別紙

1 事前照会の趣旨

 私は、東京都(以下「都」といいます。)が行う東京都優良民間賃貸住宅等利子補給助成制度(以下「利子補給制度」といいます。)を利用して、同制度にいう優良民間賃貸住宅としての住宅を建設し、この住宅を都が行う都民住宅制度にいう都民住宅(注1)として貸し付けています。この住宅の建設に当たっては、住宅金融公庫(現独立行政法人住宅金融支援機構。以下「機構」といいます。)から融資を受けましたが、都からは、利子補給制度により私が支払うべき当該融資に対する利子の一定額を助成されています(以下、利子補給制度により都から助成された金員を「本件補給金」といいます。)。なお、本件補給金は、利子補給制度の適用対象者からの申請により交付されることとされています(注2)。
ところで、都では、今般、住宅の建設当時の比較的高い金利で融資を受けたこと等によりその後の賃貸住宅の経営に苦慮している者に対する負担を軽減させるため、都民住宅経営安定化促進助成制度(以下「本制度」といいます。)という制度を新たに設けました。本制度は、現在の金利に比較して低金利となる民間金融機関への借換えや、金融機関からの融資の繰上償還を促すため本件補給金の未交付部分に相当する金員を一括で前渡しすることを主な内容とする制度です。私は、本制度を利用し、機構から民間金融機関への借入金の借換えを行うとともに、本件補給金の未交付部分を一括で受領し(以下、この一括受領分を「本件一括受領金」といいます。)、民間金融機関から新たに借り入れた借入金の一部について繰上償還を行いました。
本件補給金については、交付期間である30年間にわたって支給されるものであることから、これまで交付された日の属する各年分の不動産所得の総収入金額に算入しており、また、本件一括受領金はその未交付期間の分を前倒しで一括交付されるだけですので、一括交付される前と同様に当初の交付予定期間に応じて各年分の総収入金額に算入することとしてよろしいか伺います。

(注1)都民住宅とは、その住居費負担を適正な水準とするため、都が一定の施策を講じつつ、自らが供給し又はその関与若しくは財政上の援助により供給される一定の賃貸用住宅をいいます。

(注2)本件補給金は、機構の融資申込みに対する資金交付日の翌日から30年間を交付期間とし、同補給金について都が定めている方法により算定された金員を1か月分の利子補給金として、6か月分が後払いされることにより交付されます。

2 事前照会に係る事実関係

(1) 利子補給制度の概要

 利子補給制度は、土地所有者等(土地の所有権又は建物の所有を目的とする地上権、賃借権若しくは使用貸借による権利を有する者をいう。以下同じ。)がその土地を活用して優良な賃貸住宅を建設する場合に、都がその建設資金についての融資の紹介及び当該融資に係る利子に対して助成を行うことで、優良民間賃貸住宅等の供給を誘導すること等により公共賃貸住宅の供給を促進し、もって都民の居住水準の向上に資することを目的とする制度であり、東京都優良民間賃貸住宅等利子補給助成制度要綱(以下「利子補給制度要綱」といいます。)において、次の事項等が定められています。

イ 優良民間賃貸住宅(利子補給制度要綱第2)
土地所有者等が、この要綱に定めるところにより都の助成を受けて建設をした民間賃貸住宅をいいます。

ロ 優良民間賃貸住宅の認定基準等(利子補給制度要綱第4)

  • (イ) 建設地が都の区域内であること
  • (ロ) 敷地面積が概ね200平方メートル以上であること
  • (ハ) 原則として耐火構造であること

ハ 利子補給の対象(利子補給制度要綱第8)
機構の融資を受けて住宅を建設する場合には、その融資を受けた者に対し利子補給を行うものとする。

ニ 優良民間賃貸住宅の賃貸条件等(利子補給制度要綱第67〜第72)

