別紙

1 照会の趣旨

 成年後見制度における成年被後見人とは、家庭裁判所において「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判を受けた者をいいます(民法7、8)。
成年被後見人については、平成24年8月31日付名古屋国税局文書回答事例「成年被後見人の特別障害者控除の適用について」(以下「平成24年文書回答事例」といいます。)において、所得税法上、障害者控除の対象となる特別障害者に該当するとされています。
今回、相続税の申告をするに当たり、相続人の中に、成年後見制度に基づいて家庭裁判所から後見開始の審判を受けている者(成年被後見人)がいますが、この成年被後見人である相続人は、所得税法と同様に相続税法上においても障害者控除(相法19の4)の対象となる特別障害者に該当すると解してよいか照会します。

2 照会に係る取引等の事実関係

 成年後見制度とは、認知症、知的障害及び精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない者について、本人の権利を守る援助者(成年後見人)を選ぶことで、成年被後見人を法律的に支援する制度です。
すなわち、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができることとされ(民法7)、後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付すこととされています(民法8)。
そして、成年後見人は、成年被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について成年被後見人を代表し(民法859)、成年被後見人が病気などから回復し判断能力を取り戻したり、あるいは亡くなったりするまでの間、その責任を負うこととなります。
なお、後見開始の審判等の内容は、後見開始の審判がされたときに、その裁判所書記官の嘱託に基づき、後見登記が行われることになりますので、法務局が発行する登記事項証明書により確認することができます。

3 照会者の求める見解となることの理由

(1) 相続税法上の特別障害者
相続税の障害者控除は、相続又は遺贈により財産を取得した者が、日本国内に住所を有する者で相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)に該当し、かつ、障害者である場合には、6万円(特別障害者である場合には12万円)にその相続開始時からその者が85歳に達するまでの年数(その年数が1年未満であるとき又は1年未満の端数があるときは、これを1年とします。)を乗じて算出した金額を、その者の相続税額から控除するものです(相法19の41)。
相続税の障害者控除の対象となる障害者について、相続税法第19条の4第2項は、障害者とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で政令で定めるものをいい、特別障害者とは、障害者のうち精神又は身体に重度の障害があるもので政令で定めるものをいうと規定しています。これを受けて相続税法施行令第4条の4第1項は、第1号及び第2号において障害者控除の対象となる障害者、同条第2項は、第1号から第3号において障害者控除の対象となる特別障害者をそれぞれ規定しています。
このうち相続税法施行令第4条の4第2項第1号は、所得税法施行令第10条第2項第1号に掲げる者を相続税法上の特別障害者に該当する者として規定しています。そして、所得税法施行令第10条第2項第1号は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」を、所得税法上の障害者控除の対象となる特別障害者に該当する者として規定しているため、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は、相続税法施行令第4条の4第2項第1号の規定により、相続税法上においても障害者控除の対象となる特別障害者に該当することになります。

(2) 所得税における成年被後見人の特別障害者控除の適用について
成年後見制度の下、家庭裁判所が「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判をした場合には、所得税法上も、成年被後見人は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当し、障害者控除の対象となる特別障害者に該当するとされています(平成24年文書回答事例)。

(3) 相続税における成年被後見人の障害者控除の適用について
上記(1)のとおり、相続税法施行令第4条の4第2項第1号は、所得税法施行令第10条第2項第1号に掲げる者を相続税法上の特別障害者に該当する者として規定しています。このため、所得税法施行令第10条第2項第1号に該当する者は、所得税法上の特別障害者に該当すると同時に相続税法上の特別障害者にも該当することになり、その対象とする範囲は所得税と相続税とで同一であると考えられます。
そして、上記(2)のとおり、成年後見制度における成年被後見人が、所得税法施行令第10条第2項第1号に規定する「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当し、所得税法上の障害者控除の対象となる特別障害者に該当するとされていることからすれば、成年被後見人は、相続税法施行令第4条の4第2項第1号の規定により、相続税法上の障害者控除の対象となる特別障害者に該当すると考えられます。
なお、上記2のとおり、後見開始の審判の事実は登記事項証明書により確認することができます。

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