ハ 使用人兼務役員を加入者の範囲に含めている場合は、株主名簿等の確認書類により、その者が使用人としての職務上の地位を有するかどうかを上記2の審査上の留意事項にしたがって判定する。


5 正当な理由がなく特定の使用人を加入者の範囲から除外していることはないか。

1. 趣旨
 法令上加入者としてはならない者以外の者を加入者から除外する場合は不当差別に該当するおそれがあるので、除外することに正当な理由があるかどうかを審査する。

2. 審査上の留意事項

(1) 次に掲げる者は正当な理由があるものとして加入者から除外することができる。

イ 海上勤務者又は港湾労働者等のように就業条件が異なることにより、給与規程、退職金規程等が他の使用人と異なっており、かつ、全日本海員組合、全国港湾労働組合等の横断組合に属している当該使用人

ロ 年金制度の加入者となることに賛成しない職種又は事業所等の労働組合に属している者

ハ 確定給付企業年金の加入者

ニ 確定拠出年金法第2条第8項に規定する企業型年金加入者(以下「企業型年金加入者」という。)

ホ 東京都私学退職金社団等に使用人の一部が加入している場合の当該使用人
 ただし、その私学退職金社団等と適格年金契約の給付額等がほぼ同一のときに限る。

ヘ 見習期間中又は試用期間中の者

ト 嘱託
 一般使用人と労働条件が同一である場合を除く。

チ 雇員、準社員、執行役員等
 雇員、準社員、執行役員等について、退職金規程の適用がない場合又は適用があっても一般従業員と著しく異なっている場合に限る。

リ 使用人兼務役員

(注) 他から出向中の者は、原則として、出向先企業の年金制度に加入させないものとする。

(2) 上記(1)の取扱いのほか、年金規程が労働協約により定められているとき又は使用人全員の同意を得ているときは、特定の使用人を加入者から除外することができる。

(注1) 加入者である特定の使用人を除外する変更を行う場合は、法令附則第16条第1項第10号の規定の適用があることに留意する。

(注2) 上記(2)にいう「使用人全員」とは、申請書等に記載された「使用人総数」と同一の範囲であることに留意する。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約、加入者の範囲を変更した契約

(2) 審査書類
 申請書等、年金規程等、就業規則又は労働協約、退職金規程、使用人全員の同意書、企業型年金規約承認通知(写)、確定給付企業年金規約承認通知(写)

(3) 審査手順

イ 年金規程等について、除外規定の有無を確認し、上記2の審査上の留意事項に掲げる者以外の者が除外されていないかどうかを確認する。

ロ 申請書等に記載された使用人総数と加入者数とを対比し、加入要件等から勘案してその差が異常に大きいと考えられる場合は、その実態を企業に照会し、上記2に掲げる者以外の者を除外していないかどうかを確認する。

ハ 特定の使用人が除外されている場合には、審査上の留意事項に掲げる者に該当する者であるかどうかを、就業規則、労働協約、使用人全員の同意書又は企業からの説明書等により確認する。


6 加入資格が高年齢又は長期の勤続期間になっていることはないか。また、正当な理由がなく、加入資格の取得期間(待期期間)を延長していることはないか。

1. 趣旨
 加入資格の取得期間が高年齢又は長期になっている場合には、給付の対象となる期間に対して掛金を拠出する期間が非常に短くなるため、本来長期にわたり平準的に掛金を拠出し退職時の給付を準備すべきものである年金制度としての意味がないこととなる。また、一旦定めた加入資格の取得期間(待期期間)を延長することは、既得権を侵害するおそれがあるので、その延長に合理的な理由があるかどうかを審査する必要がある。

2. 審査上の留意事項

(1) 加入資格は、年齢若しくは勤続期間又はこれらの組合せによる客観的基準により定めることを要する。ただし、著しく高年齢又は長期の勤続期間により定めることはできない。

(2) 加入資格が企業の実情に即しない場合には、その取得期間(年齢)を延長(引上げ)することができるが、この場合、受給資格又は給付額について加入者の既得権を侵害することとなるときは、当該既得権のある者を加入者から除外してはならないものとする。

(注1) 加入資格が企業の実情に即しない場合とは、例えば次のような場合である。

イ 人員構成に大幅な変化があったとき。

ロ 年金制度になじまない短期勤続者又は若年者を加入者としているとき。

ハ 退職金規程の改訂により短期勤続者への給付がなくなったとき。

ニ 年金制度の合理化(例えば一律定額給付を勤続(加入)期間別給付に変更すること等をいう。)により変更するとき。

(注2) 短期勤続者への給付があるにもかかわらず、加入資格の取得期間を延長したときは、経過措置を設け既得権を保護しなければならないことに留意する。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 新規契約、加入資格を変更した契約

(2) 審査書類
 申請書等、年金規程等(加入資格を変更しているときは新、旧)

(3) 審査手順
 年金規程等の加入資格に関する規定が、上記2の審査上の留意事項に掲げる内容に合致しているか、また、加入資格の取得期間(待期期間) を延長している場合は、留意事項によっているかどうかを確認する。

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