別紙
私は、私立学校(幼稚園)の個人経営者ですが、今般、東京都の補助金制度を活用して園舎の耐震補強工事を実施することとしました。この耐震補強工事は、平成20年中に事業計画書等を提出し同年中に終了しましたが、この制度による補助金(私立学校安全対策促進事業費補助金。以下「本件補助金」といいます。)の交付は、工事が終了した後、東京都がその目的に適合した資産の改良をしたことを確認した上で決定されるものであるため、工事の翌年となりました。
本件補助金は、上記のとおり、資産の改良が行われた年中に補助金の交付が行われず、交付が翌年になることがありますが、この場合においても本件補助金の交付があった年において、所得税法第42条《国庫補助金等の総収入金額不算入》の規定の適用を受けて差し支えないか伺います。また、その年における事業所得の金額の計算は、本件補助金の交付があったときにその全部の返還を要しないことが確定したものとして、所得税法第43条《条件付国庫補助金等の総収入金額不算入》第2項及び同法施行令第91条《総収入金額に算入されない条件付国庫補助金等の額の計算等》の規定に準じて計算してよろしいか伺います。
所得税法第42条第1項は、国庫補助金等の交付を受け、その年においてその国庫補助金等をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をして、その年12月31日までに国庫補助金等の返還を要しないことが確定した場合には、国庫補助金等のうちその固定資産の取得又は改良に充てた部分の金額に相当する金額を総収入金額に算入しない旨規定しています。
また、所得税法第43条第1項は、各年において固定資産の取得又は改良に充てるための国庫補助金等の交付を受け、その年12月31日までに国庫補助金等の返還を要しないことが確定していない場合は、国庫補助金等の額に相当する金額を総収入金額に算入しない旨規定しています。
本件補助金は、東京都の補助金であることから国庫補助金等であることは明らかですが、本件補助金の交付は、まず補助事業に係る工事を行い、その後の東京都の審査によってその目的に適合したものであれば交付される仕組みとなっており、文理上、所得税法第42条第1項及び第43条第1項が規定する場合のいずれにも当たりません。
しかし、所得税法第42条が、国庫補助金等の交付を受けた時点で課税利益が生ずるものとした場合に、その国庫補助金等によって取得又は改良を予定された資産の取得資金が税額分不足することを回避するための調整を行う趣旨の規定であることからすれば、本件補助金も同条の適用を受けることができるものと考えます。
また、所得税法第42条は、本件補助金のように国庫補助金等の交付が固定資産の取得又は改良の翌年となる場合の各種所得の計算における調整について規定していません。他方、所得税法第43条は、国庫補助金の交付があった年以後の年において国庫補助金等の返還を要しないことが確定した場合の総収入金額及び減価償却費の調整について規定しています。
本件においては、固定資産の改良をした年において本件補助金の交付がありませんから、その年については、次の(1)のとおり、固定資産の改良に要した金額(資本的支出の金額)に基づき減価償却費を計算することになると考えます。他方、その固定資産の改良をした年の翌年に本件補助金の交付があり、その年に所得税法第42条第1項の規定を適用する場合、一定の調整が必要となります。
この調整については、本件補助金の交付があった年に国庫補助金等の返還を要しないことが確定したものとして所得税法第43条第2項及び同法施行令第91条の規定に準ずる計算をして、次の(2)のとおり調整して差し支えないものと考えます。
(1) 固定資産の改良をした年(平成20年分)
固定資産の改良に要した金額(資本的支出の金額)を基に減価償却費の計算をする。
(2) 本件補助金の交付があった年(固定資産の改良をした年の翌年)(平成21年分)