  • (イ) 家賃は、要綱の定める家賃の限度額の範囲内で、かつ、近隣の民間賃貸住宅の家賃水準等を考慮し、適正な額となるよう都と協議しなければならない。
  • (ロ) 敷金は、入居者から3か月分の家賃に相当する金額の範囲内において受領することができる。また、入居者が退去する場合には、原則として当該敷金の全額を返還しなければならない。
  • (ハ) 敷金を受領することを除くほか、権利金、謝礼金、更新料等の金品を受領し、その他入居者に不当な負担となることを賃貸の条件としてはならない。

(2) 本制度の概要

 本制度は、都民住宅の建設時の借入金に係る返済の負担を軽減することにより、都民住宅の経営の安定化を図り、優良な住宅ストックを保全することを目的としており、都民住宅経営安定化促進助成制度実施要綱(以下「経営安定化要綱」といいます。)において次の事項が定められています。

イ 対象者(経営安定化要綱第3)
都民住宅の所有者で、本件補給金の交付決定を受けた後、その補給期間が満了していない者。

ロ 一括交付(経営安定化要綱第4)
本件補給金の交付予定額のうち既に交付された本件補給金を除いた額。

ハ 義務の継続(経営安定化要綱第5)
本件一括受領金の交付を受けた住宅については、当初の利子補給期間満了予定日まで利子補給期間中であるものとみなされ、本件一括受領金の交付を受けた者は、利子補給制度要綱に定める賃貸条件等を遵守する義務を負う。

ニ 交付金の返還(経営安定化要綱第6)
知事は、本件一括受領金の交付を受けた者が上記ハの規定に違反した場合、その年度以降分の支給額の返還を求めることができる。

(3) 本件一括受領金の申込手続等

 本件一括受領金の申込手続等については、都民住宅経営安定化促進助成制度実施要領(以下「本要領」といいます。)において、次のとおり定められています。

イ 申込者は、利子補給額確定通知書の写し、繰上償還申込書の写し及び建物登記事項証明書を提出する(本要領第5)。

ロ 知事は、上記イの審査により適格であると認めた場合には、その交付額を決定し、交付対象者に対し交付決定通知書により通知する(本要領第6)。

ハ 交付対象者は、機構からの融資の全額又は一部繰上償還が完了したときには、繰上償還完了報告書を提出しなければならない(本要領第7)。

ニ 知事は、上記ハの書類の提出があったときは、これを審査し、適格であると認めた場合には、本件一括受領金の額を確定し、交付対象者に額確定通知書により通知する(本要領第8)。

ホ 知事は、上記ロにより決定した額を上記ニの報告があった後、交付対象者の請求により支払う(本要領第9)。

へ 交付対象者は、本件一括受領金を機構資金の全額繰上償還又は一部繰上償還に要した費用、並びに繰上償還に係る手数料等諸費用及び公租公課等に充てることができる(本要領第10)。

ト 交付対象者が遵守すべき賃貸条件については次のとおりである(本要領第18)。

  • (イ) 都民住宅として管理している期間については、東京都都民住宅制度要綱に定めるところによる。
  • (ロ) 都民住宅としての管理期間終了後(用途廃止の場合も含む。)については、利子補給制度要綱及び利子補給制度実施要領に定めるところによる。ただし、利子補給期間満了予定日までの期間とする。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

 所得税法第36条第1項は、「その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。」旨規定しています。
本件一括受領金は、今後交付される予定であった本件補給金を一括で前渡しされたものであり、また、経営安定化要綱に定められているとおり、当初の利子補給期間満了予定日まで利子補給制度要綱に定める賃貸条件等を継続しない場合には、その年度以降分の支給額の返還を求められることもあるため、本件一括受領金の交付を受けた時にその全額が本人に帰属したとはいえません。また、当初の利子補給期間満了予定日まで利子補給期間中であるものとみなされることから、当初の本件補給金の交付予定時期が到来したときにその収入すべき金額が順次確定していくといえます。
以上のことから、本件一括受領金は、本件補給金と同様に各年分の不動産所得の総収入金額に算入することになると考えます。