【果実酒等の製法品質表示基準】(かじつしゅとうのせいほうひんしつひょうじきじゅん)
日本国内で製造されるワインには、国内で収穫したぶどうの実を使用して製造した「日本ワイン」や、輸入濃縮果汁や輸入ワインを原料としたものなど様々なワインがあり、その違いが分りにくい等の問題がありました。
 「日本ワイン」の中には、近年国際的なコンクールで受賞するようなものもあることから、「日本ワイン」の国際的な認知向上や消費者に分かりやすい表示とすることで商品選択が容易となることを目的に、国税庁において、平成27年10月に「果実酒等の製法品質表示基準」(国税庁告示第18号)が定められ、平成30年10月30日から適用されています。
 この表示基準では、「日本ワイン」を定義し、その他の国内製造ワインと明確に区別するため「日本ワイン」と表示することを義務付けているほか、地名を表示できる場合、ぶどうの品種を表示できる場合、ぶどうの収穫年を表示できる場合のルールや表示方法を定めています。
 詳細については、果実酒等の製法品質表示基準を定める件(PDF/534KB)をご覧ください。
【果実酒の歴史】(かじつしゅのれきし)
果実酒は、果実を原料にして発酵させた酒類で、ぶどうを原料にしたワインが代表的です。
 ワインは人類の歴史の中でも最も古い酒類で、紀元前6000年頃には既にぶどうの栽培やワインの醸造が始められていたようです。メソポタミアやエジプトの古代文明からギリシャ・ローマ時代に至るまで、ワイン造りの記録が数多く見つかっています。ゲルマン民族の大移動やイスラム教のヨーロッパへの進入は一時的にワイン造りを衰退させたものの、中世には、修道院や教会でワイン造りが盛んになりました。その後、15〜16世紀にヨーロッパ人が開拓した植民地(南アフリカ、オーストラリア、南北アメリカ等)にもワイン造りが広まり、17世紀にはガラスびんやコルク栓の使用が始まって世界中でワインが飲まれるようになりました。その後、発泡性ワインやアルコール強化ワイン(シェリー、ポート等の甘味果実酒)も製造されるようになり、20世紀になると、ぶどうの栽培や醸造の技術が著しく発展し現在に至っています。我が国には戦国時代にワインが入ってきた記録がありますが、本格的に醸造が始まったのは明治以後で、消費が伸び始めたのは昭和40年代からです。

[資料提供:独立行政法人 酒類総合研究所]

【甘味果実酒】(かんみかじつしゅ)
フォーティファイドワイン(アルコール強化ワイン)の多くや、薬草、香料、色素などを原料としたアロマタイズドワイン(フレーバードワイン、混成ワイン)は、酒税法上、果実酒ではなく甘味果実酒に分類されます。主なものには、次のようなお酒があります。
(注)フォーティファイドワインのうち、わが国では酒税法により、一部、果実酒に分類されるものもあります。
  1. ○ シェリー
    スペインで造られるフォーティファイドワインです。シェリーには甘口から辛口まで様々なタイプがありますが、基本的にはフィノとオロロソの2タイプに分けられます。フィノは、白ワインを「ワインの蒸留液と新酒の白ワインを混和したもの」(グレープスピリッツ)で酒精強化した後に、ソレラシステムと呼ばれる独特の樽貯蔵システムでワインの表面に皮膜を造る酵母(シェリー酵母)を繁殖させた状態で貯蔵し、シェリー独特の香りをつけたものです。
    オロロソは、ブランデーをフィノより多く添加し、シェリー酵母を繁殖させないで樽貯蔵したものです。オロロソに濃縮果汁を添加した甘口のクリームシェリーもあります。
  2. ○ ポート
    ポルトガルで造られるフォーティファイドワインです。黒色系ぶどうを赤ワインと同様に仕込み、発酵途中の糖分が多い状態でブランデーを添加して発酵を停止させ、圧搾後、樽貯蔵した甘口のワインです。熟成の方法によりいくつかのタイプに分かれます。
  3. ○ マディラ
    大西洋上のポルトガル領マディラ島で、白ワインと同様の仕込みを行い、発酵中にブランデーを添加し発酵を停止する方法で造られます(ブランデー添加時期により甘口から辛口まで様々なタイプがあります。)が、50℃程度で数か月間貯蔵させるため、加温によって生じた強い熟成香が特徴です。
  4. ○ ベルモット
    熟成した白ワインに、にがよもぎなど数十種類の薬草を漬け込んだもので、フランス産のものは淡色辛口、イタリア産のものは濃色甘口のものが多くなっています。赤のベルモットもありますが、これはカラメルなどで着色したものです。
  5. ○ スイート・ワイン
    ワインに糖類、蜂蜜、香料、色素、水等を加えて造った甘味果実酒のことです。昭和40年代頃までは、ワインというとスイート・ワインを連想する人も多くいました。

