1 事前照会の趣旨及び事前照会に係る事実関係

当社は、洗浄溶剤等として用いられる石油化学製品の卸売等を行っています。

当社は、当社の製品の購入者(以下「ユーザー」といいます。)に対し、揮発油のうち灯油に該当する2種類の炭化水素系溶剤(以下の表に概要を記載。)を混和した上、販売することを予定しています。

名称溶剤A溶剤B
使用用途シンナー、金属洗浄等塗料溶剤、金属洗浄等
貯蔵場所X社Z社
Y社
組成炭化水素油炭化水素油
比重(15度)0.7380.7958
引火点(※)42.0度42.0度
初留点(※)157.0度156.0度

※ 引火点及び初留点は、日本工業規格に定める方法により測定されています。

当社が行う混和(以下「本件混和」といいます。)の方法は、次のとおりです。

  1. 1 大型タンクローリーを手配し、溶剤A及び溶剤Bを発注する。
  2. 2 上記の大型タンクローリーに、溶剤Aを積み込む。
  3. 3 溶剤Aを積み込んだ大型タンクローリーに、溶剤Bを更に積み込む。
  4. 4 上記の大型タンクローリータンク内にて、溶剤A及び溶剤Bを一定の割合で混和する。
  5. 5 ユーザーのタンクに納入する。

本件混和により生じる製品(以下「本件製品」といいます。)の概要は、次のとおりで、揮発油のうち灯油に該当するものです。

組成炭化水素油
比重(15度)0.7484
引火点(※)43.0度
初留点(※)172.8度

※ 引火点及び初留点は、日本工業規格に定める方法により測定されています。

本件混和は、揮発油税法上、揮発油の製造に該当するものですが、揮発油税法基本通達第10条第2号に規定する「課税済みの揮発油を2種以上混和して新たな揮発油とする行為については製造と取り扱わない」ことと同様に、揮発油の製造として取り扱われず、当社は本件製品の販売に当たり、揮発油税法第16条《灯油の免税》に規定する免税の手続(以下「灯油免税手続」といいます。)を要しないと解してよろしいか照会します。

なお、当社は、本件混和のほかに揮発油の製造に該当する行為を行っておらず、今後も行う予定がないことを照会の前提とします。

2 事前照会者の求める見解となることの理由

  1. (1) 揮発油税法の規定
    • イ 課税物件及び納税義務者
    • 揮発油税法では、揮発油が課税物件とされており(揮法1)、揮発油の製造者は、その製造場から移出した揮発油につき、揮発油税を納める義務があるとされています(揮法31)。
    • ロ 揮発油の定義等
    • 揮発油とは、温度15度において0.8017をこえない比重を有する炭化水素油をいうとされ(揮法21)、炭化水素油とは、炭化水素を主成分とし、温度15度及び1気圧において液状を呈するものをいい、単一の炭化水素及びこれと炭化水素以外の物との混合物を含まないとされています(揮基通42)。

      また、炭化水素とは、炭素と水素との化合物及び各種の当該化合物の混合物を総称するものとされています(揮基通41)。

    • ハ 揮発油の製造
    • 揮発油の製造とは、原油、揮発油その他の物に積極的操作を加えて揮発油を造り出す行為をいうとされています(揮基通91)。

      ここでいう「積極的操作」とは、蒸留、分解、改質若しくは脱硫をする等の精製操作、揮発油と揮発油以外の物、規格を異にする2種以上の揮発油若しくは2種以上の単一の炭化水素を混和する等のブレンド操作又はこれらの操作を組み合わせた操作をいうとされています(揮基通92)。

      なお、揮発油税法基本通達第9条第1項の規定にかかわらず、課税済みの揮発油を2種以上混和して新たな揮発油とする行為については、揮発油の製造には該当しないことに取り扱うとされています(揮基通10(2))。

    • ニ 移出に係る灯油の免税
    • 揮発油の製造者が揮発油のうち灯油に該当するものをその製造場から移出する場合には、当該移出に係る揮発油税を免除するとされています(揮法161)。

      この規定は、揮発油のうち灯油に該当するものの移出をした揮発油の製造者が、当該移出をした日の属する月分の揮発油税法第10条第1項の規定による申告書(同項に規定する期限内に提出するものに限る。)に同法第16条第1項に規定する揮発油のうち灯油に該当するものが移出されたことを証する書類として政令で定める書類を添附しない場合には、適用しないとされています(揮法162)。

      なお、揮発油税法第16条第1項に規定する揮発油のうち灯油に該当するものの規格については、政令で定めることとされており(揮法163)、揮発油税法施行令第10条の3において、「工業標準化法第17条第1項に規定する日本工業規格に定める原油及び石油製品の引火点試験方法並びに燃料油の蒸留試験方法により測定した場合における引火点が温度30度以上で、かつ、初留点が温度140度以上の規格を有するものとする」と規定されています。

  2. (2) 本件への当てはめ
    • イ 溶剤A及び溶剤Bについて
    • 揮発油とは、温度15度において0.8017をこえない比重を有する炭化水素油をいうとされ(揮法21)、また、揮発油のうち灯油に該当するものの規格については、工業標準化法第17条第1項に規定する日本工業規格に定める方法により測定した場合における引火点が温度30度以上で、かつ、初留点が温度140度以上の規格を有するものとすると規定されています(揮令10の3)。

      溶剤A及び溶剤Bは、上記1のとおり、いずれも温度15度において0.8017をこえない比重を有する炭化水素油ですので揮発油に該当し、また、引火点が温度30度以上で、かつ、初留点が温度140度以上の規格を有するものですので灯油に該当します。

    • ロ 本件製品について
    • 本件製品は、上記1のとおり、温度15度において0.8017をこえない比重を有する炭化水素油ですので揮発油に該当し、また、引火点が温度30度以上で、かつ、初留点が温度140度以上の規格を有するものですので灯油に該当します。
    • ハ 溶剤A及び溶剤Bの混和について
    • 溶剤A及び溶剤Bは、上記イのとおり、揮発油のうち灯油に該当するものです。

      揮発油の製造には、規格を異にする2種以上の揮発油若しくは2種以上の単一の炭化水素を混和する等のブレンド操作が含まれていますので(揮基通912)、揮発油である溶剤A及び溶剤Bを混和する本件混和は、揮発油の製造に該当するものです。

      しかしながら、溶剤A及び溶剤Bは、ともに揮発油税が免除される灯油に該当するものであり、かつ、溶剤A及び溶剤Bを混和したことによる本件製品についても、上記ロのとおり灯油に該当するものですので、課税済みの揮発油を2種以上混和して新たな揮発油とする行為については製造に該当しないとする取扱い(揮基通10(2))と同様に、免税となる揮発油(灯油)を2種類以上混和して新たな免税となる揮発油(灯油)とする行為については、製造として取り扱わないとすることが相当であると考えます。

      したがって、本件混和は、揮発油の製造として取り扱わないものと考えます。

    • ニ 本件製品の販売に係る灯油免税手続について
    • 本件混和は、上記ハのとおり揮発油の製造として取り扱わないことから、本件製品の販売に当たり、当社は、灯油免税手続を要しないと考えます。

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