別紙1 事前照会の趣旨及び事実関係

1 甲は、その有する不動産の管理、運用及び処分を目的として、甲の唯一の相続人(養子)である乙(以下「乙」といいます。)が代表取締役を務めるX社との間で、甲を委託者兼受益者、X社を受託者とし、建物、宅地(以下、建物と併せて「本件不動産」といいます。)及び金銭を信託財産とする信託契約(以下「本件信託契約」といいます。)を締結しました(以下、本件信託契約に係る信託を「本件信託」といいます。)。

2 本件信託契約の概要は以下のとおりです。

(1) 甲が死亡した場合、本件信託に係る受益権(以下「本件受益権」といいます。)は、乙及び甲の妹である丙(以下「丙」といいます。)がそれぞれ2分の1の割合で取得します。
 ただし、乙又は丙が死亡している場合は、生存する一方の者が本件受益権を取得します。
(2) 委託者(甲)の死亡により委託者の権利は消滅しますが、委託者の地位は上記(1)により受益権を取得する者に移転します。
(3) 乙及び丙が本件受益権を取得後、いずれかが本件信託の終了前に死亡した場合には、生存する一方の者が死亡した者に係る本件受益権を取得するとともに、上記(2)と同様に、委託者の地位もその一方の者に移転します。
(4) 本件信託が終了した場合(注)には、受託者は、本件不動産を含む本件信託の信託財産をその終了時の受益者に引き渡します。
(注) 本件信託は、X社及び乙(乙が死亡等している場合は丙)の合意により本件信託契約を解約した場合及び信託法第163条《信託の終了事由》に定める事由により終了します。

3 ところで、このような契約関係を前提として、次のケースTないしVの事実関係の下、本件受益権を取得した乙が、本件信託契約が終了したことにより受ける本件不動産に係る所有権の移転登記については、いずれも登録免許税法第7条《信託財産の登記等の課税の特例》第2項の規定(以下「本件特例」といいます。)が適用され、相続による所有権の移転の登記とみなして登録免許税が課されると解してよいか、照会します。

(1) ケースT
甲の死亡により、乙が本件受益権を(甲の死亡前に丙が死亡していたため)単独で取得した場合において、本件信託契約が終了し、乙に本件信託の信託財産である本件不動産の所有権が移転したとき
(2) ケースU
甲の死亡により、乙及び丙が本件受益権をそれぞれ2分の1の割合で取得した場合において、本件信託契約が終了し、乙及び丙に本件信託の信託財産である本件不動産の所有権がそれぞれ2分の1の割合で移転したとき
(3) ケースV
甲の死亡により、乙及び丙が本件受益権をそれぞれ2分の1の割合で取得した後、丙が死亡したことにより、乙が本件受益権に係る単独の受益者となった場合において、本件信託契約が終了し、乙に本件信託の信託財産である本件不動産の所有権が移転したとき

別紙2 照会者の求める見解となることの理由

1 登録免許税法第7条第2項は、「信託の信託財産を受託者から受益者に移す場合」(以下「要件1」といいます。)であって、「当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合」(以下「要件2」といいます。)において、「当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人(……)であるとき」(以下「要件3」といいます。)と規定していることから、本件特例の適用に当たっては、これらの要件を満たす必要があると考えられます。

2 そして、今回照会したいずれのケースにおいても、本件信託の信託財産である本件不動産を受託者から受益者に移す場合を照会の対象としていることから、要件1を満たすところ、次のとおり、乙が受ける本件不動産に係る所有権の移転登記については、要件2及び3をも満たすことから、本件特例が適用され、相続による所有権の移転登記とみなして登録免許税が課されると解されます。

(1) ケースTについて
このケースでは、本件信託の効力が生じた時から甲が死亡するまでの間は、本件信託の委託者である甲のみが信託財産の元本の受益者であるところ、甲の死亡後においても、本件信託の委託者となった乙のみが信託財産の元本の受益者であることから、要件2を満たすと解されます。
 また、乙は、本件信託の効力が生じた時における委託者である甲の相続人に該当することから、要件3を満たすこととなります。
(2) ケースUについて
このケースでは、本件信託の効力が生じた時から甲が死亡するまでの間は、本件信託の委託者である甲のみが信託財産の元本の受益者である点はケースT(上記(1))と同様です。
 そして、甲の死亡後には、乙及び丙が受益者となりますが委託者の地位についても受益権とともに移転し、また、本件信託の終了時における信託財産はその時の受益者にそれぞれの受益権の割合に応じて帰属することからすれば、本件信託の委託者となった乙及び丙のみが信託財産の元本の受益者であることに変わりはなく、要件2を満たすと解されます。
 また、乙は、本件信託の効力が生じた時における委託者である甲の相続人に該当することから、要件3を満たすこととなります。
 なお、丙は、甲の相続人に該当しないことから、要件3を満たさず、丙が受ける本件不動産に係る所有権の移転登記については、本件特例は適用されません。
(3) ケースVについて
このケースでは、本件信託の委託者兼受益者は、本件信託の効力が生じた時における委託者である甲から、甲の死亡により乙及び丙となり、その後、丙の死亡により乙へと順次異動しているところ、ケースU(上記(2))と同様、甲の死亡後においても、本件信託の委託者となった乙及び丙のみが信託財産の元本の受益者であることに変わりはなく、要件2を満たすと解されます。
 ところで、このケースでは、乙は、本件受益権を、本件信託の効力が生じた時における委託者である甲の死亡時と、その後の丙の死亡時にそれぞれ取得しているところ、丙は、その効力が生じた時における委託者である甲の相続人ではありません。
 しかしながら、登録免許税法第7条第2項には、同条第1項第2号の規定における「信託の効力が生じた時から引き続き委託者である者に限る」のように、信託の効力が生じた時からその信託の信託財産を受益者に移すまでの間の受益者を限定する規定は設けられていないことからすれば、同条第2項の規定は、信託財産の移転を受ける受益者が「信託の効力が生じた時における委託者の相続人」であることを要件としているのであって、信託の効力が生じた時から引き続き委託者の相続人が信託財産の元本の受益者であることまでを要件としているものではないと解するのが相当です。
 そうすると、このケースにおいても、乙は、本件信託の効力が生じた時における委託者である甲の相続人に該当することから、要件3を満たすこととなります。

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