[資料提供:独立行政法人 酒類総合研究所]

【貴腐ワイン】(きふわいん)
ぶどう畑にはさまざまな菌が繁殖していますが、なかにボトリティス・シネレア菌という特殊な菌があります。未熟なぶどう果につくと腐敗をおこしますが、成熟したぶどう果についた場合は、果皮の表面のロウ質が溶けて果粒中の水分の蒸発が促進され、その結果ぶどうの糖度が大きく上昇します。この現象を貴腐といいます。 貴腐をおこしやすいのは、比較的果皮の薄い品種のぶどうです。この貴腐ぶどうからつくられるワインは、ごく甘口、芳香豊かで、とくにデザ−トワインとして珍重されています。貴腐ワインの産地として有名なのは、フランスのボルド−・ソーテルヌ地区、ドイツのライン地方、モ−ゼル地方、ハンガリ−のトカイ地方など。同じぶどうの品種でも日本の風土では貴腐がおこりにくいとされていましたが、現在は国産の貴腐ワインも誕生しています。

[資料提供:日本ワイナリー協会]

【原料ぶどうの収穫(山梨県)】(げんりょうぶどうのしゅうかく やまなしけん)
山梨県内のぶどう畑では、ワイン原料用のぶどうの収穫が9月に最盛期を迎えます。
 収穫されたぶどうは直ちに各ワイナリーに運ばれワインの仕込が始まります。
 仕込まれたワインは、各ワイナリーでの発酵を経て、11月には新酒として出揃います。
 ワイン用ぶどうの収穫時期
ぶどうの品種 収穫時期
デラウエア(白ワイン) 8月中旬から下旬
シャルドネ(白ワイン) 9月中旬
メルロー(赤ワイン) 9月中旬から下旬
カベルネ・ソーヴィニヨン(赤ワイン) 9月下旬から10月上旬
甲州(白ワイン) 9月下旬から10月中旬
【原料ぶどうの品種(赤ワイン)】(げんりょうぶどうのひんしゅ あかわいん)
  1. ○ カベルネ・ ソーヴィニヨン
    フランス・ボルドーの代表品種。いわば「ワインの女王」の母。力強く、こくプラス複雑な味わいを兼備。すばらしい芳香を放ち、長期熟成により黒コショウの香りとなり、本領を発揮。
  2. ○ カベルネ・フラン
    カベルネ・ソーヴィニヨンと比べ、性格はソフトで、やわらかな味わい。ボルドーのサンテミリオン地区やロワールのソーミュール地区で多く栽培されている人気品種。
  3. ○ メルロー
    ボルドーのポムロール地区やサンテミリオン地区の主役。マイルドでこくのあるワインをつくり、カベルネ種とブレンドするとやわらかな風味を生み出します。
  4. ○ ガメー
    ブルゴーニュのボジョレー地区の品種。酸味、渋みは軽くてフレッシュ。いきいきとしたフルーティーで口当たりの良いワインを生み出します。
  5. ○ ピノ・ノワール
    ブルゴーニュが主産地。豊かな果実味、控えめな渋み、力強く厚みのある味。カベルネ種ほどタンニンが強くない。ブルゴーニュの高価な最高級赤ワインに生まれ変わる。
  6. ○ マスカット・ベリーA
    日本の赤ワインを代表する品種で生食兼用。川上善兵衛が1927年につくった、ベリー種とマスカット・ハンブルグ種の交配品種。香り高く、まろやかな味わい。

[資料提供:日本ワイナリー協会]

