3 契約の要件は満たされているか。また、契約形態に応じた契約書類が作成されているか。

1. 趣旨
複数の事業主と受託機関とが適格年金契約を締結しようとするときは、共同委託(結合)契約に関する要件があり、その基準に合致しているかどうかを審査する。
 また、契約形態に応じた契約書類の作成についても確認しなければならない。
 なお、分割契約の場合においては、総幹事制度を採用することに留意する。

2. 審査上の留意事項

(1) 共同委託(結合)契約の要件
受託機関と共同委託(結合)契約を締結しようとする複数の法人間においては、次に掲げる要件をすべて満たしていなければならない。

イ 企業支配関係にある法人であること。この企業支配関係は次の(イ)、(ロ)又は(ハ)のいずれかの出資関係にあることが必要である。

(イ) 当該複数の法人のうちいずれか一の法人が他のすべての法人のそれぞれの株式等(発行済株式又は出資等をいう。)を有する場合において、当該株式等が法令第119条の2第2項第2号の規定に準じた出資関係にあるとき。
次のような設例(A法人とB法人の関係)は、この出資関係に該当する。

(設例)
A法人とB法人の出資関係の図

(注) →は発行済株式又は出資の保有を示し、%は発行済株式又は出資の総数又は総額のうちに占める割合を示す。以下同じ。

(ロ) 当該複数の法人のうちいずれか一の法人が他の法人のそれぞれの株式等を有しない場合において、いずれか一の法人の株主等の1人(当該株主等と法令第4条に規定する特殊の関係にある個人及び法人を含む。)が、当該複数の法人のそれぞれの発行済株式又は出資(当該複数の法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の100分の50以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有するとき。
次のような設例(A法人とB法人の関係)は、この出資関係に該当する。

(設例)
A法人とB法人の出資関係の図

(ハ) 当該複数の法人のうちいずれか一の法人が、他の法人の一部について前記(イ)に掲げる企業支配関係にあり、かつ、残る他の法人について、前記(ロ)に掲げる企業支配関係にあるとき。

(注) 実質は企業支配関係にあるが、法律の規定により、法人の発行済株式又は出資(その法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の20%以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有することができない場合には、企業支配関係を有するものとして取扱うことができる。

ロ 当該複数の法人の相互間に使用人について人事交流の事実があること、又は将来において人事交流の発生が確実に見込まれることが必要であり、かつ、それぞれの法人の年金規程に当該人事交流の対象となる使用人の転籍に際して相互に勤続期間を通算することが明定されていること。

ハ 当該複数の法人のそれぞれの年金規程において定められている加入(時期、資格)、受給資格、給付(額、期間)、基準給与等が同一の内容を有するものであること。

(注) 当該複数の法人のそれぞれの定年年齢が異なる場合には、少なくともそれらの最低の定年年齢において同等の給付が受けられるよう定められていなければならないことに留意する。

(2) 総幹事協定の締結
契約形態が分割契約である場合には、総幹事制度を採用するものとする。総幹事制度の実施にあたっては、各契約毎に幹事受託機関を選定し、各契約毎の幹事受託機関のうちから総幹事制度における総幹事及び副幹事を選定するとともに契約当事者間において「適格退職年金契約にかかる総幹事制に関する協定書」(以下「総幹事制に関する協定書」という。)を締結するものとする。

(注) 信託契約が複数である場合には、契約毎の幹事の選定は行わず、各契約の受託者たる信託会社のうちから信託幹事を選定し、当該信託幹事をして総幹事又は副幹事とする。

3. 審査手続

(1) 対象契約
 共同委託(結合)契約、分割契約となった契約、分割契約で受託機関が変更された契約(分割契約で信託契約数が変更された契約を含む。)

(2) 審査書類
 申請書等、年金規程等、共同委託(結合)契約の要件に関する資料、総幹事制に関する協定書

(3) 審査手順

イ 共同委託(結合)契約を締結しようとする場合においては、年金規程等及び事業主から提出された持株関係の資料等により、上記2の審査上の留意事項に掲げる共同委託(結合)契約の要件を満たしているかどうかを確認する。

ロ 総幹事制度を採用する契約においては、総幹事制に関する協定書が締結されているかどうかを確認する。

戻る目次へ次へ