別紙

1 事前照会の趣旨

X弁護士会では、昭和38年3月1日に制定されたX弁護士会共済規則(以下「共済規則」といいます。)に基づき共済事業(以下「本件共済事業」といいます。)を行ってきましたが、平成20年5月20日の通常総会決議に基づき同年8月末をもって本件共済事業を廃止しました。
これに伴い、本件共済事業廃止時においてX弁護士会に在籍していた個人会員(会員とみなされる者を含みます。以下「会員」といいます。)に対して、平成22年3月末までに共済積立金の残額を各会員が過去に拠出した掛金(以下「本件掛金」といいます。)の累計額に応じて分配することとしており、この本件共済事業の廃止に伴い支払われる分配金(以下「本件分配金」といいます。)は、一時所得に該当するものとして取り扱って差し支えないか伺います。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

本件共済事業は、任意団体が法律上の根拠なく行ういわゆる無認可共済事業に該当するところ、平成18年4月1日の改正保険業法の施行に伴い、対象者が1,000人を超える無認可共済事業も同法の適用対象とされたことから、本件共済事業を継続するためには、平成20年3月末までに保険会社の免許申請又は少額短期保険業の登録申請を行わなければならないことになります。
しかし、当会は、保険会社の免許申請又は少額短期保険業の登録申請のいずれも行わず、上記1のとおり、平成20年5月20日の通常総会決議に基づき同年8月末をもって本件共済事業を廃止し、平成22年3月末までに会員に対して共済積立金の残額を分配することとしています。
なお、本件共済事業の概要は次のとおりです。

(1)会員

イ X弁護士会の会員

ロ 特別共済対象者
一定の事由によりX弁護士会を退会した者のうち、共済規則第9条(共済の事由及び扶助)、第23条(死亡)及び第24条(結婚祝金)の適用に当たって、X弁護士会の会員とみなされる者をいう。

(2)本件掛金

本件共済事業の会員は、本件共済事業の資金に充てるため、毎月3,000円を拠出する(X弁護士会会則110条ただし書、共済規則24条の4)。

(3)共済規則に基づく給付内容

イ 表彰
一定の在会期間又は年齢に達した場合に授与される記念品(共済規則5条)

ロ 共済

  • (イ)会員の死亡に基づき支給される死亡給与金(共済規則15条)
  • (ロ)傷病のため引き続き30日を超えて業務を行うことができない会員に対して支給される傷病見舞金(共済規則17条)
  • (ハ)傷病のため引き続き60日を超えて業務を行うことができない会員に対して支給される傷病給与金(共済規則17条の2)
  • (ニ)会員の罹災に基づき支給される罹災給与金(共済規則18条)
  • (ホ)会員の退会に基づき支給される退会支給金(共済規則19条)

ハ 慶弔

  • (イ)会員及び会員の配偶者の死亡に基づく香典・供花(会員の子、会員と同居する配偶者の父母の場合は供花のみ)(共済規則23条)
  • (ロ)会員の結婚に基づき支給される結婚祝金(共済規則24条)

(4)会計処理等

イ 本件共済事業の会計は、一般会計の中に共済資金積立金の項目を設けて管理することとされており、他に流用することはできない(共済規則10条、12条)。
なお、本件共済事業の給付内容の別に本件掛金及び運用益を区分して管理していない。

ロ 本件共済事業の資金は、本件掛金のほか、本件共済事業に対する寄附金、共済積立金に対する預金利子などにより組成されている(共済規則11条)。

(5)共済積立金の残額の取扱い

共済規則には、本件共済事業を廃止した場合において、会員に本件掛金に相当する金額を払い戻す、又は本件共済事業の残余財産を分配する定めはない。

3 当会の求める見解となることの理由

一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいうとされています(所法341)。
共済規則には、本件共済事業を廃止した場合において、会員に本件掛金に相当する金額を払い戻す、又は本件共済事業の残余財産を分配する定めはありません。また、会員は、共済規則に定める一定の給付事由が生じない限りその給付に関する請求権を得ることはないため、本件共済事業に係る共済積立金(残余財産)に対する持分又は残余財産請求権を有していないことになります。
そして、本件分配金は、平成20年5月20日のX弁護士会通常総会決議に基づき、本件共済事業を廃止したことに基因してその残余財産が一時に支払われるものであることから、営利を目的とする継続的行為から生じた所得には該当せず、また、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないと認められます。
したがって、本件分配金は、一時所得として取り扱うのが相当であると考えられます。