【原料ぶどうの品種(白ワイン)】(げんりょうぶどうのひんしゅ しろわいん)
  1. ○ リースリング
    ドイツやフランスアルザスの代表品種。ドイツのものはいきいきとした酸味のさわやかなワイン。アルザスのものは、力強い辛口のワインで有名。上品な口あたりと香り。
  2. ○ ミュラー・トウルガウ
    1882年ドイツで交配された品種で、ドイツの主要品種。柔らかな酸味と軽いマスカット香が特徴。
  3. ○ シャルドネ
    ブルゴーニュの辛口の白やシャンパンを生む品種で、人気は世界トップクラス。カリフォルニアやオーストラリアでも栽培され、樽熟成するとバニラやナッツの香りを放ちます。
  4. ○ セミヨン
    ボルドーでは、ソーヴィニヨン・ブランとブレンドして使われ、酸味をおだやかにします。ソーテルヌ地区では甘口の貴腐ワイン、グラーヴ地区ではマイルドな辛口に仕立てられています。
  5. ○ ソーヴィニヨン・ブラン
    さわやかでフレッシュな酸味は、シャルドネより軽くてシャープ。ボルドー・グラーヴ地区の辛口、ロワールではサンセール、プイイ・フュメ地区で使われている品種。
  6. ○ 甲州
    山梨県の別名をそのままネーミングした、わが国を代表する品種。シルクロード経由で伝来したヨーロッパ系に属する品種。近年、醸造技術の進歩により種々のタイプのワインがつくられています。

[資料提供:日本ワイナリー協会]

【国産ワインの誕生】(こくさんわいんのたんじょう)
日本のワイン造りの歴史は明治維新になってからです。明治政府は殖産興業政策の一環として、ぶどう栽培・ワイン醸造振興策を加えました。当時、日本は米不足でしたから、米からの酒造りは節減したい意向が強かったのです。政府はヨーロッパ、アメリカからぶどう苗木を輸入し、山梨県をはじめ各地でぶどう栽培とワイン醸造を奨励しました。明治7年(1874年)には甲府の山田宥教(ひろのり)、詫間憲久(のりひさ)がワイン醸造を試みています。当時のワイン醸造の知識といえば、書物や来日外国人からの伝授にすぎませんでした。明治10年(1877年)秋、ワイン醸造法習得のため、日本人として初めて土屋龍憲(りゅうけん)、高野正誠(まさなり)の二人が本場フランスに留学しました。帰国後、この二人に加えた宮崎光太郎は国産最初のワイン会社「大日本山梨葡萄酒会社」でワイン造りに努力します。明治34年(1901年)には神谷伝兵衛が茨城県牛久でワイン醸造を開始し、明治36年(1903年)にフランス様式の牛久シャトーを完成させました。越後高田の川上善兵衛は明治24年(1891年)に岩の原葡萄園を開設し、日本の風土に適したぶどうの品種改良に情熱を傾けました。昭和2年(1927年)にマスカット・ベリーAを交配し、日本のぶどう栽培とワイン造りに大きな貢献をしています。明治37年(1904年)小山新助が山梨県に登美葡萄園の造成を開始して、この葡萄園は後に鳥井信治郎が買収しています。
 しかし、本格ワイン(テーブル・ワイン)は当時の日本の食生活に受け入れられず、甘味果実酒の原料ワインとしてワイン造りが続いていました。日本産の本格ワインが少しずつ製造され始めたのは戦後になってからです。

[資料提供:日本ワイナリー協会]

【地理的表示 山梨】(ちりてきひょうじ やまなし)
地理的表示制度は、酒類や農産品において、その確立した品質、社会的評価又はその他の特性が、当該商品の地理的な産地に主として帰せられる場合において、その産地名を独占的に表示することができる制度です。海外の地理的表示としては、「ボルドーワイン」や「スコッチウイスキー」などがあります。
 地理的表示「山梨」は、平成25年7月に果実酒として初めて国税庁長官の指定を受けました。
 山梨県産のぶどうを原料として山梨県内において発酵・容器詰めしたものでなければ「山梨」の産地を表示することはできません。
 また、原料のぶどうについても甲州、ヴィニフェラ種等の限られた品種によるほか、アルコールを添加しないことなど、その生産基準が定められています。
 山梨県ワイン酒造組合では、地理的表示「山梨」が適正に使用されるよう、使用管理委員会を設置して、生産基準が守られるよう審査を行い、管理しています。
 審査に合格した果実酒のラベルには、「GI Yamanashi」と表示されます。
 地理的表示「山梨」の詳細については、酒類の地理的表示一覧をご覧ください。
【ワインの分類】(わいんのぶんるい)
  1. イ 醸造法による分類
    ワインとはぶどうを原料として発酵させたものの総称です。日本ではリンゴなどぶどう以外の果実を原料として発酵させたものも酒税法でワインと同じ「果実酒」として分類されております。ワインの仲間は製造方法によって次の4つのタイプに分類されます。
    1. ○スティル・ワイン(テーブル・ワイン)
      ぶどうを発酵させ、炭酸ガスを残さない非発泡性ワインです。スティル=「静かな」と言う意味で非発泡性を表わしています。食事の時に飲む一般的なワインでテーブル(食卓)ワインとも言います。アルコール度数は15度未満。色は赤、白、ロゼがあり、辛口から甘口までいろいろなタイプがあります。
    2. ○スパークリング・ワイン
      炭酸ガスを閉じ込めた泡立つワイン(発泡性ワイン)。フランスのシャンパーニュ地方のシャンパン、ドイツのゼクト、イタリアのスプマンテ、スペインのカバは世界的に知られています。日本やアメリカではスパークリング・ワインと呼ばれています。
    3. ○酒精強化ワイン(フォーティファイド・ワイン)
      発酵過程でブランデーなどの強い酒を加え、アルコール度数15〜20度に高めたワイン。
      甘口はアペリティフ(食前酒)、デザート用。辛口はアペリティフに。代表的なものにシェリー、ポート、マディラなどがあります。
    4. ○混成ワイン(フレーバード・ワイン)
      スティル・ワインに薬草や香辛料、蜂蜜、果汁などを加えて造ったワイン。イタリアのベルモットが薬草系で、スペインのサングリアは果汁系として有名。
  2. ロ 色による分類
    赤、白、ロゼはぶどうとつくり方の違いで生まれます。
    1. ○赤ワイン
      黒ぶどうを使い、果皮や種子とともに発酵させたもの。一般的には辛口で、果皮に含まれるタンニンから、渋みとコクが生まれます。
    2. ○白ワイン
      一般的には白ぶどう(といっても緑色)を使い、果皮や種子を取り除き果汁だけを発酵させたものです。渋みが少なく、すっきりでフルーティ−な味わい。甘口から辛口まで楽しめます。
    3. ○ロゼワイン
      赤ワインをつくる途中で、ほんのりバラ色になった頃に果皮や種子を取り除き、さらに発酵させてつくります。黒ぶどうと白ぶどうを混ぜて発酵させるロゼもあります。甘口から辛口まであります。
  3. ハ 味による分類
    一般的に白ワインは甘辛で分類し、赤ワインはボディ(味の濃さ)でフルボディ〜ライトボディに分類します。
【ワインの飲み頃温度】(わいんののみごろおんど)
同じワインでも温度が違えば味わいも違って感じられます。温度が高すぎれば一般的に味に締まりがなくなり、冷やしすぎればまろやかさが失われ、香りの立ちが少なくなります。一般的に、赤ワインは高めで白ワインが低めといわれています。赤ワインは室温でといわれますが、これはヨーロッパでの石造りの部屋の室温15〜18℃をいいます。タンニンのある味のしっかりした熟成タイプの赤なら18℃前後、夏の暑い日では、冷蔵庫で30分程度冷やした状態です。同じ赤でもボディの軽いフルーティなタイプはもう少し冷たく15℃前後。ボジョレー・ヌーボーのような若飲みタイプだと12℃ぐらいがいいでしょう。白ワインは一般に10℃前後ですが、これもコクのあるタイプかさっぱりタイプかで2℃くらい上下します。さっぱりした酸味の多いタイプは冷やし気味がおいしく飲めます。スパークリングワインではさらに低く5℃くらいが適温ですが、いわゆる「キンキンに冷えた」状態はワインには不向きです。ちなみに急いで冷やしたいときには氷水を使うのがベスト。肩までつけておけば20〜30分程度で冷えるでしょう。

[資料提供:日本ワイナリー協会]